私の王子は魔法使い

西東友一

第1話 10年の恋が冷める理由

 綺麗なドレス。輝かしいティアラ。そして紅い口紅。

 

 そんな輝かしいものよりも私の目に映ったのは、お姫様の嬉しそうな笑顔。


「ねぇ、たいちゃん」

 私は同じ誕生日で一緒に10歳の誕生日を祝い合う太一に声を掛ける。

「うーん?あっ…きたーーー!!」

 カードゲームのカードの袋を開けて、カードを見てガッツポーズを何度もして喜ぶ。


 今回、大好きな太一と誕生日を祝うため、私がプレゼント交換をしたいとねだった。

 最初は嫌がっていた太一だったが、私がカードゲームのカードを買ってあげると言ったら、太一は自分の親を説得するのにその方がいいと思ったのだろう。

 

 喜んで私の誘いに乗ってきた。

 

 そして、そのお返しに貰ったシンデレラの映画のBDを太一と一緒に見ていたのである。

 王子と結ばれて踊るシーンを見ていると、自分まで嬉しい気持ちになり、心も体も綺麗になった気がする。

「ねぇ、たいちゃん」

「うーんと、あいつを…変えて、この魔法を入れれば…」

「ねぇって…」

「んっなに?」

「私、お姫様になりたい。だから、たいちゃん。私の王子様になって!!」

 私はエンドロールを見ながら、横にいた太一にの腕に寄りかかり、上目遣いで太一を見る。


「はっ、みほり、おまえさ~。10歳にもなって、何ガキみたいなこと言ってんの?お姫様なんてなれるわけないじゃん。てか、俺王子になんてなりたくないし」

 私のことなんて全く見ないで、鼻で笑ってカードに夢中な太一。

 私の心は———いや、太一への恋心はこの時に割れてしまったと思っている。


「なんで、そんな言い方…するのよ!!」

 私はクッションで思いっきり太一を何度も叩く。


「ちょっ、やめろよっ」

「たいちゃんだって、カードゲームとか子どもっぽいことしてるじゃん!!なんで、そんなこと言うのよぉ!!それに私、アクセサリーが欲しいって言ったのにぃ~~」

 私は泣いてしまう。

「えっ、だって…やだよ、おれ。そんなとこ行くの」

「私だって、カード買うの恥ずかしかったけど、たいちゃんが喜ぶと思って…買いに行ったんだよ!?なのに、たいちゃんなんて…だ~い嫌い!!」

 

 ———それからの私は10年間、太一と口を利くことはなかった。

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