第4話

 俺と妹のナナミはとある大きなショッピングモール内を歩いていた。

 モール内には色々なテナントがあるから、買わなくても来るだけで時間が経つのが忘れる程。

 なのだが‥‥‥


 周りの視線が痛いです。 

 特に男共の視線が。


 だってですね、今のナナミ、見た目が中2には見えないですよ。何処の女子高校生モデルに見えるんです。

 で、本日の目的は、ナナミ《こいつ》の誕生日プレゼントを買うこと。しかも俺もちで(悲し)。

 ナナミは、あっちが良い、こちらが良いと俺を引きずりまわす。

 そんなナナミを見ていると、ついフッと幼い頃を思い出す。あの頃のナナミは、俺がどこか行く度について来ていた。

 まあ、別に俺としては、来ない来なかろうとかまわなかったが、流石に友達と遊ぶ時には断ったが。


 そう言えばナナミ、いつ頃からお兄ちゃんからお兄に言い方が変わったんだ?‥‥‥。




 ◇◇◇



 今日は、ほんと〜うに、久しぶりにお兄とお出掛け♡。しかも私の誕生日プレゼントを買う為に♡。ルン♫ルン♫。

 と、顔に出ちゃう所だったわ(焦り)。

 お兄は嫌そうにしてるみたいだけど、私は約束した日から楽しみにしていたんだからね(少し怒り)。

 けどお兄‥‥‥、最近元気が無い。

 私が話しかけている時は、いつもと変わらないけど、何となくわかる。

 だって兄妹なんだもの‥‥‥。

 兄妹‥‥‥、血の繋がらない兄妹。


 ‥‥‥私がお兄と初めて会ったのは、私が産まれて10ヶ月の時、ママが今のパパと再婚した時。だから私は、本当のパパを知らない。顔も知らない。私自身も知ろうとは思わない。だって幼い頃からお兄が本当のお兄だと思っていたから。


 けど‥‥‥


 それは私が小学5年の時まで。

 学校で家族についての宿題があり、ひょんな事から、私とお兄は血が繋がってない事がわかった。最初は、嘘でしょう?と思った。

 けど親に聞いたら、あっさりと「うん、そうだよ」とにこやかに言った。

 『ちょっと、ちょっと、娘の気持ちが心配じゃないの?!』なんて思っていたら、ママが、



 「ショックだった?お兄ちゃんと血が繋がってないことに」



 私はその時、「えっ?」と答えた。

 何故「えっ?」なのか。

 私は確かにショックだった。けど、親から改めて聞かれると、さほど気落ちする程でもなかった。

 だって私は‥‥‥幼い頃からお兄ちゃんの事が好きだったから‥‥‥一緒にいて遊んでくれて、私をいつも助けてくれる、そんなお兄ちゃんが好きだったから。



 けど‥‥‥

 お兄ちゃんはあの人が好き‥‥‥

 鹿島ユリ‥‥‥ユリお姉さんが好き‥‥‥

 いつも一緒にいるからわかるもの。

 だから、血が繋がってないことに、半分はホッとした。

 だって!だって!だって!‥‥‥お兄ちゃんが私を好きになれば、結婚出来るんだもの♡

 それで、パパとママにその事を言ったら、てっきり反対されると思ったら、


 「おっ、そうか、あいつとか、それも良いかもな。そうすれば家族いつまでも一緒にいられるからな」

 

 「えっ?」


 「そうね〜、そうすればみんな一緒ね♡」


 「えっ?えっ?いいの?」


 「いいも何も、ナナミちゃんはお兄ちゃんの事が好きなのよね」


 「うん」


 「だったらママは何も言わないわ。好きな人のハートを射止めなさい。ねえ、アナタ♡」


 「ああ、パパとママみたいラブラブになるには、好きな人と一緒にならないとな」

 

 「えっ♡も〜う、あなたったら♡」



 あの時の私は、ラブラブ夫婦(自分の両親)を前に開いた口が塞がらないでいた。

 そして私はこの時から心に決めた。


 『そうよ!やっぱり好きな人と一緒にならないと!だから私はお兄ちゃんが好き!誰よりもお兄ちゃんが好き!お兄ちゃんがあの人を好きでも!だから私はあの人に!ユリお姉さんに負けない!』



 と。

 けど、いつまでも好きな人を、お兄ちゃんと言うのもなんだか恥ずかしい///。

 うん、今日から"お兄"と呼ぼう、うん。

 そうして私はあの日からお兄と呼ぶようになった。

 

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