第9話 義妹離れ

しおりが、大学の3年になると、何時も夏休みには、帰って来ていた誠司も顔を見せなくなり、健司も時よりぶらっと帰っては来たが直ぐに都内の下宿に戻っていった。顔を合わせても、軽い挨拶をする程度で、しおりにちょっかいを出すことはなく、

「あいつら、1人だと何も出来ないのか。」と内心思っているしおりだったが、健司の情報については、梢からそれとなく聞かされていた。二人の関係は、都内で行われた大学の合同コンパで偶然に知り合い、昔の縁が復活して、其れなりの関係が続いている様であった。

「私を抱く時は、しおりちゃんの事を考えないで。」と梢が言うと、

「うーんん・・・」と気の無い返事を返しながら、梢の胸に顔を埋める健司だった。健司が梢を抱く切っ掛けは、コンパで偶然再会した後に、塾講師のアルバイトをしている健司が帰りすがらに、梢と出会った事からだった、コンパでの出会い依頼数回デートを繰り返していたが、例によって煮え切らない健司に一寸腹を立てて梢が、アルバイト帰りの帰宅途中の最寄り駅のスーパーで偶然遭遇した健司を、夕食を御馳走するからとの名目で、梢のアパートに引き入れたのが始まりで、その夜、酒の勢いもあり、梢は健司を強引に押し倒して情事にまで持って行ってしまっていた。

それ依頼、健司は週末には、梢のアパートで夕食を食べては、夜を過ごしていた。そんな関係を持ってしまった健司は、鎌倉に帰っても、まともにしおりの顔が見られなくなり、だんだん足も遠のいていった。

「あんた達は、どれだけしおりちゃんを抱いたのよ?」と梢が聞くと

「抱いた?セックスをしたかって事か?・・・・でもしおりは処女だよ。」と言ったので、梢は慌てて、

「健司の初めての女って、私なの!私は、しおりちゃんとは、てっきりもうそう言う仲かと思っていたわ。」

「だって、妹だぜ、血は繋がってなくても。妹を孕ませるなんて・・・第一、誠司が黙ってないだろうな。」

「じゃー、しおりちゃんとはどんな関係なのよ!」との梢の問いに、健司は昔からの経緯を話してから、

「しおりも、俺たちの事が好きなんだと思うよ。でも、何方を選ぶのか、何方も選ばないのか、決められないまま悩んでいるんじゃないのかな。」と健司の告白とも取れる内容に

「なんか、頭にきた。なんかムカつく、煮え切らない相手は、私だけじゃなくてしおりちゃんにもそうなのね。こうなったら、貴方の子供を孕むから、そうすれば、しおりちゃんともケリが付けられるでしょう。」との梢の過激な発言に引き気味の健司を、梢は強引に果てさせた。

しおりは顔を見せなくなった、誠司に、こまめにハガキやら手紙を送っていたが、返事は一つとして来なかった。誠司は、大学が京都になった関係で、東堂の旧家との繋がりを持つようになり、四条通りにある、旧家に良く出入りしていた。旧家は誠司達の父の兄に当たる叔父が継いでいたが、未だに、雅楽や和楽器を扱い数人の職人が、それらの修理などもこなしていた。しかし、娘ばかりで跡取りがいなく、行く行くは、娘の嫁ぎ先から、娘が産んだ男子を養子に向かえようかとの腹積もりもしていた。そんな中、誠司が京都で暮らす事となって、俄かに旧家の跡継ぎ期待が高まっていた。そんな状況もあり、町屋の旦那衆に顔を知ってもらうため、何かと寄り合いに招くようにしていた。その寄り合いとも商工会議所のパーティーともつかぬ席に、烏丸麗佳が居た。

烏丸家は、元々京都の呉服問屋であったが、先代の頃からアパレル系の事業を始めてから勢いにのり、町屋の旦那衆の中でも顔利きてき存在となり、その代行として、麗佳が出席していた。

つかつかと近寄って来た、麗佳が

「あなたが、鎌倉の東堂・・・しおりちゃんの変態兄さん?」といきなり誠司に聞いてきた。誠司は内心ドキッとしながら

「どなた様でいらっしゃいますか?」と慇懃に尋ねると、名札を見せながら

「あなた達の所業は、しおりちゃんから全て聞いているから、私は、しおりちゃんの大学で先輩にも当たる者よ。」そう言うと、誠司を会場から連れ出し、談話ブースに押し込んだ。訳の分からない誠司は、既に自分たちのしおりに対する悪行がこんな所まで知れわたっているのかとビクビクしながら、麗佳と対面した。一方、会場の皆は、麗佳が男を連れ出した事に驚いた様子で、その相手が誰なのかも分からずにいた。麗佳は、東堂旧家と烏丸家の経緯を簡単に話した後、しおりとの関係を話始めた。話の内容から

