第13話 触れると壊れてしまうもの

 ――わたしの大切な幼馴染、玲香ちゃん。


 その子は、わたしが触れてしまうとたちまち壊れてしまう。さながらガラスのように。


 玲香「いいから、わたしから離れて頂戴」


 小刻みに震えているので、きっと寒いんだろうなと思い、コートをそっと差し出す。


 玲香「それどころ、じゃないのよ……いいから、ほんとに……あぁっ」


 静かな水の音。わたしには、はっきり聞こえた。

 雪の上に落ちては、ゆっくりと溶かしていく。


 この歳にもなって――そんなことを考えてしまう。

 でも、やってしまったことは仕方がない。次から気をつけていけばいいわけなのだから。


 ♦


 未咲「えっとね、ここまで書いたんだ〜」

 玲香「あのねぇ、あんた、本当いい加減にして……いますぐそれごみ箱に捨てなさい! わたしもうそこまでやらかさないからね?!」

 未咲「またまたご冗談を……この前、うつむきながら顔を赤くしてもじもじしてた玲香ちゃんを見逃さなかったんだから」

 玲香「なっ……あれは、しょうがなかったのよ! 急にきたから、仕方なく立ち止まって……」

 未咲「で、そのままやっちゃったんだよね?」

 玲香「やってないわよ! まったく、ヘンな方向に想像力ふくらませないでよね……」


 ついスケッチしたくなるほどのいい表情をしていたので、こっそり写真を撮ってみた。


 玲香「……バレてるわよ」

 未咲「あっ、バレてた……」


 そこに、三人がやってきた。


 春泉「ハウディー! みかん持ってきた!」

 うみ「あたしは止めたぞ? でも、春泉のやつがどうしてもっていうもんだから、こっちが根負けして許しちまったんだよな……」

 ロコ「あとはおこたがあればよかったよね〜」


 このなんてことない会話の中に、少しあったかさを感じた五人だった。

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