第44話 他部族魔物の勧誘
「これが僕の提案するキャット・ニャー開発計画さ」
この数日間、睡眠時間を削って練るに練った計画を提案するが、
「……」
だれもかれも無言でポカーンと半口を開けるのみ。
「うん? 何かまずかった?」
流石に不安となって尋ねてみるが、
「いや、マズイというより、なぁ?」
チャトが隣のターマによくわからない同意を求めるが、
「ええ……」
やはり、微妙な表情で顎を引くのみ。
キージはしばし、両腕を組んで僕を凝視していたが、
「多分皆、疑問なのは、『そもそも論としてそんなことが可能なのか?』ということだ」
皆のこの態度を上手く翻訳してくれた。
「多分僕の能力ならできると思う」
この数日間の検証でそれは実証されたといってよい。
「シャルムに頼らない防御結界の構築。さらに、いくつかの魔法が付与された防衛系アイテムを開発し、各所に設置する。さらに里自体の大幅な生産性の向上を図り、生活の質を底上げする。もしこんなことが可能なら……」
キージはブツブツと呟きながら何やら試案を始めてしまう。
「ともかく、了解さえもらえればすぐにも出取りかかるよ。それよりも決めて欲しいことがある」
「さっきのお主が言った他部族との協力か……」
猫顔の老婆のこの言葉に、皆の顔に濃厚な不安が張り付く。
「私は反対です! 過去にあいつらに同胞がどれほど犠牲になったかご存じでしょう?」
黒髪をおかっぱにした猫の頭部の青年が即座に強い拒絶の台詞を吐く。
「じゃが、このままではアルデバラン軍の南下を止められぬ。仲良くこのノースグランドの全魔物が奴らの玩具になる。それは紛れもない事実じゃ」
猫顔の老婆が首を左右に大きく振って噛みしめるように口にする。
「だからって、あの野蛮な豚どもや鬼どもと手を取り合うだなんて、上手くいわけがないわっ!」
ターマが右拳を畳に叩きつけるが、
「そうだね。手を取り合う目的なら、彼らのような戦闘狂とは上手くはいかないよ」
不思議だ。記憶のない僕に戦闘狂の知り合いなどいないはずなのに、これだけは断言できる。奴らと仲良く手を取りあおうなど考えるだけ無駄だ。
奴らにあるのは己より強いか弱いか。それだけだから。弱いと断言するこちらの言をきくことは決してない。
「おいおい、お前まさか奴らと戦争でもするつもりか?」
「殺しあうつもりまではないから戦争ではないさ。ただ、徹底的にぶちのめすのみ」
完全屈服させた上で手を差し伸べる。それが奴らと対等に話す唯一ともいえる方法。
「徹底的にぶちのめすって簡単にいうが、相手はこのノースグランドでも一、二を争う武闘派部族だぞ?」
「関係ないさ。ノースグランドの北部がほぼ占領された以上、アルデバランという魔族の力はそれ以上なのは間違いない。このまま戦力を分散させていればまずこの南部も奴らに占拠される」
「いや、そいうことじゃなくてだな。それができるかどうかが問題なんだよ!」
チャトの至極当然の指摘に、
「できるかできないかじゃない。やるしかないんだ」
強く口調でそう断言する。
このキャット・ニャーを観察対象としている黒幕は悪質な異常者だ。
今回の件ではっきりしたことがある。黒幕には僕らを特段滅ぼす意思もなければ救う意思もない。
多分、奴は僕らに難題を押し付け無事クリアできるかを観察しているんだ。クリアできれば、次のステージに進む。敗北すればそれまで。そんなゲームでもやっているんだと思う。
だからこそ、このまま手をこまねていてれば十中八九、僕らは敗北する。そして僕らの敗北は死を意味する。ならば、今は危険を冒してでも動くしかない。
「結局またそれか。だが、ギルの言う通りだろうな」
チャトはため息交じりに肩を竦めて、
「キージさん、俺はギルの提案を押すぜ!」
神妙な顔で言い放つ。
「道はないか。現状を鑑みれば確かにそうかもしれないわね。私もギルに賛同する。皆もこのままじゃダメだって、もうわかっているでしょ?」
ターマも頷き、皆に同意を求める。一同、苦虫を嚙み潰したよう顔で小さく頷く。
「やるしかない……のだろうな。どのみち、このままではこの里に、いやこのノースグランドの魔物に未来はない」
キージの宣言にも似た言を契機にキャット・ニャーは次の
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