第8話 夫々の選択と麗佳との出会い

高校二年の夏以降、健司は梢と、誠司は幸子と数回のデートを重ねてきたが、煮え切らない二人に対して、梢も幸子も積極的にアプローチをするものの、極端な進展は無いまま、時間だけが過ぎて行き、高校三年に成ってしまっていた。北高校、西高校ともに優秀な進学校であった為、夫々は、色恋沙汰よりも受験を優先していた。そして、年も深まり、自分たちの進路を決めなければならなく成っていた時期に、誠司がしおりの部屋に遣ってきていた。名目は、分からない問題の教えを乞うとの事だったが、実際は、しおりが目当てであった。

「鬱陶しいな!何、溜まっちゃってるの。自分で抜けば良いでしょうが?」

「だって、しおりの方が気持ちいいから・・・・」と誠司の憐れむ様に嘆願する態度を見かねて、しおりは誠司のパンツの中に手を入れた。

「パンツの中に出しちゃっていいの?」そう言われて、誠司は慌ててティッシュを幾重にも重ねてパンツの中に押し込んだ。それと同時に、しおりの胸に顔を埋め様としたが

「やめて!そんな事すると手伝ってあげないから。私だって感じちゃうから、後の勉強に差しさわりが有るのよ!」しおりの強い言葉に押されて、引いた誠司を押し倒すと

「ああ、面倒ね!」と言いながら、誠司のパンツを脱がし、誠司のものをしごき始めていた。果てる瞬間、ティッシュで包んでしまってから

「大して溜まってないじゃないの!あなた自分で抜いてるでしょ。それと私の部屋に汚物を撒き散らかさないで頂戴!」と言って机に向き直ったしおりは、すごすごと部屋を出ていく誠司を横目で見ながら、クスリと笑っていた。

そんな、ストレスを溜めながらも、受験に臨み、健司は都内のT大学へ、誠司は京都のK大学へ、そして、しおりは地元のY大学へと進んだ。一方、梢は都内のO女子大、幸子は地元のお嬢様大へ進み、夫々の選択した道を歩み始めていた。

誠司は、京都で大学の学生寮に入った事で、半年に一度程度しか鎌倉の東堂家には、戻って来ない様になり、最初、鎌倉から通学していた健司も、奨学金の申請が通った事で、下宿を探し引っ越していった。そんな状況になり、しおりは初めて兄達から解放された日々を過ごす事が出来ていた。

そんな中、しおりが大学の二年の時だった。キャンパス内でハイブランドな服装をした、美しい女性に声をかけられた。幼い頃からの、兄たちの変態行為の影響もあり、しおりは、服装に対するオシャレや化粧などのおおよそ若い女性が気にする様な事に対して、全く関心が無かった。それでも、その女性がそう言う関連のトップクラスの雰囲気を持っているだろう事が見て取れていた。

「私、この大学の4年で、烏丸麗佳って言うんだけど。」そう言って学生証を見せてきた美しい女子大生に

「ええ・・・何か・・・」普段、比較的地味な服装で過ごしているしおりのいでたちは、黒のニットにジーィンズの上着をはおり、コットンのパンツと言う姿であった。

「一寸、モデルになって欲しいのよ。あっそう、私、こう言う仕事もしているの。」そう言って名刺を渡され、そこには、有名なアパレル関連の会社名が書かれていた。麗佳は、改めてしおりを見て

「胸は、さらしを巻かなきゃだめかな・・・」と独り言の様に言うと

「お願い、一寸来て!」そう言って、待たせてあったお抱え運転手付きの高級車に連れ込んだ。

「別に、拉致しようって訳じゃ無いからね。」そんな言葉に、しおりは、男なら、少し自分の胸を近づけて、油断をした所を、急所にケリを入れれば、直ぐに逃げられる。これも変態兄達から身を守る方法として身に着けた特技でもあった。だが、相手が女であるとそうも行かないのだろうなと考えている内に、大きなビルの駐車場に付いていた。麗佳と共に、エレベーターで上階の広いオフィスに案内され、そこの応接ルームに通されると、そのオフィスで働いていると思われる、数名の人が麗佳の指示で、コーヒーとカタログ類を持ってきた。

「まー、暇つぶしにそのカタログでも見ていて。」そう言って、麗佳が中座すると、係の人らしき人物が、所謂、会社概要の様な事を説明し出してから数分後、再び麗佳が戻ってきて、スタジオの様な部屋に案内した。

