第31話 黒装束との戦闘
千司は夜の闇に紛れて迫りくる一撃に気付いていた。
理由は単純、眠っていなかったからである。
そもそも信用のおけない者を見張りに立たせて、眠るつもりなど毛頭なかった。
暗闇の中で振るわれた真っ黒なナイフを剣の腹で受け止めつつ、千司は思考を巡らせる。
(さて、こいつは何なのか……何はともあれ、捕まえないことには分からんなぁ)
即座に判断すると、千司は黒装束のナイフをはじきながら声を張り上げた。
「起きろ――襲撃だ!」
それと同時にセレンとロイアーの表情を確認。
セレンはどこか驚いた表情で黒装束を見つめていた。守るべき勇者である千司が襲われているにもかかわらず動く気配はない。否、状況が理解できなくて固まっていると言ったほうがいいか。
(……こりゃあ何か知ってるなぁ~?)
次いでロイアーに視線を映そうとした瞬間——横合いから巨大な盾が接近し、千司と相対していた黒装束を勢いよく突き飛ばした。
ゴッ、と鈍い音が響くのと同時、黒装束は壁に強く叩きつけられる。
「悪ぃ油断した! 大丈夫かナクラ!?」
「あぁ、助かっ――ッ」
感謝を口にする間もなく、壁に叩き付けられた黒装束がナイフを投擲してくる。それと同時に、別方向からも風切り音が聞こえて来て——横目で確認すると窓の外から同様の黒いナイフが飛んできていた。
「させるかッ!」
何か言うまでもなく即座に反応したロイアーは、正面から投擲されたナイフをはじいて、そのまま黒装束へと突進。盾と壁で押しつぶす。
対する千司は、窓の外から飛んで来たナイフを対処。
手にしていた剣で叩き落すと、外からの死角になるよう場所を移動して壁に張り付いた。最初の一撃からここまで僅か十秒ほど。
「……んぇ? な、なに?」
一連の騒動でようやく目が覚めたのか、エリィが寝ぼけ眼を擦りながら起き上がる。
「どうやら襲撃の様ですよ、エリィさん」
彼女の隣で寝ていたアイリーンは早い段階で目が覚めていたのか、周囲を警戒しつつ、エリィを物陰に連れていく。そんな彼女に千司は外へと視線を向けながら問うた。
「アイリーン、外に何人いるか分かるか?」
「十名ほどかと」
「わかった。……セレン、行けるか?」
紺色の髪の女騎士に言葉を掛ける。
しかし、彼女はまだ心ここにあらずと言った様子で、ロイアーによって押しつぶされた黒装束を見つめていた。その拳はぎゅっと握りしめられ、額には汗がにじんでいる。
「……おいセレン! 聞いているのか!?」
「……っ、ぁ、その……」
再三に渡り呼び掛けると、ようやく気が付いた様子のセレン。
彼女は千司を見つめると、悩むように眉間に皺を寄せ、何事かを伝えようとして——しかし上手く言葉にできないのか閉口。
そんなことを数度ばかり繰り返す彼女を見つめ、千司の中で先ほどの疑念が確信に変わる。
(やはりセレンは何か知ってるなぁ……襲撃を知っている素振りは無かったと思うが。……裏で動いてるのはライザちゃんか? だとすれば面倒極まりないが……まぁ、セレンが知っているのならわざわざ黒装束を生かして捕らえる必要はなさそうだし、対処は楽になったな)
思考を切り上げた千司は使い物にならないセレンから視線を外し、ロイアーへと移す。そこでは盾で押しつぶした黒装束の首をへし折り、止めを刺しているバーコード禿の姿があった。
「……殺したのか?」
「あぁ、最初は生きたまま捕まえるつもりだったが……まぁ、外にまだ十人もいるってんならそっちでいいと思ってなぁ……まずかったか?」
「いや、問題はない」
「なら良かった。んで、セレンはどうしたってんだぁ?」
眉を上げてセレンを見つめるロイアー。
「あれは馬鹿だからな。咄嗟の判断に弱いんだ」
「ひでぇ、言い草」
「事実今使い物になっていないからな。……アイリーン、敵の位置は分かるか?」
千司の言葉に、アイリーンは首を横に振る。
