有限の時間

綿麻きぬ

生き急ぐ

 自分が生きている無限と思っている時間は有限である。それは当たり前である。それを僕は分かっている。


 だから僕は生き急いでいる。


 生き急いで、首が回らなくなって、動けなくなった。動けなくなったことによって有限の時間は消費されていく。それに焦るが、その焦りはより自分を動けなくさせる。


 がむしゃらに生きていたはずだった、前だけを見て。それがいけなかったのだろうか。分からない。


 あれもこれもやりたい。欲張りなのだ。なにかを切り捨てることなどできずに、全てを欲する。そして今、その全てが手元にない


 頑張っていた、頑張っていたはずだった。こんな結果になるのは僕の頑張りが足らなかったからなのか。そうだ。もっともっと頑張れたのだ。しかし、もっともっとと手を伸ばしたところでどうせ全ては手に入らない。


 僕の生き方は間違っているのだろうか、有限の時間を無駄にしないように生き急ぐことは。ここでそれを否定してしまったら、僕はもうどうやって生きたらよいか分からない。


 身動きの取れない自分はもう落ちたものすら拾えない。あぁ、人生ってこんなものか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

有限の時間 綿麻きぬ @wataasa_kinu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