第4話 定番の冒険者ギルドへ
今後の予定について考えながら、目的地に向かって町の中を歩いている。城下町を通り抜けて、町の外にほど近い場所に例の建物を見つけた。
「あった」
どうやら、ちゃんとあるようだ。ここに来るのも久しぶりだったから、無くなっているかもなと心配したけれど杞憂のようだった。
【冒険者ギルドへようこそ!】
デカデカと掲げられたソレは、一目見るだけで何の建物か分かるようなデザイン。文字だけ書かれた飾り気が一切ない看板を見て、懐かしい気分が蘇った。
「いやぁ、久しぶりに来たな」
50年ほど前のこと。僕が王都にやって来たばかりの時に看板を見つけて入った、最初の建物というのが冒険者ギルドだった。
その時も金を稼ぐために、ここにある冒険者ギルドに冒険者として登録をした僕は依頼を受けていた。モンスターを倒して駆除する仕事や、ダンジョンの探索を続けて無事にお金を稼ぐ事ができたというわけだ。
短期間だけど、魔法研究所で研究する前には冒険者として働いていた時期がある。そんな思い出を振り返りながら、正面の扉を開けて建物の中に入っていく。
しばらく冒険者としての生活を続けて数々の仕事をこなしていると、大魔法を使う冒険者として界隈ではちょっと有名になっていった。噂になってからしばらくして、この国の王様から直々に魔法研究所にスカウトされたという経緯がある。
魔法研究所で研究している方が魔法の腕を磨けると思った僕は、スカウトを受けて冒険者をすぐに辞めた。
ということで、僕は冒険者から研究員に職業をクラスチェンジした。そして今度は逆に、研究員から冒険者に戻ることになる。
昔から変わらない、冒険者ギルドを表す看板を掲げている建物の中は見覚えがある内装に見えた。
「ん? あれ? え!? キレイになってる……」
と思ったら、よくよく見てみると昔よりも見た目がキレイになってることに驚く。昔に比べて非常に綺麗になっていて、照明も明るくなっていたから。冒険者ギルドではなく、高級ホテルのような清潔感がある。昔は、こんなんじゃなかったはずだが。
僕の記憶だと冒険者ギルドというのは薄暗くて、空気や雰囲気がジメジメしていて陰気臭く一般人が寄り付きがたいような場所だった。
記憶に残っている、あの頃とは見た目も雰囲気も変わっていた。床や壁がちゃんと掃除されていて、照明もついているので室内が非常に明るい。今のほうが清潔で良いと思う。
というか、この建物って冒険者ギルドに間違いないよな。外に掲げてあった看板で確認をしたので間違いなく、ここが冒険者ギルドのある建物だった。だけど少しだけ心配になる。それぐらい昔と比べて変化していた、ということ。
「冒険者ギルド、変わったなぁ……」
時間が経てば場所も変わっていくだろうと、まるで歳をとった人間のような感想を抱きつつ、さらに室内の観察を続けてみる。
建物の中には、カウンターテーブルの向こう側に座っている受付の女性が1人と、冒険者と思われる女性たちが6人ほど集まってテーブルを囲みながら待機していた。
彼女たちは、ギルドから発行される依頼を待っているのか。それとも、他の仲間と待ち合わせでもしているのかな。今は昼の13時を過ぎたぐらいだったので、ギルドからの依頼を受けて冒険者の仕事をするのは、かなり遅めの時間だと思うが。
冒険者には、それぞれのスタイルがあるので決めつけるのは良くないか。
もしかすると、冒険者ギルドの建物の中が綺麗になって変わったのと同じように、冒険者の常識も昔と比べて変化している可能性があるのかもしれないから。僕が知る常識が古臭くなっているかも。その辺りを注意しながら、受付の女性と話すべきか。
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