ジムに入会したい男 ライト。
もるっさん
第1話 健康ブームに乗っかりたい
俺の名前はライト。
本当の名前もあるけど、今の時代はセキュリティー対策とかで本名は公的なものとかパスワード替わりにしか使わなくなった。
だから、場所によってニックネームをいくつか持っていて使い分けている。
筋トレブームは すっかり定着していて街を歩いていても太っている人は少なくなった。
筋肉質な人ばっかり、なんでも科学的根拠に基づくエビデンスとかいうものが信じられるようになったので、食品業界を始めとして世界中に変化が起きたとニュースで言っていた。
今ではトレーニングジムはコンビニのように立ち並び、
スーパーの一区画にトレーニングジムのお店が入っているのが普通の時代になっている。
でも それだけに買い物に行くといつも、ジムで素敵な汗をかいているお姉さんが見えてしまう。
毎日の習慣とばかりに ストイックにトレーニングに励むお兄さんもいて羨ましい。
しかも バーベルなどが置かれている奥の部屋では ムキムキの4~5人の男たちが
過酷なトレーニングをお互いに称え合い、笑顔でスポーツドリンクを飲むという。
秘密のお茶会まで開かれているのだ。
俺もあのお茶会に招待されてぇ~
突然 後ろから声をかけられた。
「あれ? 君 いつもジムを見てるよね?トレーニングに興味あるの?」
買い物袋を下げてジムを眺めている俺に 赤ずきんちゃんのコスプレをした女性が話しかけてきた。
ナンパだろうか?
それは違うだろうけど、でも ドキドキするよね。
そう言えば赤ずきんちゃんのスカートってミニスカートであっているのだろうか?
グリム童話の話だっけ?
エプロンと同じ丈くらいのスカートで、一サイズ小さいブラウスは、
いつかボタンがはち切れそうな感じだった。
そんな服を着て歩いていたら オオカミに襲われても不思議じゃないだろう。
あぁ~あ こんなロリっ子お姉さんをお婆さんの家まで送ってあげられたらいいのにな~。
「ええ 興味はあるけどなかなか 勇気が持てないから見てるんですよ」
「そうなんだぁ~ でも ここのジムの器具ね、大衆向けだしあまりよくないよ。これあげる」
ロリっ子お姉さんは俺に パンフレットを手渡してきた。
触れた手が 暖かい。
無意識に肺に息をいっぱい吸い込んでしまった。・・ この子、かわいいわ。
「おい 何してるんだ?そろそろ行くぞ」
「うん 今行く!! じゃぁ また会えるかもね」
赤ずきんちゃんはウィンクをすると行ってしまった。
でも 待っていたのは両手に買い物袋をさげたムキムキの狼男だ。
赤ずきんちゃんが狼に食べられてしまいそうだけど、どうする?
・・。
・。
さよなら 俺の赤ずきんちゃん。
俺はパンフレットをゴミ箱に捨てた。
俺もムキムキの仲間入りがしたい!!
トレーニングしている人たちが羨ましい!
でも 今の俺は 完全に出遅れてしまった。
気づいたら世界がある日突然、異世界になっていたんだ。
まだ 間に合うのだろうか??
俺は 悩みながら家に帰ろうと歩いた。
でも 歩いている途中で見慣れないお婆さんがうずくまっている。
救急車を呼んだほうがいいだろうか?
まずは 話しかけてみよう。
でも お婆さん!と声をかけても返事がない。
ただの屍になる前に 救急車を呼ばなくてはいけないと思って電話を取り出すと。
「クックク・・失恋の匂いがする。貴重な経験をなさいましたな。」
突然、通った声で話だした。
突然の声にも驚いたけど、おかしなことを言われたことにも驚いた。
でたらめな事を言っているだけかもしれない、
でも 気分的には失恋していた。それは 当たっている。
話を聞いているうちに お婆さんもどこも悪くないということも分かったし
お婆さんの話が旨いせいなのかわからないけど 俺の話を聞いてくれるというので
彼女の事や悩みごとまですべて話してしまった。
でも おかげ様で気持ちが晴れた。
このAIや3Dが発達した世界に 人と人のぬくもりが繋がったことに感謝した。
お礼を言ってから帰ろうとすると
「お待ちなされ、最後に質問をさせてください。」
お婆さんは 俺に聞きたいことがあると言い出した。
ああ そうだった。こんなところでうずくまっていたんだから 道に迷っていたのかもしれない。
もし 近くだったら話を聞いてくれたお礼に送ってあげることにしようと思った。
でも 質問してきた内容はちょっと違っていたし「はい・いいえ」で答えてほしいと言われた。
「あなたは 時々、変わらなければいけないと、心のどこかで思うことはありませんか?」
この問いに 「はい」 と答えた。
今のままじゃいけない事は 本当は気づいているんだ。
でも どうしたらいいのかわからない。
「では、あの月が満ちた三日後の日。繁華街へ洋服を買いに行きなされ!」
おばあさんは 月を指さしてそういった。
俺は 月を見るために後ろを振り返った。
月はもう満月ぐらいの大きさになっていたが いつが満月なのかはわからない。
お婆さんのほうへ 顔を戻すと、そこにはおばあさんの姿はなかった。
満月から3日後のある日 洋服よ買おうと思って繁華街にきた。
街は人で賑わっているけど洋服は あまり並んではいない。
その代わりにタッチパネルがある。
それで好きな洋服を選んでから鏡の前に立つと、
すると 洋服を着た姿が目の前に映し出される仕掛けになっている。
「なんだ、このボタン?」
パネルにマッチョと書かれたボタンがあったので押してみた。
「ぶっはは!」
マッチョになった俺の姿を見て 思わず吹き出して笑ってしまった。
しかも 3Dだから 当然俺の動きに合わせてマッチョも動くのだ。
こりゃー 傑作だ。
スマホにパシャリと写真を一枚撮った。
余談だけど服も買った。
明日くらいには家に宅配で送られてくるだろう。
通りを歩いていると繁華街にも、やっぱりトレーニングジムがあるようだ。
窓から見える光景は スクワットをするお姉さんだった。
男の俺が言うと気持ち悪いと思われるかもしれないけど「奇麗なお尻だ!」
ピッチリとしたスパッツを履いてポニーテルの長い髪を揺らしている
お姉さんだけど、お付き合いできたら きっと 楽しい生活が待ってそうだよね。
じゃぁ やることは一つ。ジムに入会しよう。
でも スーパーの横にあるような目立つジムはイヤなんだ。
人もいなくて空いていて、いつでもトレーニングができるような、そんなジムを探そうと思う。
通りを歩いていると はしゃぐ女性の声が聞こえてくる。
「うはぁ すごい! たくましい腕ですねぇ、触ってもいい?↑↑」
「そんなことない。まだ まだ 太くならなきゃ」
あああ、 前に赤ずきんちゃんと一緒にいた狼男がいる。
しかも 赤ずきんちゃんじゃない女性と仲がよさそうですね~。
羨ましいわ。
パシャリ!!