「あいつ、レズでも大丈夫なのか・・・」内心、「俺達のせいでとんでもなく歪んだ性癖を持たせてしまった様だなと。」と後悔していた。

「いい、聞いてるの!どちらが独占するとかしないとか問題じゃないのよ。しおりちゃんの気持ちを汲み取ってあげなさい。」と麗佳が説教がましく捲し立てていると、誠司が

「え、だから二人で抱けばいいんだろう。」と頓珍漢な回答をしたので、麗佳のピンタンが誠司の左頬にヒットした。

「だから、そう言う問題じゃ無いて言ってるでしょう。これは、徹底的にお仕置きをしなければダメみたいね。」見かねていた、共人が近寄ってきたので、

「東堂の叔父様にこの変態を連れて行くからと伝えといて!」と言い残して、誠司を控えの車に押し込んでから、鴨川の近くにある、烏丸の邸宅に連れ込んだ。誠司は、麗佳の趣味部屋と言われている何やら怖い道具が沢山置かれている部屋の椅子に縛られていた。

「おれを、拉致ってどうするんだよ。金なんか無いぞ!」混乱する頭の中で、誠司は必死に状況を整理しようとしていた。「烏丸麗佳って何者だ。何でしおりとの関係を知っているんだ。それに何でおれが拉致られなきゃいけないんだ。」

「本当は、裸にして鞭打ちにしたい位だけど。」と言って、誠司の足元に一発、鞭を打った。ビッシと言う音に驚いて、誠司が悲鳴を上げると

「まず、洗いざらい吐いてもらおうか。しおりちゃんにどんな事していたか?」.

誠司は、麗佳に聞かれるままに、過去のしおりに対する悪行を告白した。そんな尋問が1時間ほど続いた後に、やっと解放され、執事の案内で客間に通されてから

「本日はお嬢様の、ご趣味にお付き合いいただきありがとうございました。」と丁重な挨拶と、事後承諾的な合意を強要され、サインまでさせられてから、風呂に案内された。

「ご所望の行為があれば、何なりとお申し付けください。」と言って執事が去ると、湯あみ着姿の美女が数名遣ってきて、誠司の体を隅々まで丹念に洗ってくれた。

「興奮が収まらない様であれば、私どもがお手伝い致しますが?」美女の一人が、誠司の股間を洗いながら聞いてきた。

「お手伝いて、何ですか?」と誠司が聞くと

「この場でも、お望みならベットの中でも、お申し付け頂ければ、その様にご対応させて頂きます。」

「ここだと、一寸恥ずかしいな。」と誠司が例によって、うっかり言ってしまったので

「それでは、その様に計らせて頂きます。」と美女の一人が言った後、バスローブ姿の誠司を客室のベットまで案内した。ベットに腰かけてボートしている誠司の元に、執事が再び遣ってきて、お望みのタイプは、と食事の注文でも取るかのようにメニューを見せながら、聞いてきて

「この他にも、当家と懇意にさせて頂いております、芸子や舞子のコースも御座いますが、こちらは、限定行為のオプションのため、やや満足度が落ちるかと思われます。」との言葉で、誠司は

「あのー、特定の置屋さんともご知り合いですか」

「どの様な・・・」

「葵屋さんなんですが。」

「はい、老舗で御座いますので、伝手は御座いますが。」

「昔の事情が分かる様な人がいれば、20年位前の事なんですが。」と誠司が執事に頼むと

「畏まりました。早速当たってみましょう。他には、何か?」

「ああ僕、突然連れてこられて、状況が分からないんですが、ああ、僕、東堂誠司っていいます。最近、京都の大学に入学してから、叔父の四条の東堂にお世話になっているもです。烏丸家と東堂の事情が分かるような資料があれば、見せてもらいたいのですが。」

「ほー、そちらの東堂様でいらっしゃいましたか。先々代より烏丸家とは懇意にさせて頂いております。そうですね、町屋衆の歴史が乗っております資料でもご用意致します。」と言って執事が出て行った後に、ネグリジェ姿の風呂にいた美女とは別の美女二人が入ってきた。

「東堂様とあれば、是非にもおん種を頂きたく。」と言うと、おもむろに誠司のバスローブを脱がしてから行為に突入した。結局、誠司は美女二人に吸い付くされた状況で果てた。

産卵を終えたシャケの様な状態で、烏丸家のリムジンで四条の東堂家に送られてきた誠司を、叔父が迎えてくれた。叔父は嬉しそうに

「これで、お前も立派な町屋衆だ。」と言って喜んでくれたが、誠司にはその意味がわからずじまいで、全容が理解できたのは、烏丸の執事から借りた膨大な資料を読み込んでからの事だった。

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