「常に移動していますので何とも。ただこの建物を取り囲むように動いているようです」
「大方飛び出してきたところを狙う腹積もりだろうぜぇ? 俺が全身鎧着て飛び出すか?」
その提案に千司は逡巡した後、首を横に振った。
「いや、わざわざ危険を冒す必要はない」
そう言って千司が向かったのは壁でぺしゃんこになっている黒装束の下。
(確実に死んでるな……武器はさっき投げたナイフだけか。ご丁寧に黒い手袋までして……ナイフが滑ったりしないものなのかねぇ)
観察を終えた千司は、遠慮なく死体からその衣服をはぎ取ると、持って来ていた自身の着替えを着せた。
千司の目的を察したのか、顎に手を当てながら笑みを浮かべるロイアー。
「なるほどなぁ、いい手だ。人としては終わっているが」
「仲間を守るためだ。それに、俺を殺そうとした奴だ。問題ないだろ?」
「違ぇねぇ」
適当に語りつつ死体を着替えさせた千司は、次いで脱がしたばかりの黒装束を身に纏う。死体と衣服を交換した形だ。多少血が付着していて不快だが、我慢である。
(敵のステータスが分からない以上、慢心は愚策。仮にライザちゃんが絡んでいるとすれば、用心するに越したことは無い)
千司はこの世界において、かなり高いステータスを持っている。
しかし上には上がいるのだ。
仮に黒装束のステータスが千司と同等か少し下程度だとしても、連携されれば危険極まりない。
(こういう時、新色ちゃんが入れば策の組み立ても楽だったんだがなぁ~)
敵が弱ければ存分に格好をつけて、女性陣の好感度を稼ぐ。
敵が強ければ適当な人間を囮にして逃げる。
王女に匿われ、現在どこにいるのか分からないロリ巨乳な女教師を脳裏に浮かべつつ、千司は自身の服を着させた死体を肩に担いだ。
「さて、それじゃあ今後の動きを伝える――」
§
千司は指でスリーカウントを数えると、今——と肩に担いでいた死体を窓から放り投げた。
同時に、周囲から多様な魔法が降り注ぐ。
火だったり風だったり土だったり。
死体は一瞬で肉塊と化し、外れた魔法が遺跡の石畳を砕いて砂煙が舞い上がる。
そうして生まれた砂煙の中を、黒装束に身を包んだ千司が駆け抜けた。
(今の攻撃で六人の場所は分かった。残り四人)
千司は誰も見ていないことをいいことに『偽装』を用いて足音を消すと、正面の少し離れた建物の屋根に身を潜めていた黒装束に接近。背後から近付くと、躊躇なくその喉笛を切り裂いた。
当然呻き声も全て『偽装』で消す。
まずは一人。
同時に建物の屋根から周囲を見渡すと、残りの四人の位置も判明した。
先ほどまで千司が居た建物を中心に左右に三人ずつ。建物の後方に二人。
そしてその反対側——千司が今いる場所の数軒隣の屋根にもう一人。
今殺した黒装束を含めて計十人、アイリーンの報告通りである。
(場所もわかったし次に移るか……っと、こいつも手袋付けてるのか)
持っている武器は漆黒に染められたナイフのみ。
(……まぁいいか)
千司は手短に観察を終えると、黒装束の死体を掴みながら周囲を見渡す。
まだ誰も千司の動きには気づいていない。
全員の視線は先ほど窓から放り投げた死体の方へ。
やがて立ち込めていた砂煙が晴れ、そこに転がるのが自身たちの仲間だと気付いて僅かに動揺を見せた一瞬。その隙を突くように、千司は喉を切り裂いたばかりの死体を、視線の集まる渦中へと放り投げた。
突如として空から落ちて来た仲間の死体。
動揺の中に生まれる困惑。
されど、戦闘の最中に置いてその一瞬はあまりにも致命的であった。
「左右に三人ずつ! 屋根の上だ!」
「りょーかいだぁ!」
千司が叫ぶと同時、窓から飛び出したのはロイアー。
彼に向かって魔法が飛んでくるが、ロイアーは正確に盾で受け止めると、そのまま盾を手放して身軽になり、剣を手にして黒装束へと迫る。
慌てた様子で迎撃態勢をとる黒装束の喉を付いて、一人。
振り向きざまに剣を薙いで、二人。
