第75話 別れ
「よし。話はこれで終わりだな。そろそろレイ君が心配だから街に帰るぞ」
俺達が遭難してから既に1日以上が経過している。そろそろ戻らないとレイ君が心配しているだろうし、レイ君の事も心配だ。
「レイ様の事なら心配無用ですよ。私たちの娘が既に接触しておりますので」
「おお。それは助かったぞ。それでレイ君の様子がどうだった?」
「分かりかねます。私が知っているのは、レイ様と一緒に冒険の旅に出たという事くらいでございます」
はあ? 旅に出ただと! それなら俺は何も言えんな。俺自身も勝手に旅に出た身だからな。せいぜい旅を楽しんで来いというくらいかな。レッドの娘が一緒ならば、まあ大丈夫だろう。
「レイ君も旅に出たなら、そっちはもういいか。だったら母さんにアイシャ達を紹介したいし、久々に国に戻るかな」
「わーい。お嫁さんに会いたーい」
「やった。これで私も結婚できる!」
二人も戻りたそうだし、そろそろ帰る事にするか。
「アル様、国に戻られる前に最後にお連れしたい所がございます。ここの近くですので、ついて来て頂けますか」
「わかった」
レッドの後についていくと、トーキョーの街が一望できる小高い丘の上に案内された。母さんとトウカは先ほどの屋敷で待ってもらっている。
「ここは?」
「ご主人様とその奥様となるはずだったお方の眠る場所です」
二人の墓という事か。
「生前、ご主人様は毎日ここに参っておられました」
想い人の眠るお墓か。俺の寿命がどれくらいあるのかしらんが、もしアイシャ達が先に亡くなったら、俺もそうする様になるのだろうか?
「静かで、いい場所だな。なんだか懐かしい気もするが、どうして俺をここに?」
「アル様にお願いがございまして――私を殺して頂けないでしょうか?」
なっ!!
「私もご主人様の側で眠らせて欲しいのです」
そんな事、無理に決まっているだろ。母さんが悲しむ。
「ミケには既に伝え、納得して貰っております。私は全てが終わったらご主人様の元に向かうと決めていたのです」
「バカな事を言うな!」
「バカな事ではございません。生まれてから約千年。十分に生きました。私はご主人様の元に参りとうございます」
「だったら、俺の知らないところで勝手に死ね。俺は自分の大切なものは一つだって失くたくない。お前はいつも俺をからかってきたり、覗いたりするウザイ奴だ――だが、お前だって俺にとっては大切な存在なんだ。俺の前で勝手に死ぬことは許さん」
「アル様……。それはもっとからかったり、覗けということでございますね」
違う! どう曲解すればそうなるんだ。
「ふふ。冗談でございます。ご主人様の元に参るのは今しばらく後にいたします。ですが、私はここでお別れさせていただきます。これよりはここを守って生きていこうと思います」
「そうか。お前の人生だ。好きにしろ」
「アル様、お元気で」
「そっちも達者でな」
レッドと別れて、二人の元へ戻る。レッドとは、恐らくもう二度と会う事はないのだろうな。ウザイ奴だったが、いろいろと助けてくれた。父親だったこともあるし、従者だったこともある。ずっと俺を助けてくれていた。
これからはお前の自由に生きてくれ。
「師匠、お帰り。レッドは?」
ちらりと母さんの方を見ると、覚悟はしていた、分かっているわという表情で頷いた。
「母さん、安心してくれ。殺しちゃいない。今後はここを守って生きていくそうだぞ」
「そう。あの人がそんな事を。あの人はご主人様が作った最初の個体だからね。ここに居たいんでしょうね。私は孫に会う事優先よ」
そうですか。母さんはブレないな。ではさっさと行くとするか。
「トウカ、もう出発しても大丈夫か?」
「全然オッケー。早く帰って、結婚しよっ」
「それじゃあ、行きましょうか。こっちよ」
この巨大生物から出る方法は母さんが知っているらしいので、ついて行く。
「なんじゃこりゃ」
案内されてきた部屋には何やら沢山の魔法文字の様な文様が地面に描かれていた。
「これは転送装置よ。これを踏めば、世界各地にある私たちの家に移動できるのよ。ちなみにあれがアルノーグルにつながっているわ」
母さんは部屋の右奥を指す。部屋には無数の魔法文字があるので、これだけ世界各地へ移動することができるのか。すごい魔法だ。便利だが旅の楽しさが半減するな。旅は移動中も楽しんでこそだと思うのだ。まあ、今はそんなことはいいか。
「よし、じゃあ帰るぞ」
「「おー」」
「ネネはととさまと一緒がいいニャ」
「だーめ。ネネは私と一緒に行くのよ。あんたは私のペットにすることにしたわ」
「ニャんだって。嫌ニャ。勘弁してニャ」
ネネがトウカに首根っこを掴まれてジタバタしている。可哀そうに。頑張れよ。
そう思いながら、俺は転送装置の上に立った。
あれ、誰か忘れている様な……。
アル様達は行ったみたいですね。今の主であるアル様との繋がりが遠ざかったのを告げてくれる。アル様とは一時は親として接し、ある時は従者としてご一緒した。期間としてはほんの短い間だけだった。
でも、楽しかった。ご主人様と一緒に暮らしている時と同じくらい楽しい日々でした。ありがとうございました。
最後に今までのお詫びに一撃をもらってあげようと思ったのですがね。
ご主人様、これで全て終わりましたよ。
無茶な仕事をたくさん残してくれたので、私の体はボロボロですよ。本当に困ったお方だ。
ちょっと疲れました。少し眠いので寝てもよろしいでしょうか。ちょっとだけですから――
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こんにちは。
鬼滅の刃、煉獄杏寿郎の日輪刀を購入予約した作者です。
デモンスレイヤーは買わないと駄目ですよね。本作でもちらっと出してますし。
映画観て号泣しちゃいました。最近、涙腺が崩壊してて駄目ですね。
ということで後書きです。
レッドとの別れのお話でした。レッドはその後、どうなったのでしょうか。気になりますね。でも内緒です。ご想像にお任せいたします。
いよいよクライマックスが近づいて来ました。
それではまた明日。
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