「こんな感じかな。」と言って何枚かの、男装のコンテとか写真を示してから、

「こっちに来て、さらしを巻くから。」と言ってカーテンで仕切られるブースに連れ込むと、徐にしおりの服を脱がせ始めた。

「大丈夫よ、AVとか写真撮って脅そうとか、ましてや、レイプしようって訳じゃないから。」そんな事を言いながら裸にされた上半身をみて、麗佳が

「いい形してるわね。私もそれなりに手入れをしてるけど、何処かのエステか何か?」と聞いてきたので、うっかり

「原因は、たぶん兄達だと思います。変態の!」としおりが、恥ずかしそうに言うと

「兄?変態?・・・」麗佳の応答に、一寸面倒な事になっちゃうなと思いながらも、血の繋がらない、双子の兄達との経緯を話していた。

「けしからん奴らだな、その辺の話、後でゆっくりと聞きたいな。」と言ってから、さらしを巻いたしおりを抱き寄せると、恋人同士の様に深いキスをしてきた。しおりは一瞬戸惑ったが、不思議とその行為を受け入れる事ができた。

その後、メイク担当と衣装担当が来て、数パターンの衣装でしおりをモデルに写真を撮った。そんな作業を後ろから、指示している麗佳が、撮影の合間に遣って来て

「東堂しおり・・・東堂て、京都の東堂家を知らない?」と聞いて来たので、しおりの居る鎌倉の東堂家と京都の東堂家の経緯を説明した。

「そうか、京都の烏丸、私の実家だが、元は呉服問屋でね、先代か先々代位から東堂とは懇意にしているん間柄なんだが、しおりちゃんの変態兄は、鎌倉の方か。今度乗り込んでお仕置きをすべきだな。」と言いながら、髪の毛やら、襟もとを直していた。

撮影は夕方近くまで続いたので、

「今日は、突然すまなかったな、お礼と変態兄の話も聞きたいので、夕食を御馳走しよう。」と麗佳が誘ってきた。

「ええー、アルバイト料も頂いてますから・・・」と躊躇しているしおりに

「まあー遠慮するな、これも何かの縁だろうから。」と言って、ビル内の割烹店に行き、すき焼きを御馳走してくれた。麗佳はしおりが気に言った様子で、しおりのおいたちや現状に関心を持って聞き入っていた。そんな麗佳の優しさにふと気を許してしまったためか、進められていた酒の度を過ごしてしまっていた。

しおりがふと気がつくと、何処かの部屋のベットに寝かされていた。直に麗華が来て

「目が覚めたか、一寸酒を飲ませ過ぎたかな、もう終電も無いから、今夜は此処に泊まっていけ。ああーここは、ビル内にある私の部屋だ。それと、風呂は沸かしてあるから・・・下着は私のものを見繕って置いてあるから使ってくれ。」そう言ってから、バスルームに案内してくれた。しおりは浴室に入った途端

「ええー、何ここは?」思わずタオルで前を隠しながら、冷静に状況を確認した。目の前には都会の夜景が全面に広がり、湯舟もガラス張りで下から丸見えの様な状況に思えたが、

「さすがに、それは無いでしょう。」と思いながら湯舟に入った。床面は鏡ばりの様で、

「これもこれで何だか落ち着かないな。」そんな思いでお湯に浸かった。細かい泡のジェットとマッサージ機能が有る様なお湯の流れが、体をリラックスさせてくれていた。思わず、安楽の溜息をついて、お湯の流れに身を任せた。暫くしてから、

「悪いが、一緒に入らせてもらうぞ。」と麗佳の声がしてから、ビーナスの様な裸体がそこにあった。湯舟は、二人が入っても十分な広さで、

「ああ、初めてだから驚いただろう?」

「ええ、一瞬、裸のまま外に放り出されたかと思いました。当然外からは見えないんですよね?」

「それは、如何かな・・・今頃、何処かのビルの窓で双眼鏡を覗いている奴が居るかもしれないぞ。・・・冗談だがな、私には露出狂の趣味は無いからな。」そう言ってから、麗佳はしおりに優しくキスをしてきた。それは、何時も兄達に強引に迫られる、ガサツなキスと違いしおりは、何の抵抗もなく受け入れる事が出来た。麗佳の手が、乳房を優しくもみほぐす様に動いてから、太ももの辺りから股間に移動したときに

