【未完】大魔法使いの転生エルフ~超希少価値な男性エルフの冒険~
キョウキョウ
第1話 エルフは魔法研究所をクビになった
「うわっ。眩しい……」
久しぶりに建物の外に出ると空から降り注ぐ暖かい光が身体に当たって、眩しい。それだけで、落ち込んでいた気分が晴れ晴れとした。手をかざして空を見上げると、お日様が憎たらしいほど元気に輝いている。
時刻は昼。最近ずっと研究室に籠もりっきりで外には出てなかったから、しばらく見ていなかった太陽の光は明るく、目に焼き付くような感覚を味わう。
「よっ、と。これでよし」
空間魔法で取り出したフードを頭に被って、日よけに使う。これで太陽の眩しさは軽減された。ちょうど素顔も隠しておきたかったので都合が良い。城下町に出れば、この顔と長い耳は目立ってしまうかもしれないから。
「さぁて。これから、どうしようかなぁ?」
つい先ほど、長年勤めていた王国が運営する魔法研究所の研究員という仕事を突然クビにされたばかりだった。実験中の最中に研究室から追い出されてしまった僕は、城下町を行く当てもなく歩いていた。
外に出るのは1ヶ月ぶりで、城下町に出てくるのは約半年ぶりだった。引きこもり体質の多いエルフらしい生活を送っていた。外に出ず、研究室にずっとこもっていたから。太陽も明るく見えるのは当然だろう。
***
クビを言い渡されたのは本当に予期していない突然の出来事だった。王都防衛用の結界魔法について実験している最中、3人の女性たちが研究室に入ってきた。
「ちょっと今、実験の最中です。話なら後で」
実験の最中だったので、すぐに部屋から出ていくように言ったけれども彼女たちは僕の言葉を無視して従わない。逆に、こう言われてしまった。
「今すぐに実験を止めなさい」
「え?」
聞き間違いではない。大事な実験の最中で手元に向けていた視線を、声のした方へ向ける。部屋の中に入ってきたのは魔法研究所の所長だった。手が離せないので後にしてくれと伝えたというのに、実験を止めろという言葉が返ってきた。続けて彼女は言った。
「今日限りで貴女は魔法研究所をクビになりました。この場から立ち去りなさい」
「はぁ? いやいや、ちょっと待ってください。どういうことですか? 僕をクビにするという理由は?」
アポもなく僕の研究室に押し入ってきたと思ったら、後ろには武装している女兵士2名を連れていて、所長の口からクビを言い渡された。
事前に何も知らされていなかったので、僕は戸惑う。いきなり来て研究員をクビにするって言われても。もう僕のクビは、決定事項なのだろうか。
いやいや。国を防衛するための大事な実験の邪魔をしてきたと思ったら、いきなりクビの宣告?
なぜ僕が魔法研究所をクビにされるのかについて説明を求める。意味が分からないし、説明を求めるのは当然の権利だと思うんだけど。
クビにされる理由について質問すると、彼女は表情を歪めて口を開いた。
「問答無用です。命令を聞かないのなら、この兵士たちに追い出させます」
「いや、だからクビになった理由について説明を……」
「従わないのなら、強硬手段に出ますよ。今すぐ、命令に従いなさい」
嗜虐心を抱いているような悪い表情。僕を痛めつけて、楽しんでいるようだった。そんな所長は話し合いに応じず、クビに理由について詳細は教えてくれない。
今すぐに研究所から出て行くようにと繰り返すだけ。言うことを聞かないと僕は、鉄の鎧を着込んだ屈強な女兵士の2人に力づくで研究所から追い出されることになるそうだ。
「……はぁ。分かりました、クビですね。今すぐに研究室を出ていきますよ」
「それで良い。早くしなさい!」
納得できないし、僕も得意な魔法の力を使って反撃してやろうかとも考えた。だが面倒だったので、無抵抗で所長の指示に従うことにした。
僕が素直に言うことを聞くと、所長は嬉しそうに口元を歪める。計画通り、というような表情を浮かべている。どうやら事前に、こうなるように準備していたようだ。
所長は僕のことをなぜか嫌っていたから、かなり前から追い出そうと計画していたのかもしれない。
ということで、僕は魔法研究所をクビになって追い出されてしまったので城下町を1人でブラブラと歩いている、という状況だった。
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