失恋?から始まる恋愛

本田 そう

第1話

 愕然とする俺がいた。

何故愕然とするかだって?それは失恋したから。

 まあね、こうなる事は予想していたさ!

 彼女‥‥‥鹿島ユリは、小学1年の時から、何故かずっーと同じクラスで、高校も同じで、しかも同じクラス。もう十年間同じクラスだ。幼い頃はよく学校の校庭で遊んでいたが、小学五年頃から余り遊ばなくなり、挨拶や簡単な会話をする程度になっていた。そりゃあね、この頃は女の子と話すと恥ずかしいのが先に出てきたからね。


 で、鹿島ユリとの関係は、簡単に言えば、近所の幼馴染みではなく、遠くて近い幼馴染み。そして鹿島ユリのおばあさんはイギリス人で、その血が受け継がれたのか、鹿島ユリの髪は少し金髪かかったきめ細かいサラサラなストレート。顔はやはり美少女的な小顔で目鼻クッキリな顔。そして誰にでも優しく、誰にでもわけ隔たりなく微笑みを返すから、そりゃあ男なら誰だって、もしや(俺の事こいつ気があるかも)て思うじゃないかよ。

 けど実際はそんな事はなかった‥‥‥あえなく撃沈(悲)

 で、振られた言葉は‥‥‥



 ーーーいい友達でいましょう‥‥‥ーーー



 あーーっ、この言葉を聞いた瞬間、ダメだと確信したよ。ホント。俺はあの瞬間、頭の中真っ白になり、後の鹿島ユリの言葉が聞こえていなかった。まるで周りに、俺だけがいる感じだった。

 で、気づくと俺は、鹿島ユリに寂しい背中を向けて、とぼとぼと歩いていた‥‥‥。

 そして、早くその場から立ち去りたいと走ってその場から逃げた‥‥‥。



 ◇◇◇



 今回の告白で何回目なんだろう‥‥‥。

 私はそう考えながら、待ち合わせ場所まで歩いていた。

 けど、いつもと違う気持ちで歩いていたの。

 いつもは、どうやって傷付けず断ろうか、なんて考えていたの。

 けど、けどね、今回呼び出された相手は、あの人、そう!あの人、私の小学1年の時からクラスが一緒だった男の子、渚ヒロト君。

 私はあの人の事を、ヒロ君と呼んでいた。

 家は近所ではなかったけど、昔からクラスが一緒だったので、自然と親も仲良くなり、小学校の間は良くヒロ君一家と一緒に旅行なんかもいったりした。

 そんなヒロ君に意識し出したのは、小学2年の時、学校で男の子達からいじめられていたの。私のおばあちゃんがイギリス人で、その血を引き継いだのか、髪の色は少し金髪かかっていた。だからこの髪の色で良くいじめられていた。

 けど、そんな時いつもヒロ君が助けてくれた。いつも私をかばってくれた。

 そして、こう言ってくれたの。



 ーーー俺はこの髪色好きだよーーー



 この言葉で、私はヒロ君を意識し始め、前にも増して一緒に遊ぶようになったの。


 けどね‥‥‥何故かわからないけど、小学5年のころからヒロ君は私を避けるようになった。だけど、挨拶や簡単な会話はするから、避けている理由がわからなかった‥‥‥。


 何故、理由を聞かなかったの?

 それは‥‥‥私に聞く勇気がなかったの。

 もし、ヒロ君から嫌いと言う言葉が出たらと思うと、怖くて聞けなかったの。

 

 そんな私も中学生になると、何人かの男の子に告白された。

 けど、付き合う気にはなれなかった‥‥‥。

 だけど、だけどね、あの人、ヒロ君からラブレターを貰った時には、信じられないでいたの。けどね、ラブレターを目の前にして、本当なんだと、心の中で泣いちゃった。

 だから、待ち合わせ場所に指定された時間より早く来たんだけど、もうすでにヒロ君が居たの。

 そして私の前に来ると、いきなり頭を下げてヒロ君、自分の右手を私に出して、



 ーーー俺と付き合って下さい!ーーー



 そう言って来たの。

 私、その言葉を聞いた時、嬉しくて涙が出そうになり、顔を見られまいと頭を下げてしまったの。

 そして‥‥‥


 (やっと、やっと‥‥‥)いい友達でいましょう(この言葉から解放されるのね)


