第54話 アシュラフさんのお礼

『穂南達も、もう一般探索者に混ざっても十分強い方になって来たな』

「お兄ちゃんにそんな事言われても、一緒に狩りするのがマイケルさんとか咲さんとかしか見て無いから全然実感わかないよ」


『そりゃ世界のトップレベルのシーカーと比べてもしょうがないさ。今の強さならスタンピードで溢れた魔物を一対一で倒すには十分だからな』

「でも普段街を歩く時に武器なんて持って歩けないから全然不安だよ。お兄ちゃんやメアリーさんみたいに魔法とか使えたり、お兄ちゃんの異次元ボックスとか使えるんならいいけど……」


『あーマジックバッグみたいなのが出来ないか今色々実験してるんだけど、中々鑑定スマホの時みたいに、うまく成功しないんだよな。明確に使う素材のイメージが出来たりしたら、出来そうなんだけどね』

「組み合わせかー、私もなんか組み合わせ出来そうなもの考えてみるから、思いついたらお兄ちゃん実験してみてよ」


『おう解ったよ。斬新な発想を楽しみにしてるな』

「まっかせなさーい」


 そんな会話を穂南とゲストハウスでしていると、ヘリコプターの音が聞こえて来た。

 何事かと思って外に出てみるとカール大統領が、アシュラフさんと朝、写真で見た女の子「アーリヤ」ちゃんとSPや軍の人を伴って降りて来た。

 大統領ってそんなフットワーク軽いんだっけ?


「ちょっと時間が空いたからね、アーリヤ嬢がどうしてもTBにお礼を言いたいんだってさ」

『それだけの為にわざわざ来たんですか? それに瀕死の状態だったのに、もう動いても大丈夫なんですか?』


「おーTB再び会えたことを神に感謝するよ。お礼の品も折角だから一緒に持って来た。ぜひアーリヤにTBを抱っこさせてあげてくれ」

『抱っこは構いませんが……』


 そう返事をチャットで打ち込むと「本当に子猫ちゃんがスマホいじれるんだー凄いー。TB私に神の祝福を授けてくれてありがとう」そう言いながら近づいてきて、両手で丁寧に抱きかかえると額にチューをしてくれた。


 アーリヤ超かわいいぜ!

 俺もお礼にほっぺたを舐めて上げたが、穂南の視線が少し痛かった。


 そして麗奈に封筒のような物をアシュラフさんが手渡すと、大統領たちは再びヘリコプターに乗り込み、慌ただしく帰って行った。


『麗奈、封筒の中身はなんだったの?』

「ちょっと待ってね」


 そう言って開けた封筒の中にはAEの王族の紋章の入った立派な金属製のクレジットカードのような物が入っていて日本語で文章が添えてあった。


『このカードを持って行けば、世界中どこへ行ってもAEの王族と同じ扱いを受ける事が出来る。制限額も無い。戦車やジェット機でも買えるから遠慮なく使って下さい』アシュラフ


「社長……なんか凄いの貰っちゃったみたいですよ。戦車とかジェット機でもカード出したら買えるって……」

『麗奈……正確にはアシュラフさんが払ってくれるんだと思うよ』


「お兄ちゃん凄いねー、そのカードが有ったらニート生活余裕だね」

『そうだな……まぁ買いにくい物を買う時とかは良いかもね』


「薄い本とか?」

『それは逆にカード決済が難しいから……信用が必要な物を欲しいときとかだよ』


「そうなんだ、でも本当に凄いねお兄ちゃん」

『このままUSに居るとなんだか完全に取り込まれちゃいそうで不安になるよ』


「そうでしょ! 出来るだけ早くに日本へ戻る準備をしましょう!」


 聖夜……本当に帰りたいんだな。


『次のスタンピードの兆候が見えれば戻るよ。それまでにマイケル達の装備の相談とかに乗る約束をしたし』

「あの……装備は私達も相談にのって貰えませんか? 既に六層で穂南さんや洋子さんに与ダメージで負けているのは、職務上格好がつかないと言うか普通に辛いので」


『だって、公安そんなに予算出してくれないでしょ? そこは、なぁなぁにしちゃうと、政府が調子に乗って武器作れとか言ってきそうだからね』

「それは……否定できないだけに何とも言えないです」


『一応マイケル達は、ジェフリーが『出来上がった武器に対して正当な代価を払うのでよろしく!』って言ってきてるから受けてるしね。USでの査定がダンジョン銅とミスリル銀で金額が確定したから、現時点でダンジョン銅がグラム当たり五ドル、ミスリル銀がグラム当たり三百ドルだって、この間サンプルで渡したバー一枚がダンジョン銅五百ドル、ミスリル銀三万ドルだね。それを武器に仕上げたら、大体五百gは使うから、加工費その他で安く見積もっても五千万円くらいになるかもね』

「やはりその程度の価値にはなりますよね……」


「ええ? お兄ちゃん? 私とお母さんの使ってる子のクロスボウとか槍っていったいいくらなの?」

『それは結構使ってるからなクロスボウで一,三キログラムのミスリルに矢も込みだと売値付けたら一億円くらいかな?』


「まじ? お兄ちゃん女子高生に一億円の武器っておかしくない?」

『あー安全はお金で買えないから気にするな』


「無理!」

『槍でも一キログラムのミスリルが使ってあるから、値段をつければ八千万程かな』


「凄いんだね……」

『まぁ、お袋や穂南達のは総ミスリル製だけど、ダンジョン銅やダンジョン鋼を要所要所で組み合わせて使う形にすればもう少し安くは出来るな』


「なる程ねぇ、でもお兄ちゃんのスキルって本当にチートだよね、一体どうやって手に入れたの?」

『それは知らない方が良いと思うけど、現在までに判明している情報から推測すると人間の身体では不可能だと言う事は解ってるんだ』


「そうなんだぁ猫限定?」

『それも違うけど……』


 ◇◆◇◆ 


 それからも毎日をワシントンDCダンジョンで狩をして過ごしながら、マイケル達のチームのメンバー十二名の武器をミスリルで作り上げ、他のチームのキャプテンと副官の、鑑定スマホを制作したころにはワシントンDCや代々木の一次ダンジョンでは八層が登場し、二次ダンジョンでは七層が登場した。

 そして三次ダンジョンでも四層までが現れていた。


 二次ダンジョンと比べても随分早いペースで四層が登場しており、このペースでは五層の中ボスが現れるまで一週間を切っていると予想される。

 博多やNYでも緊張が高まって来ている。


 ここでジェフリーからお願いをされた。


「TB、話を聞いてくれないか?」

『どうしました? ジェフリーさん』


「君達の日本の事務所で一緒になった国の諜報部の人間たちと、商売柄連絡網を作っていてね。二台ずつでいいからあの時の参加国家に鑑定スマホを用意して欲しいんだ、勿論適正価格を各国に準備させるし、この場所に付与させる対象者を呼び出して、やって貰う事になる。各国のトップ探索者たちに会えるチャンスだよ」

『なる程重要な話ですね。了解しました後三日もすれば俺達は日本へ帰りたいと思ってますので、二日以内で集まれるなら作りましょう』


「ありがとう俺の顔も立ったよ。二十四時間以内に全員揃う」

『解りました』


 世界中のトップシーカーが集まるとかちょっと楽しみだな。

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