「すいません。卒業式を抜けに来ました」


「卒業。おめでとう。右折さん」


「え。おい。うそだろ」


「卒業しないとね。私を見つけちゃ、だめだったの。私。保健室勤務だから」


「保健室の先生なんて。おい。俺はてっきり生徒かと思って、血眼で探したってのに」


「残念でした。私の勝ち」


「くそっ」


「ここからね。見えてたの。あなたの、車が。投稿する姿が」


「保健室の先生かあ。盲点だったなあ」


「えへへ」


「そうだ。この、S・N・Sってのは、なんなんだ。SNSのことなのか?」


「S・N・S」


「そうか顔文字かあ」


「似てるでしょ。唯一の、ヒントだったの」


「Sが髪型って、うわあ。なんかそう言われるともうこれが顔にしか見えないなあ」


「卒業、おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「もう生徒じゃないね?」


「ええ、まあ」


「じゃ、あらためまして」


「はい」


「好きです」


「俺もです」


「やったっ」


「あっ抱きつくのは無しでおねがいします。今日一杯は学生の身分なので」


「うぐっ」


「今日の零時から。あらためて」


「はい。あらためて」

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