逃げようと踵を返した最後の一人に、剣を投擲。外れる物の追い付くには十分だったようで、背後から首を絞めて三人。瞬きの間に制圧してしまった。
それを確認していると、千司のすぐそばに潜んでいた一人が、背後から奇襲を仕掛けて来る。
手にはお馴染みの黒いナイフ。
「さすがに見慣れたぞ、その武器」
「……っ!?」
間合いを正確に読み切り回避すると、千司は口端を持ち上げながら大きく踏み込んだ。
瞬間、バキッと足場にしていた屋根が壊れ、崩落から逃れようと黒装束は大きく跳躍。その隙を突くように、千司は剣を投擲。切っ先は頭蓋を貫き、黒装束の串刺しが完成した。
「さて、残るは――」
剣を引き抜いて振り向いた瞬間、眼前に三人の黒装束が迫っていた。
建物の左側を陣取っていた連中である。
「……こいつだ」
「了解」
黒装束たちは短く言葉を交わした後、一人が笛のような物を吹く。
「あーらら、大人気じゃないの」
適当に語りながら千司は思考を巡らせる。
(察するに、後方を陣取ってた二人を呼んだか……五対一。いや、援軍の方はロイアーが止めるかぁ~? 何はともあれ、殺していいのなら何ら問題はない)
千司は両手を『偽装』すると、迎撃に入る。
まずは一人目。
迫りくるナイフを剣で弾くと、隙だらけの首筋を左手で掴んだ。直前まで『偽装』で隠していた左腕に「訳が分からない」とばかりに黒装束は目を見開くが、もうどうしようもない。
千司は躊躇なく首の骨を折ると、背後から仕掛けて来たもう一人に死体を投げつけた。
「……っ、許せ」
飛んで来た死体をナイフで両断し、勢いを殺すことなく迫る二人目——しかし、次の瞬間、千司の姿が目の前に合った。簡単な話だ。投げた死体で視界を塞ぎ、その間に接近したのである。
「……ッ」
千司は視線誘導でフェイントを織り交ぜ、『偽装』で幾重にも剣を増やしながら剣を振るう。急接近に焦った黒装束がフェイントを見破れるはずもなく、千司の剣はその首を跳ね飛ばした。
残る一人は不利を察したのか後退。
千司は追いかけようとして——違和感を覚える。
(……何でこいつ、右手だけ手袋外してんだ?)
疑問に思った瞬間、援軍二人の足止めしていたロイアーの声が響く。
「ナクラ! 足元だ!」
「……なるほど」
それを受け、千司は強く踏み込むと、大きく跳躍。
一歩も屋根に足を着くことなく彼我の差を埋めると、最後の一人の心臓に剣を突き刺した。同時に、黒装束の懐から正方形の紙が数枚零れ落ちる。
月明かりに照らされた表面には、魔法陣が記されていた。
(魔法陣を描いた紙を用いた遠隔攻撃……シュナック教諭が使っていたやつか)
魔法学園で戦ったどこかの国の諜報員を思い出しつつ、周囲を確認。
すると見えにくい位置に魔法陣が仕掛けられていた。
これで追いかけて来た千司を罠にかけるつもりだったのだろう。
念のため仕掛けられた魔法陣を回収していると、援軍の対処を終えたロイアーが声を掛けて来た。
「無事かぁ?」
「あぁ、さっきは助かったよ。ありがとう」
「いいや、元を辿りゃあ見張りの俺が気付かなかったのが悪ぃ、すまねぇな」
「全員無事だったんだ、構わない」
適当に語りながら千司たちは周囲の黒装束を確認。
千司が戦った手合いは全員即死、ロイアーも手を抜ける相手では無かったらしく、生憎と生きている黒装束は一人も居なかった。
「にしても、これじゃあなーんにもわかんねぇなぁ。ただの盗賊とは思えねぇが……」
「気にするな」
「そりゃあ無理って話じゃあねぇかぁ?」
「大丈夫だ。心当たりはあるから。……だから今はみんなのところに戻ろう」
そうして千司とロイアーはエリィたちの下へと戻るのだった。
§
「うふふ、そのご様子では皆さん殺してしまったのですね」
「そうだ。引いたか?」
「いえいえ、そんな。襲ってきた者たちが悪いのですから、ナクラさんたちは降りかかる火の粉を払っただけ」
