#2 女神うるさすぎる問題!

 あ!キミ、この前の子じゃん!

 もうちょっとさ、小説読んでいかない?


————


「神殿」の中は意外なほど現代的だった。


 電気も、ガスも、水道も、どうやら通っているらしい。


 しかし、何かが欠けている。

 圧倒的に感じる、何かが。


「あなた、大丈夫?少しベッドで休んだら……」

「ああ、そうするよ」


 気分が落ち着かなかったので、言われる通り、ベッドでひとり横になった。



 あいつ、結局なんだったんだろう。


「絶対神ゼウス」って名乗ってたけど、あんな軽い感じなのか。


 そもそもなんで日本にいたんだ?


 そして、「あとはよろしく!」と言われたからには、結局ここで暮らすのだろうか?



 そんなことを考えていたときだった。


 何か温かい感じがする。

 小さな少女の身体が当たっていることがわかった。

 僕が最初に目覚めたとき、心配そうな表情をしていたあの幼い少女が、ベッドの中に潜っていた。


「ねえ……あなた、『ゼウス』じゃない、よね……?」


 バレている。


 正直に話そう。


「そうだよ」

「やっぱり……あなたから感じる温かさは、ゼウスのとは違うから……そうだと思った」


 事の顛末てんまつを話した。

 

 幼い少女はあまり表情を変えなかったが、静かに笑みをこぼしていたように見えた。


「まあ、あのゼウスらしいといえば……ゼウスらしいかな……」

「そうなのか……」


 ゼウス、やっぱり軽いヤツだった。


「まあ、しばらくは慣れないだろうけど……ここの人々——いや、神々——はみんないいだから、安心していいよ……」


 彼女の瞳は嘘をついていなかった。少し安心した。


「ありがとう。そういえば、きみ、名前は?」

「わたしはアイギーナ……あなたの名前も聞いてもいいかな」

「ああ、僕は——」

 それを言おうとしたとき、騒がしい別の少女2人が駆け寄ってきた。


「あー!やっぱりアイギーナ、いないと思ったらここにいたんだ!」

「てか、めっちゃ抱きあってんじゃん!アハハ!」


 なるほど、格好としては確かに抱き合っている。しかも半裸で……


「いや、これは……」

「まあ、アイギーナとゼウス、仲いいもんね!」

「アハハ、でも『そういうこと』するには、まだ早いんじゃん!」


 こいつらもゼウスと一緒で軽いな。軽いやつらばかりなのか。


 そのとき、向こうからあの黒髪の女性の声がした。


「ごはん、できたわよー」


「はーい」

「ほら、ゼウス、いくよ!」

 元気な二人に腕を掴まれて食卓まで連れて行かれた。


 なんだか懐かしい香りがする、これは……?


 豚の角煮だ。

 あと、白米。


 え、ここローマじゃないの……?

 魚介料理とかならまだわかるが。

 そもそも、神々、普通に食事するんだ。


ヘンウェン豚ブロックが安かったから、今日はこれね」


 安いとか、そういう概念あるんだ。


「おいしそー!これ、食べるのはじめてじゃない?」

「これはヘーラーがはじめて作る料理ですね。嫌な予感がします」


 メシマズの予感がする。


 なんだか、わちゃわちゃしている雰囲気と嫌な予感が相まって、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を彷彿とさせる。


「まあ大丈夫っしょ!いただきまーす」

 横にいた、一番ノリの軽い、金髪の少女がそれを食べ始めた。


「もぐもぐ……あれ、普通にうまいよ!」

「あなたの味覚は信用なりませんね」

「いや、普通にうまいって、これ!ほら、ゼウス、あーん」


 彼女の方を向いて、口を空ける。

 彼女がフォークに刺さった豚の角煮をこちらに向けてくる。


 てか、胸が気になるな。

 布がほとんどはだけた少女に向かって口を開けているさまは、どこか滑稽こっけいではあるのだけれど、まあ、嫌な気持ちにはならない。


「あ、ほんとだ、おいしい」

「でしょでしょ!」


 快活な方の少女は、バクバクとすごい勢いで食べている。

「これおいしいね!」


 メガネの少女はため息をつく。


「はあ、そういうなら仕方ありませんね」

「なんだか……不安……」


 作った張本人、黒髪の少女は満面の笑みで、こう言った。

「あなたのことを思って作ったんだから、マズいわけないじゃない」


「じゃあ、あらためて、いただきまーす!」


 黒髪の少女の目はとても幸せそうで、口角も上がっていた。

「あーよかった、やっぱり美味しい」

「ヘーラー、さては腕あげたなあ?」

「ふふ、秘密よ」



 幼い少女と、メガネの少女が言った。


「いや、マズい……」


 味音痴が4人もいたのだった。



 夕食を終えた後、くだらない雑談が始まった。


「そういやレーダーとイーオー、最近学校いってる?」


 軽いノリの金髪のツーサイドアップの少女はレーダー、やたらと快活なポニーテールの茶髪の少女の名前はイーオーというらしい。


 てか、え、学校?

 学校があるの?


「あんなの行く必要ないんじゃん?」

「普通にゲーセンでも行ったほうが楽しいよ!」

「いや、まだ12,452歳なんだから、学校くらいは行ったほうがいいんじゃないの?」

「あなたたちにはわからないかもしれませんが、ラテン語とか論理学、おもしろいですよ」

「いや、それはエウローペーだけじゃん!」


 メガネでアッシュグレーの髪の少女はエウローペーというらしい。


「でも、学校生活って、結構楽しいものだよ。昔ゼウスと付き合い始めたのも、その頃だし」


 あの兄ちゃんゼウスも学校に通ってたんだ。へー。


「仲いいもんねー、ふたり」

「そー言われると、アタシも、ちょっと学校いきたいかも。でも、アタシにはゼウスがいるし、うーん」

「私達は婚約者フィアンセじゃないんだから、別にいいんじゃないですか」

「いや、エウローペー、そういうことじゃないっしょ!アタシたちラブラブだし。ねー、ゼウス」

 金髪の少女、レーダーが僕の腕を組んで胸を当ててくる。

 僕は、この人懐っこい感じがカワイイなとちょっとだけ思い始めた(まあ、布がはだけているのが、その感情を増幅していただけなのかもしれないが……)


 そんなこんなで、半裸の女神たちとの何気ない雑談が終わった。


 騒々しい一日だった。

 なんだか、とある類の衝動も、疲れていてそこまでなかった。


 皆が料理の片付けをしているうちに、こっそりベッドに向かう。



 シャワーは明日でいいや……(ん、風呂場はあるのだろうか……)



 結局、その日はそのまま眠ってしまった。


————


 オレの小説読んでくれてありがとね!


 あ、そうそう、「マジの作者」から伝言があるぜ!

(今後もこの欄、変なノリ続くかもしれないです、すみません……)

 だってよ!


 よかったら、コメントとかレビューしてね!それじゃ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る