 そう最初に呟いてしまったの。

 そして私が、「よろしくお願いします‥‥‥」そう言いかけて頭を上げた時には、ヒロ君の背中が向けられて、歩いているのかと思ったら、走って行ってしまった‥‥‥。

 私が、「ヒロ君!」叫んでも彼の耳には届かなく、ヒロ君は私の前から居なくなった。




 ◇◇◇



 あれから十日程たったんだろうか‥‥‥。

 あの告白の次の日から俺は、学校には行きたくなかった。ユリに振られたから‥‥‥。

 けど、学校を休むと親は心配するし、妹のナナミがしつこく俺の心配をしてくるから、仕方なく学校に行くようにしていた。

 そして告白の次の日から俺は、ユリを前よりも避けるようになった。

 ユリ〈あいつ〉が挨拶しても、目を合わせずらく、ユリの顔を見ないように、背後を通りながらまるで逃げるかの様に挨拶をすると、自分の席に着いた。


 俺は‥‥‥あの告白の日以降、ユリの顔をまともに見られないでいた。



 ーーー振られたからスッパリ漢らしく諦めたらいいじゃないの?ーーー



 頭の中ではそう考えるよ‥‥‥けど‥‥‥心の中ではアイツの事が‥‥‥ユリの事が好きなんだと、今でも誰よりも好きなんだと言っているんだよ!。

 けど‥‥‥ユリのあの申し訳ないなさそうな寂しそうな目を向けられると、俺は‥‥‥俺は‥‥‥ユリから距離を置いてしまう。



 ーーー俺はどうしたらいいんだ!

 どうすればユリの事を忘れられるんだ!

 どうすれば心からこの気持ちを消せるんだ!ーーー



 けど‥‥‥そう考える度、俺の心の中で



 ーーーそんなに簡単にユリに対しての気持ちが消えたりしないーーー



 そう俺の叫び声が、心の中で叫んでいた‥‥‥。


 俺に勇気さえあれば‥‥‥

 もう一度、告白する勇気さえあれば‥‥‥。




 ◇◇◇




 ヒロ君に告白された次の日、私はいつもと変わらず、学校に来ていた。

 いつもと変わらず?‥‥‥

 違うわ‥‥‥、私の呟きでヒロ君を私は振ってしまった。



 ーーーけど違うの!違うのよ!ヒロ君気づいて!ーーー



 私は心の中で叫んでいた。

 そうこうしているうちに、クラスのみんなが登校して来た。

 いつもの何気ない朝の挨拶。

 いつもの私が出す、作り笑顔‥‥‥。

 けど、この作り笑顔はいつもの笑顔じゃない。悲しみと苦しみの笑顔。



 ーーーねえ、誰か気づいて!私の笑顔に!誰かたすけて!ーーー



 そう思っていると、ヒロ君が教室に入って来た。私は「あっ!」と言って、席を立とうとすると、他の友達が私に挨拶をして、彼との間を遮る。そしていつのまにかヒロ君は、私の後ろを歩きながら顔を見せず、おはようと挨拶をして、そのまま窓際の自分の席についた。私はまた彼の所に行こうと席を立とうとすると、また他の友達が挨拶をしてきて、彼との間を遮る。



 ーーーヒロ君気づいて!私の方を向いて!私はあなたの事がーーー



 私は友達に遮られながら、ヒロ君の方を見ていた。



 ◇◇◇



 2人は席につきながらこう思っていた。



 ーーー話す勇気があれば、五分だけでもいいから話す勇気があれば‥‥‥。神様、どうか時間を下さい。あの人と話す時間を下さい。五分だけでもいいので。話す勇気を


 俺に‥‥‥

 私に‥‥‥



 どうか下さいーーー



 と。しかし時とは、運命とはそんなに甘くはない。話す僅かな時間もないまま、一か月の時間が流れた。お互い心にしこりを残したまま‥‥‥。


 

 


 



 

 




 


 

 


 

 


 

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