全盲のお嬢様 フォルブルク家の災難

第23話 フォルブルク家 騎士

 エルジュは、目元をこすりながら、キッチンへ向かう。昨夜は、魔鉱石のレベルを3まで上げていたため、なかなか寝付けなかったのだ。


「おはようエルジュ!」

 元気よく父が言う。僕も挨拶して席につく。


 母さんが用意してくれた、朝食が並んでいる。うん。美味しい。



 食事も終わる頃、玄関から声が聞こえる。


 ドンドン!

 玄関のドアを叩く音がする。


 父さんがドアを開けると、シルバーの全身鎧の男性が3人立っていた。


「私は、フォルブルク家の騎士、サドバスと申します。」

 白髪頭で白い髭を生やした、60代の騎士が名乗る。フォルブルク家と言えば、このハリソン街を納める伯爵家の貴族様だ。


 僕は、隠れて玄関を見ている。擬態Lv3を使っているから父さんの後ろにいても、騎士達は気付いていない。以前教会でみた騎士だな。


 父も頭を下げて名乗る。


「先日教会で、天職の儀式を行った、エルジュ君は、いらっしゃいますか?」


 僕を探しているのか?


「エルジュは、いますがどういった用事なのでしょうか。」

 普通騎士が家にくるのは、犯罪者がいるなどの要件しかない。家の外には、野次馬が集まっている。父さんも疑問を持ってきいている。


「当主のフォルブルク様が、【預言者】と【占い師】にある重要な要件を聞いたのです。ご令嬢のサーシャ様と言えば分かりますか。」

 サーシャ・フォルブルク。フォルブルク家の四女で全盲のお嬢様と言えば有名だ。生まれてすぐに、全盲になり、両親はありとあらゆる【再生師】や【治癒師】に頼んだが、回復することはなかった。


 預言者に占い師は、望んだ物事の場所等を知ることが出来る天職だ。


「街の教会で一般職の黒髪の男の子が鍵を握ると、預言者と占い師に言われ聞いて回りました。」

 教会から僕の事を知って家にきたのか。


「それで、エルジュに何をさせる気ですか?」


「一度屋敷に招待したいと思います。ディナーでもご一緒したいそうです。」

 騎士は、ディナーと言うが、絶対それ以上に厄介な事が起こるだろう。貴族様のお願いは、命令と一般人には変わらない。


「う〜ん。拒否は?」

 父さんが聞くが、騎士は首を横にふる。ダメとは言わないが、絶対ダメなのだろう。


「エルジュ!聞いてただろ!ちょっとこい!」

 父が部屋に向かって、大声で呼ぶ。


 後ろにいるから、そんな大声出さないでくれよ。部屋に戻り、擬態を解いて、玄関に向かう。


「おはようございます。エルジュです。」


 騎士達は、先ほどと同じ説明を僕にする。拒否できないので、屋敷にディナーを食べに行く事になった。


「我々は、17時に迎えに来ます。」

 騎士達は、家を出ていったが、家の前で待機している。


「帰らないのですか?」

 と聞くが、大丈夫ですと答えて動かない。逃がさない様に見張っているのかな。




 まあ、いいか。僕は、今日もアクセサリーを作る。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る