寝床に戻って来ると、エリィを守るように構えていたアイリーンと言葉を交わしつつ、千司は剣を置いて腰を落ち着ける。
「そう言ってもらえると助かるな」
一息ついていると、同様に腰を下ろして剣の手入れを始めたロイアーが口を開いた。
「ナクラぁ、そこに刺さってるナイフを貸してくれ。遺跡のモンスターに使われないように回収しておく」
「ん、それもそうか」
ロイアーが指さしたのは室内で戦闘していた際に、窓の外から投擲されたナイフである。千司は引き抜こうと取っ手に手を掛けようとして——セレンが叫んだ
「それに触るな!」
「……」
「あぁん? いきなりどうしたってんだぁ? セレン」
いきなり大きな声を出したセレンに全員の意識が向かう。
そんな中、彼女は気まずそうに続けた。
「そのナイフには毒が仕込まれている。刀身と柄の両方に」
(……やはりか。そうでもなきゃ、手袋付けてナイフを振ったりしないよなぁ)
おおよそ想像していたので素手で触れるつもりはなかったが、まさか本当にそうだったとは。戦闘となれば敵の武器を奪って使うこともある。その際、柄に毒を塗布しておけば、一気に形勢が傾くということなのだろう。
(今度俺もやってみよー!)
新しい作戦に内心ウキウキの千司に対し、セレンに鋭い視線を向けるのはロイアー。
「……なーんでセレンが、んなこと知ってんだぁ?」
「それは……」
気まずい表情で視線を逸らすセレンに代わり、千司がこたえる。
「それは、こいつが俺の言っていた心当たりだからだ」
「なんだと?」
眉を顰めるロイアーを無視し、千司は怒りを『偽装』しながらセレンを睥睨。
「……なぁ、なんで戦わなかった?」
「……」
無言のまま腕を組み、下唇を噛み締めるセレン。
千司は続ける。
「セレンは、俺の——
「……っ」
ここでいう俺たちというのはこのパーティーメンバーの事ではない。
勇者という意味合いである。
セレンもそれを察したのだろう。
彼女は俯いて、数回深呼吸。
やがてゆっくりと顔を上げると、口を開いた。
「……戦わなかったのは、すまない。分からなかったんだ」
「分からなかった?」
「あぁ……先ほどの黒装束。あいつらはおそらくへリスト教の執行官だ」
「執行官?」
千司の問いにセレンは頷いて続ける。
「へリスト教は大きな組織だ。当然、裏で動く組織も存在する。それが執行官。殺しを専門に請け負う組織で、その構成員はその黒い装束を纏っている。袖口の裏に金の刺繡が施されていないか?」
言われて千司は自身が来ていた黒装束の袖を捲る。
そこには彼女の言う通り金の刺繍があった。
「あるな」
「なら、間違いない。執行官の戦闘方法は様々だが、主に使われるのがそのナイフ。刀身から柄まですべてが毒で浸され、触れたものは身動きが取れなくなり、最悪の場合死に至る」
説明を続けるセレンに、慌てた様子でロイアーが口をはさんだ。
「ま、待て待て! なんでそんなことをセレンが知ってんだぁ? へリスト教の信者ってぇのは知ってたが……」
「あぁ、私はただの信者ではない。特別な役職が与えられているわけでもないが、訳あってへリスト教内部ではそれなりの権力を有している」
その訳というのはおそらく王国騎士だから、ということだろう。
「それで、セレンはこの襲撃について知ってたのか?」
声を低くして千司が問うと、セレンは真剣な表情で答えた。
「それは否定したい。私は知らなかった。だからこそ……分からなかった。私は、私はどうすればいいのか、と。そうして迷っている内に、貴公に全てを委ねてしまった。……謝罪したい。すまなかった」
「……わかった」
謝罪を口にして、首を垂れるセレンに、千司は渋々と言った様子を演じながらも首肯を返した。
「信じてくれるのか?」
「あぁ……じゃなくて、はい。信じますよセレンさんの事。何しろあなたは人を騙せるほど歪んだ性格をしていない、純粋な方ですから」