「ふーん、脱毛してるのか?」と麗佳が聞いてきたので

「ええーと、元々、はえていないんです。うちの家系みたいで。」

「そうか、後でゆっくり見せてもらおう。」そう言いながら、深いキスをした。まるで、姉妹の様に、お互いにシャンプーをし、お互いの体を洗い合ってから、ベットに横になり抱き合っていた。麗佳は姉の様に、しおりの顔を抱いてから、

「どうだ、私のもいい形をしているだろう。私の胸は女に揉み解されているけどな。」そう言いうと、今度はしおりの胸に、麗佳の顔を埋めてから、下半身を愛撫し始めた。

「綺麗だな・・・よく変態兄貴が我慢してるな。」

「うーん、結構危ない時もありますけど、そうゆうときは、あそこをギュート握りつぶしたり、蹴飛ばしたりしてやります。」

「ふーん、それはたまらないだろうな。」

「男の急所の扱いには慣れてますから。」麗佳が思わず吹き出すと

「今度、私も教えて貰おう。最も、男には興味はないけどな。」

そんな取り留めも無い話と、麗佳の愛撫を繰り返しながら、二人は眠りについていた。

 明け方、目覚めた二人は、朝を迎える都会の空を眺めていた。まだ本格的には動き出さない、交通網の起動音が遠くから聞こえてくるなか、麗佳が

「私は、分かっていると思うがレズだ。男には関心がない。と言うか、男に対して性的な魅力を感じない。そんな事もあって、大学では女性史、女の歴史みたいな物を研究しているんだ。まあ、家業の傍らでだが。だから、そんな視点から、しおりちゃんの悩みにアドバイスしたい。」とピロトークを始めた。しおりの生まれ育ち、兄達との異様な関係を聞いていたので話始めていた。

「羊飼いの嫁、と言う事例がある。」

「羊飼い?」

「そうだ、チベットやインドの山岳部、ブータンの山奥などに残っている風習だ。一言で言えば、一夫多妻の逆、一妻多夫と言った所だな。基本的には母系社会なのだが、山岳民族の羊飼いは、羊の牧草を求めて数百キロを移動する。だから、羊飼いの夫は、半年近く家に戻らない。高地は耕作する土地も少なく、その土地自体が険しい場所にある関係で、到底、女一人で管理できる物ではない。そこで、家の男手が必要になる。その代償と言ったら変なのかもしれないが、嫁ぐ娘、例えば、ある家の長男に嫁ぐとすると、暗黙の了解で、その家の全ての男との婚姻関係が成立するんだ。弟達、しかもその当時、年端がいかない弟でも、大人になれば、兄の嫁を抱くことになる。生まれた子供は、みな、兄の子供で通すそうだ。そうすることで、その家の財産や耕作地を分割しないですむため、家としての存続が保障されるのだ。農耕や家畜の世話は、いわば複数の夫達がやってくれるので妻は子育てにも専念でき、その家の財産管理なども妻の仕事のようだ。」と麗佳が、そこまで言うと、しおりは

「日本では無理でしょう?」

「そうだな、法律上は無理だ。だが、逆の立場で考えれば、浮気をしている男共が外で子供を作るのは違法だが、現実に成立している。確かに血の繋がった兄弟では結婚はできない。それは、入籍を認めないだけで、二人の思いを縛る法律は無くて、それは社会的理念や倫理と言った範疇の問題でしかない。実際に、世界の中には羊飼いの嫁の様な事があるのだから。しおりちゃんは、その兄達に抱かれるのが嫌なのか?、ましてや、行く行くはその兄達の子供産むとなったら。私は、男とそう言う事をした事がないからな。まあ、何れ嫌でも子供を産ま無ければ成らなくなるがな。政略結婚や人質に出された娘の心境かな。それから比べれば、しおりちゃんの場合は随分と良い方に思えるがな。」

「私は、それでもいいんです。二人に愛されて、二人の子供を産むのも。でも、今の状況では、何方かが私を独占しないと気が済まない。」としおりが寂しそうに言うと

「何か、その変態兄達を説得させる手立てを考えよう。」そう言ってから、麗佳は再びしおりにキスをしてきていた。

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