第2話:資金作り

 俺は家とは関係なく独自の組織を作り出すことにした。

 ラゼル公爵家はとても豊かだが、家臣の子弟全員を召し抱えられるわけではない。

 歴史のあるラゼル公爵家だからこそ、家臣を新たに召し抱える余裕は少ない。

 次男以下はよくて冒険者や傭兵、多くは士分扱いの神官や武器職人になる。

 それもできない者は、息子のいない豪農に婿入りできれば運のいい方だ。

 だから彼らを直属の家臣とすべく軍資金を確保することにして、ある男を呼び出してテーブルの前に立たせていた。


「オスカー今日は呼び出してすまなかったな」


「とんでもございません、キャメロン様の呼び出しでしたら、大陸の果てでも駆けつけさせていただきます」


 王国一の宝石商、マルケス商会のオスカーが調子のいい事を口にする。

 どうしてもオスカーでなければいけない訳ではないが、貴重で高価な宝石を大量に売る場合は、オスカーが一番高く買ってくれる。

 俺独自の組織を作ろうと思えば、公爵家に頼らない独自の資金源が必要だ。

 魔獣を狩る事もできるが、それでは俺の強さを世間に広めてしまう事になる。

 どうしても必要ならば断じて行うが、隠れて資金を稼げるのならそれが一番だ。


「これを売りたいのだが、いくらで買い取ってくれる」


 俺は自分の魔力を駆使して創り出した石英を三十人掛けのテーブルに並べた。

 無色透明な水晶。

 色付きの紫水晶、黄水晶、紅水晶、煙水晶、黒水晶、レモン水晶、緑水晶、青水晶、赤水晶、乳白水晶。

 鮮やかな緑色で砂金のにキラキラした輝きを発する砂金石。

 遊色効果のある無色、乳白色、褐色、黄色、緑色、青色のオパール。

 非晶質天然ガラスの黒曜石。

 玉髄、紅玉髄、緑玉髄、瑪瑙、碧玉など一気に大量に創り出した宝石だ。


「最初に断っておくが、全て一度領内の商人に入札させたものだ。

 この国一番の宝石商と称されるマルケス商会のオスカーが、地方商人の値付けよりも低い価値を付けるとは思わないが、一つでも低く値付けした宝石があれば、オスカーの競争相手に全部売る。

 これだけの宝石が定期的に手に入るとしたら、その者が王国一の宝石商になるのではないかな、オスカー」


 俺の言葉が嘘やハッタリではないと理解したのだろう。

 先程までは俺を舐めたような内心が表情に出ていたオスカーが、急に真剣な表情になって一つ一つの宝石を真剣に見つめていた。

 だが正直この宝石の量は、一人で鑑定するには多過ぎると俺も思う。


「いや、やはりここは競売にかけた方がいいな。

 これだけの量をマルケス商会だけで扱うのはとても無理な話だったな。

 ここは国中の宝石商や好事家を集めて競売をしよう」

 

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