#9 ブラックジャック!負けたら罰ゲーム! その1

 ブラックジャックってカジノでやると不利らしいぜ?

 なんでかは忘れたけどな!ハハハ!


————


 思い知らさねばならない。

 どちらが上か。


「レナ、ブラックジャックをしよう」

「え?なにそれ?」

「あ、ヒカル、なんか悪い顔してる!」

「『アレ』の恨みですかね」

「ヒカル、怖い……」


 そう。

 ババ抜きアレの恨みだ。


「ただのトランプゲームだよ」

「えー、別に興味ないよ」

「『負けたほうが勝った方の言うことをなんでも聞く』、そういう賭けをしないか?」

「え?」

「ひとまず、ルールだけ説明するよ」


 今回は次のようなルールにした。


 一、共通の山札からカードを引いていく。

 一、カードの点数は通常のブラックジャックと同じ。つまり、2〜10の数字はそのままの点数。ジャック、クイーン、キングは10点。エースは1か11の、都合のいい方。

 一、数字が21以下で、21に近い方の勝ち。21を超えたらバースト。同じ数字は引き分け。


 そして、特殊ルールを2つ。


「特殊ルール1つ目、山札から引くのは、『いつでもいい』。そして、両者とも引かなくなってから『30秒』経ったら、そこでオープンする。このほうが初心者のレナにはわかりやすいからね」

「お、それなら簡単そう!」

「いや、あの顔は……」

「何か企んでますね」

「ヒカル、怖い……」


 僕はカードをシャッフルしながら、あえて落ち着いた声で、こういった。


「そしてもう1つ、レナに有利な条件をあげよう。デネブの輝き変換魔法を『1回、1枚にだけ』使ってもいい」

「えっ……」

「えっ、それって、かなりヒカルに不利なんじゃない?」

「まあ、何か企んでるでしょう」

「ヒカル、怖い……」


デネブの輝き変換魔法の効果は、トランプの場合、別のカードをあるカードと同じ数字にできる、そういう魔法だ。

 たとえば、クローバーの5、スペードの9と引いて、そのあとダイヤの8を引いたとしよう。そうすると、普通なら点数は22点となり、バーストする。

 しかし、デネブの輝き変換魔法を使えば、「スペードの9をダイヤの8にする」ことができる。つまり、21点となり、ブラックジャックとなる。

 このルールだと、レナがかなり有利になる。


 これは僕にとって、いわば「背水の陣」だ。


 ——だが、勝算はある。


 山札をテーブルの中央に置いた。最後のひと押しをする。

「レナ、これでも、『ゲームをやらない』かい?」

「いや、やる!」


 よし、勝負には乗せることができた。


「じゃあ、はじめようか」

 まず、僕が山札から2枚引いた。ダイヤの2とスペードのQだ。12点。

 すかさず、レナが2枚引いた。


 レナは悩んでいるようだった。僕は、あえて、少し待った。


 レナが3枚目を引いた。

 少し安堵した表情をしていた。


「じゃあ、僕も、もう1枚」

 そういって、1枚引いた。クローバーの5だ。17点。


「さて、どうしようかな」

「……ヒカル、早く引いたら?」

「そうだな……もし、『レナが18点だったらいいんだけどな』」

「えっ……」

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