第3話:完全防御
「お待ちください、キャメロン様、全てお望みの値で買い取らさせていただきます。
御領内の商人に負けない高値を付けさせていただきます。
王国一の宝石商と呼ばれる私です、決して嘘は申しません」
オスカーは真剣な顔をしていたが、眼の奥に嘘が入っている気がした。
もし俺が宝石を最安値で買い取ろうと思うならどうするだろうか。
日頃利を喰わせているラゼル公爵家の家臣から情報を集める。
日頃付き合いのあるラゼル公爵領内の商人から情報を集める。
これだけの数と品質の宝石を最安値で手に入れるためなら、少々の投資、いや賄賂は惜しまないだろうな。
「いや、先ほどの私を馬鹿にした眼つきは忘れられないな。
私もラゼル公爵家の後継者だから、好き嫌いで付き合いをやめるような事はないが、損をしてまで優遇する事は絶対にないぞ、オスカー。
オスカーのためならラゼル公爵家に損をさせても平気な家臣がいるようだが、調べ上げて追放しておく。
談合だけは止めろよ、オスカー。
悪徳商人でも人殺しはしたくはないのだよ」
私の警告を聞いたオスカーはブルブルと震えだした。
私の背後に立っている護衛騎士が本気の殺気を放っているからだ。
オスカーに賄賂をもらってラゼル公爵家に損をさせている家臣がいるという、私の話を聞いたから、抑えがたい怒りを感じているようだ。
「兄上お呼びでございますか?」
部屋の外からリアナが声をかけてきた。
公爵令嬢として礼儀作法をまもり、勢いに任せてドアを開けたりはしない。
このような態度がゲームでは上から目線貴族と叩かれていた。
だが実際にゲームの世界に入ったら、上級貴族としては当然の礼儀なのだ。
ヒロインの方があまりにも非常識な行いを繰り返したので、リアナには王太子婚約者という立場上、貴族を代表して苦言を呈さなければいけなくなった、というのが公爵令息としての常識を学んだ俺の考えだ。
「護衛はついているかい、リアナ」
「はい、戦闘侍女と二人と護衛騎士二人が護ってくれています」
俺はホッと安心した。
俺の注意を護って常に護衛を側に置くようにしている。
「部屋の中には私と護衛騎士以外に宝石商のオスカーがいる。
先に入る護衛騎士は、オスカーにわずかでも不信を感じたら斬れ」
俺の言葉を聞いたオスカーは一瞬で縮み上がった。
「はっ、承りました」
護衛騎士が最初に入ってきて、オスカーがリアナに危害を加えられないように、剣に手をかけ盾となった。
続いて戦闘侍女が入ってきて、リアナ、戦闘侍女、護衛騎士と続く。
「よくきたね、リアナ、たくさんの宝石が手に入ったから、リアナの気に入ったものがあればプレゼントしようと思ったのだよ。
テーブルの上にある宝石で気に入ったものがあれば、好きなだけとりなさい」
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