スマートフォンも手元にあったので写真を撮っておいた。
この写真は 自分がトレーニングにくじけてしまったら
その時は狼男の写真を印刷して、部屋に張らなければいけないという自分への罰ゲームにした。
ん? 狼男が女性に何か言い始めたな?
「おい 面白いことをしてやるよ。そのまま まっすぐに立っていろ!」
狼男は 女性をまっすぐに立たせると頭を大きな手で握った。
そして ヒジを曲げることなく、そのまま頭ごと女性を引き上げてしまった。
どうだ、すごいだろう!とか言っていだけど 筋力がすごい以外に何もすごくない。
持ち上げられている女性がどう思っているかはわからないけど。
その女性はそれでいいのかもしれないけど。
でも 俺は、 こいつにだけは負けたくない!!
「ビシャ!!」
「うわぁ! 誰だ 水風船を投げてきた奴!!」
狼男の顔面に水風船が飛んできて水が直撃した。
投げたのは俺じゃない。
でも 俺は狼男を見ていたので 水風船にも気づくことが出来た。
急いで 放物線をたどると・・・いた!!
なんと 投げたのはローブを着たお婆さんだ!
そして お婆さんは 路地へ逃げ込んでしまった。
俺も 後を追いかけたけどお婆さんは 足が速い。
建物の壁に挟まれて クネクネとする道が歩幅の広い俺の走りの邪魔をする。
ゴミ箱も邪魔くさい。
けど 倒すわけにも行かないから 素早くすり抜けていく
すこし 引き離されてしまったか?
俺に気付いて逃げているのだろうか?
話が聞きたい! 俺は走り続けた。
そして 大きな路地に出た瞬間!!広がる景色と共に現れたのは・・
「あら あなたじゃない?もしかして 来てくれたの??嬉しいわ!
さあ こっちへ入って」
それは 赤ずきんちゃんだった。
ここには コスプレをした人たちがお店の前で岩を持ち上げたり、
ロッドを回して3D映像の炎を出して踊って見せたり、
剣劇を披露したりしている。
でも 大道芸をやっているわけじゃなくて ここもトレーニングジムだ。
今 流行りの変わり種のジムなんだ。
ジムも一昔前と違ってお客さんが増えなった。
飽和状態というものらしい。
そこでトレーニングジム業界は企業努力で色々な個性を出し、
そのおかげで、いろいろなジムができた。
車やタイヤを押してトレーニングをするジムや
銃を持ってトレーニングをする軍隊ジム、
帰りにアイスクリームが食べ放題になるジムなんかもある。
そしてファンタジー冒険をしながらトレーニングができるというのがこのファンタジージムだ。
重たい剣を振り回してゴブリンと戦ったり
3Dビジョンを利用してロッドで炎を操りながらダンスをしたりと
ゲームに近い感覚を意識したトレーニングが出来るのが売りなようだ。
よく知らないけど大会まであるらしいよ。
アーミー軍隊ジムの大会を動画で見たことがあるけど
サバゲー+筋肉スポーツ番組みたいで面白かったな
「ライトって名前なのね。私の名前は カリスよ。よろしく!」
俺は 無事に トレーニングジムに入会することが出来ました。
お婆さんありがとう。俺、筋トレ頑張ります!
・・・・半年後・・・・
「ふぅー 今日のトレーニングはこのくらいにしておくか。
なあ カリス! この後 ご飯食べに行かないか?」
「ええ? それって デート?? ん・・でも・・」
「行きたくなかった?」
「違うの 違うの! 恥ずかしかったの。。はい デートしてください・・(*ノωノ)」
・・・・・・・・・・・・
※ あなたに読んでいただいて・・私は感激しております。
素敵なあなたがい一日にを過ごせますように 祈っています。。。。m(__)m
ジムに入会したい男 ライト。 もるっさん @morusan
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