「貴公……っ! ……? それは、褒めているのか?」
「当然ですよ」
「そ、そうか!」
相も変わらず馬鹿丸出しのセレン。これも全て演技なのだとすれば、千司の中で最も警戒すべき人間がライザとセレンの二人に増えることになる。
(まぁ、何処からどう見ても馬鹿以外の何物でもないから安心だが)
などと考えていると、納得していない様子のロイアーが話しかけて来た。
「いいのか?」
「あぁ、危害を加えるつもりなら俺がナイフに触れるのを止めるわけがないしな」
「それも……そうだな。にしてもなんでへリスト教は襲ってきたのか……セレンは知らないんだよな?」
「すまない。それについても私は知らない。貴公を狙うなど、いったい何を考えているのか。王都に戻り次第、聖女か司祭に問うておこう」
千司を見つめて語るセレンに、薄く笑みを浮かべて返す。
「あぁ、頼むよ」
と、同時に全員の表情を確認。
「ほんとに権力持ってんだなぁ」と苦笑を浮かべるロイアー。
「……え? ん?」と頭に疑問符を浮かべるエリィ。
「うふふ」と微笑みながらエリィの両肩に手を置くアイリーン。
全員の表情を確認し終えると、千司は欠伸を噛み殺しながら窓枠に腰掛け、蒼い月を見上げながら思った。
(な~るほどねぇ~)
何を企んでいるのか理解した千司は、今後について考える。
と外を眺めながら物思いにふけっている千司に、エリィが声を掛けて来た。
「センジ、寝ないの?」
「あぁ、さっきの戦闘で目が冴えたからな。今日はこのまま俺が見張りを請け負うよ」
「え、でも……」
「そうですよ。ナクラさん。興奮して目が冴えるのは分かりますが、休息もしっかりとらないと。本日は私が変わりますので、ゆっくりと休んでください」
「……そうか? ならアイリーンに任せてもいいか?」
亜麻色の髪を揺らすアイリーンの提案に乗ろうとして、ロイアーが口をはさむ。
「待ってくれ、それなら俺が——」
「ロイアーさんは信用できないのでダメです。また襲われては堪りませんので」
起こった様子のアイリーンの言葉に、ロイアーはたじろぐ。
「ぐぅ、すまねぇ。すまねぇ……ついつい廃墟好きの血が騒いじまって、警戒が緩んじまったんだ……」
「なら尚更です。帰りの見張りは任せるので、遺跡に滞在する間は料理にだけ集中してください」
「うぅ、ほんと無能ですまねぇ……」
謝罪を繰り返し、落ち込むように眠りに着くバーコード禿。
「それじゃアイリーン、見張りの方をよろしくな」
「うふふ、うふふふふっ。えぇ、お任せください」
口元に弧を描いて、粛々と頷くアイリーン。
千司は壁を背にして座り込むと、そのまま眼を瞑る。
もぞもぞと隣から音が聞こえ、ちらりと見ればエリィがすぐ隣で横になっていた。
「おやすみ、ナクラ」
「あぁ、おやすみ」
こんなことをすればまたセレンがうるさくなると思ったが、意外なことに彼女は何も言わなかった。むっと表情を歪めてはいるものの、先程の一件もあり強く出れないのだろう。
「セレンも休め」
「わかっている」
ふんっ、と鼻を鳴らして、セレンもまた千司の隣で眠りに着くのだった。
§
遺跡二日目の朝。
千司はモンスターの叫び声で目が覚めた。
何だと起き上がれば、窓の外にアイリーンの姿。
他の面々はまだ夢の中の様子。
「おはようございます、ナクラさん」
「……何をしている?」
「襲い掛かって来たので駆除しておきました」
そう語るアイリーンの後方には巨大なオークが倒れていた。
(駆除、ねぇ……お前は索敵を得意とする冒険者じゃなかったのかぁ~?)
とか何とか思いつつ、ニコニコと笑みを浮かべるアイリーンを睥睨するのだった。
―――――
あとがき
私事ですが、カクヨムコン落ちちゃった涙
次目指して頑張ります!
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