第40話 取引 願い2つ

 天職【アクセサリーショップ】の説明をするお礼に、騎士団長がお願い2つ叶えてくれるのか。


 最初は、これだな。


「まず私の願いは、平和です。フォルブルク家の当主サフマン・フォルブルク様は、住み良い街造りの為に尽力しています。しかし私腹を肥やす害悪な貴族が多いと聞いた事があります。なので、そんな貴族が納める土地を無くしてください。」

 これが出来れば、より良い街が増えるだろう。騎士団長グロースさんは、苦い顔をしている。


「団長、この話はサフマン・フォルブルク伯爵より話を伺っています。しかも、失脚させる証拠も全て預かっています。」

 パリスさんがサフマン様と話していたのがこれか。パリスさんは、魔法袋から書類の束を渡す。


「そうか。出来るか出来ないかで言えば、出来る。だが時間は掛かるだろう。だがこれを見せられたらな。はぁーー。」書類をパラパラめくり見ている。見て後悔したようにため息を盛大に吐いている。


「ははは。証拠には、末端の騎士団員の不正も含まれていますからね。サフマン・フォルブルク伯爵は、我々が従うしかないと思っているのでしょう。」

 王国騎士団は、各村や街を護衛として巡回している。なので、そんな劣悪な環境の村があれば、報告されるが、それが無いなら騎士団の誰かが不正しているのだろう。


「出来ればサフマン様と同じ考えの人が増えて欲しいです。」

 僕は答えると、グロース団長が了解してくれた。次のお願いは、どうしようかな。


「そうですね。【アクセサリーショップ】天職の能力を知る人を厳選してください。」

 騎士団全員に知られるのは、とても危険だからな。


「それは、大丈夫だがもし広まったらどうするんだ?」

 グロース団長が聞いてくる。


【アクセサリーショップ】の能力が広まったら、面倒な事になりそうだな。悪人が沢山集まったり、貴族が権力を盾に命令してくるだろう。

 それより、まずは広まった元凶に罰を与えるだろうな。


「なるほど。それが原因で騎士団が滅ぶのか。」

 僕が考えていると、グロース団長が小さく呟く。知らないうちに僕は、悪い笑顔を僕は浮かべていたみたいだ。


「エルジュ殿、私とグロース団長のみ天職の説明を聞きます。そして他の団員には、説明出来る者を決めて説明します。」

 パリスさんが言う。僕も全ての説明はしないつもりだ。王国騎士団をそこまで信用していないから。


「分かりました。説明出来る事を説明します。」

 僕は【アクセサリーショップ】について説明する。

 素材でアクセサリーを作る事ができる。魔物石で魔鉱石を作れて、能力が使える。炎魔法が使える。

 この3つを説明した。

 能力を重ねて発動出来る事と、普通の魔鉱石なら魔力がいらない事は、説明しない。


「なるほど。これを使えば剛力Lv3が使えるのか。」

 グロース団長に実演して剛力Lv3のキーホルダーを渡してみた。


 キーホルダー

 魔鉱石

 剛力Lv3

 力が90%上がる。

 効果時間 10分


「ほう?力がかなり上がったな。」

 グロース団長が手を握り確かめている。やけに笑顔だ。


「パリスさんの腕を治したのが、一部再生のアクセサリーです。効果は、パリスさんなら分かりますよね?」

 能力アップは、まだ広めても良いが、一部再生の能力は危険が増えるだろう。広めるのは、僕の力がもっと上がってからだな。


「むむう。そうですね。【再生師】の能力がエルジュ殿なら使えるならば、危険が増えますな。思ったよりも万能な能力ですな。」

 パリスさんが険しい表情で考えている。だから言いたくなかったのに。


「このアクセサリーがあれば、クロスも助かるだろうな。呪いも治せるのか?」


 クロス?副団長の事かな?

 呪いか。呪い解除の魔物石は、持ってないかな。いや、父さんに貰った中にあるのかな?


「どうでしょう。魔物石があれば、出来ます。」


「そうか。騎士団でも魔物石を集めておこう。あと他の団員には、説明しない事にする。」

 グロース団長が決めた。他の団員には、説明しない方が団員の為になるみたいだ。団員が狙われたら、秘密を守る事が出来ないだろうし。


「そうですか。分かりました。」


「エルジュ君は、部屋に案内する。パリスと同室だが護衛の為に我慢してくれ。」

 グロースさんは、そう言い頭を下げる。今後の計画を考えるみたいだ。


 僕は、パリスさんと共に部屋を出て、泊まる部屋へ向かっていく。



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