第29話 魔鉱石の実験と貴族達のパーティー

 翌日は、騎士が来なかった。昨夜にサーシャさんから伝言板で、貴族様達のパーティーに行くと、書かれていた。


 サーシャさんの眼が回復したため、貴族様達のパーティーに出ないと行けなくなったみたいだ。


 なので、僕は今日は家で過ごしている。


 貰った魔鉱石で、実験するのだ。


 テーブルに杖と魔鉱石3つをだす。魔鉱石をキーホルダーにしてみる。



 魔鉱石

 効果 回復Lv1

 回復魔法が使える。軽度の傷が治る。


 魔鉱石

 効果 光魔法Lv1

 光魔法を発動させる。


 魔鉱石

 効果 氷魔法Lv1

 氷魔法を発動させる。


 キーホルダーにしても効果は、変わらなかった。効果時間が無いので、キーホルダーに触れて発動するが、魔力を使った様子がない。


「なるほど。普通の魔鉱石を使えば、効果時間がなく、魔法が使えるのか。」

 それなら、魔物石を集めるよりも、魔鉱石を最初から集めれば、魔法使いたい放題だな。


 杖から魔鉱石を取り出し、キーホルダーにする。


 魔鉱石

 効果 魔力回復Lv1

 魔力を回復する


 うん。問題ないな。魔力回復の魔鉱石があれば、魔力枯渇の心配が無くなるな。魔力回復の魔鉱石をブレスレットにして、常に身につける。紫色のブレスレットだ。


 これが出来ただけで、十分だな。


 杖の部分は、ただの鉄として溶かして使う。


 魔法袋は、リュックサックの中に入れている。予備の物置だ。



 実験も終わったので、マリームギルドに向かい、依頼を受ける。ゴブリンリーダーの魔物石を集めるのだ。


 問題も無く夕飯前まで、ダンジョンで魔物石を集める。


 10階層のボスを倒し、マリームギルドへ戻り受付で依頼達成すると、4等級冒険者へとランクアップした。


 家に帰り夕飯を食べ、部屋でのんびりしていると、伝言板に文字が浮かぶ。


 エルジュさん。この毒無効の魔鉱石は、どの様に使うのですか。お父様を助けて下さい。


 と普段の綺麗な文字ではなく、書きなぐった様な文字だか、サーシャさんの癖が見える。


 お父様を助けて下さい?毒か!


 僕は、丁寧に文字を書いて行く。


 ネックレスを首にかけて、使える様に願ってください。


 文字を書くと、返信がない。バタバタしているのかな。

 僕は、両親の元に伝言板を持っていき、説明する。


「エルジュ。サフマン様が毒を食らったのか?」

 伝言板を見ると、多分そうだろう。


「詳しくは、わからないが多分」

 僕が答えると、伝言板に文字が浮かぶ。



 イドリスです。ご心配お掛けしました。回復しました。詳しくは、明日屋敷にて。


 護衛隊長のイドリスさんから、返信がきた。


「回復か。恐らく毒を盛られたのだろうな。」

 父さんが深刻そうに、話している。


 その後返信が無いので、今日は寝るか。


 ありがとうございます、とサーシャさんの字が浮かび上がったので、どういたしまして、と書いて寝る。



 ◇



「ぐっがっ!」

 巨大なホールにうめき声が響く。


 ガシャン!と食器が落ちる大きな音を立てて、一人の男が床に倒れ込む。


「あなた!」

 妻アリス・フォルブルクが倒れた夫、サフマン・フォルブルクに寄り添う。


 周囲にいる、4組の貴族達は、遠巻きに見ている。


 サフマン・フォルブルクに向かって回復師が3人向かって行くが、一人の回復をサーシャ・フォルブルクは、指を指して叫ぶ。


「イドリス!あの人をすぐに止めて!」

 護衛隊長のイドリスは、一人の男性回復師を羽交い締めにする。


「離せ!すぐに治さないと手遅れになるぞ!」

 羽交い締めにされた、男は騒いでいる。

 イドリスは、男の言葉を無視している。それよりも、サーシャ様の言葉が、信憑性が高いのだ。断罪眼があり、嘘と、邪の感情を感じる事が出来るようになっていた。


「毒です!レベル3です!」

 サフマンの元に行った回復師が言う。レベル3の毒を解毒させる事は、出来ないみたいだ。


「どうにかならないの!」

 アリス・フォルブルクが叫ぶが、誰も答えない。


「サーシャお嬢様!」

 フォルブルク家の騎士がサーシャの元に近づく。


「サーシャお嬢様。そのネックレスの黒い石は、毒無効Lv3です。すぐに使って下さい。」

 騎士は、小声で言う。フォルブルク家の鑑定師だ。


 サーシャは、サフマンの元に向かい、ネックレスを当てる。ダメだ反応がない。


「サーシャ様!」

 イドリスが伝言板を持ってくる。


「エルジュさん。助けてください。」

 サーシャが伝言板に書いていく。



「ネックレスを首にかけて、願う?」

 サーシャは、ネックレスをサフマンの首にかけて願う。


「お父様。」

 願うと効果が発動した。毒無効Lv3と剛力Lv3×5個だ。


「復活だ!」

 サフマンは、飛び起きて叫ぶ。


 周りの人達か、あんぐりと口を開けている。死にかけた人が、飛び起きたのだ。


「サーシャありがとうな。ところで、そいつはなんだ?」

 イドリスに羽交い締めにされている回復師をにらみつける。



「あの人は、お父様を殺そうとしたのです。」

 違う!と男は叫ぶが否定すれば、するほどサーシャに嘘がばれている。


「黒幕は、誰だ?」

 サフマンが言うと、サーシャが一人の男性を指指した。


「どう言うことかな?シラジラ・ユウーザ男爵?」

 サフマンが睨み付ける。

 シラジラ・ユウーザ男爵。今回のパーティーの主催者で、欲深い男だ。他人を蹴落とし、実力がないが、裏工作を続けている貴族だ。


「無事で良かった。」

 とユウーザ男爵が言うが、周りの貴族は、誰も信用出来ないだろう。他の貴族達は、そそくさと帰っていく。


 残されたのは、ユウーザ夫婦とフォルブルク家の夫婦、サーシャと護衛隊だけだ。


「今謝れば許してやるぞ?」

 サフマンが睨み付けるが、ユウーザ男爵は、答えない。


「そうか。狙う相手を間違ったな。楽しみしておれ。」

 サフマン達が帰ろうとする。


「ふざけるな!おい!やってしまえ!」

 ユウーザ男爵が叫ぶと、柄が悪い男達30人ほど出てきた。


「ふっ。予想通りだな。」

 サフマンが呟く。護衛隊達も身構える。


「男爵様!やっちゃっていいのかい?」

 リーダーと思われる男が言う。手には斧を持った男だ。


「弱そうだな。サーシャ達は、下がってろよ!」

 そう言うと、サフマン様が走っていく。もともと、武勲で貴族になった、戦闘職のサフマン様が素手で、男達を倒していく。


 サフマンが殴りつけると、肉が抉れ、骨がむき出しになる。


「うむ。手応えが無いな。」

 剛力Lv3×5個で筋力が4.5倍になった一撃に誰も抵抗出来ずに、サフマン一人で5分もかからず、全滅させた。護衛隊の出番はなかった。


 ガタガタと足を震わせ、ユウーザ男爵は、膝をついた。


 その後、街の衛兵が呼ばれ、ユウーザ男爵達は、投獄された。






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