第26話 サーシャ様の呼び出し
翌朝から騎士達は、家の前で待っていた。
朝食を済ませ、家を出ると、「サーシャ様がお待ちです。」と言われ屋敷まで騎士達と歩いていく。
屋敷に着くと、メイドの案内で、サーシャ様がいる部屋に連れていかれた。
テーブルとソファがあり、壁際に本棚が並んだ部屋だ。騎士達が護衛として部屋で待機していても、十分広い部屋だ。。
ソファにサーシャ様が座って待っていた。碧眼が綺麗に輝いている。
「おはようございます。エルジュ様。」
サーシャ様が立ち上がり挨拶をしてくる。
「おはようございます。サーシャ様。僕に様なんてつけなくていいですよ。」
僕も挨拶をする。
「そうですか。それならエルジュさんと呼びます。私のこともサーシャと呼んで下さい。」
テーブルにメイドが用意した紅茶が並んでいる。口をつけると、茶葉の香りが鼻いっぱいに広がる。うん。美味しい。
「それで、サーシャさん。今日は、どのような用事があったのですか?」
貴族のお嬢様を呼び捨てにするのは、僕には難しい。
「今まで、目が見えなかったので、同世代の友達もいないのです。ぜひエルジュさんと友達になりたいのです!」
サーシャさんは、屋敷の中でしか生活しておらず、友達がいないようだ。普通の生活ですら不便なため、他の貴族様との交流も無いのだろう。
「もちろん。喜んで。」
僕は、答える。サーシャさんと、友達になっても問題はない。むしろ僕も友達がぜんぜんいないのだ。
「今日は私が聞きたい事があるのです。エルジュさんは、これから何をしていくのですか?」
何をしていくか?
「僕は、まずダンジョンでレベル上げをして強くなりたいのです。」
サーシャさんは、ダンジョン!と好奇な眼を向け話を聞いている。
僕は、ダンジョンでの話をしていく。ゴブリンを倒したり、5階層のボス、ゴブリンリーダーを倒したり、サンダーウルフなどの戦いを話していく。15階層のボス、グランドスネークは、巨大な蛇を一人で倒したと、楽しく話していて、ふと周りの騎士達を見ると、口を開けて聞いていた。
あれ?これ話して大丈夫なのか?
サーシャさんは、それでそれで!と話を楽しく聞いてくれているが、グランドスネークを一人で倒すのは、普通ではないののかな?
「あの、大丈夫ですか?」
僕は、護衛の騎士、白髪で白髭の騎士イドリスさんに聞く。サーシャさんの護衛隊長になったみたいだ。あと僕を呼びにくるのもイドリスさんだ。
「はい。あのダンジョンの15階層のボスを一人で倒したとは、信じられませんが、サーシャ様が否定しないと言うことは、真実なのでしょうね。」
ははは、と渇いた笑いを出しながらイドリスさんは、話している。サーシャさんの断罪眼があれば、嘘をすぐに見破ってしまうのだから、真実となる。
「私はダンジョンに詳しく無いのだけど、15階層ならどのくらい強いのかしら?」
サーシャさんがイドリスさんに聞いている。
「はい。あそこのダンジョン15階層のボスは、戦闘職の4人パーティーがレベル25程で倒せます。ですが、エルジュ様は、一人で倒したのなら、その4人合わせた以上の力を持っているのでしょう。」
うん、イドリスさんの話を改めて聞いたら、おかしい事だらけだな。今度からは気をつけよう。
サーシャさんは、凄い!と感動している。
「エルジュさん。私もダンジョンに行ってみたいです!」
騎士達がビクリと震える。
「時期がくればサーシャ様も、ダンジョンに行く事になるでしょう。レベルを上げるには、必要なことですので。」
イドリスさんがやんわりと、まだ行ってはいけないと、伝えている。
まだ眼が治ったばかりだからな。スキルについてまだまだ未熟だろう。
サーシャさんは、残念そうにしているが、いずれ行けると知って笑顔だ。騎士達は、護衛だから大変だろうな。
その後も、何気ない話をしてお昼まで過ごした。屋敷で昼食をご馳走になり、午後からは、サーシャさんが、文字などの勉強をするみたいだ。見える様になり、学ぶ必要がでてきたのだ。
僕は、イドリスさん達と一緒に家まで帰ってきた。
ありがとうございました。とイドリスさん達は、帰って行った。
ふー、疲れた。
体力よりも、精神的に疲れた。
僕は、家に入り、母さんに顔を出す。
父さんは、ダンジョンにいるみたいだ。
自分の部屋に入り、準備をする。
さて、鉄の盾で実験をしようかな。
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