赤い幸せ屋
青井かいか
無題
〝魔法〟を夢見る少年がいた。
少年はいじめられていた。
魔術の才が無く、頭が悪く、環境と運に恵まれなかった。
周囲は少年を蔑む。
魔術の才がないくせに、思い上がるその少年を。
魔術の才がないくせに、あり得もしない魔法を夢見る愚かな少年を。
魔術の才がないくせに、努力をやめない鼻に付く少年を。
それでも少年は魔法を夢見た。
その昔、御伽噺で読んだ魔法使いの話。
彼が魔法を唱えると、世界が変わった。
彼が魔法を唱えると、邪魔者は消えた。
彼が魔法を唱えると、全ては思い通りだ。
その世界で、魔法は絶対であり、彼は絶対だった。
魔法さえあればいい。
魔法さえあれば、少年は誰にもいじめられない。
魔法さえあれば、誰も少年には逆らえない。
魔法さえあれば、全ては少年の思い通りだ。
少年は魔法を夢見た。
やがて少年じゃなくなっても、いじめられなくなっても、魔術の才があると認められても、その夢を見続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます