孤児が虐げられるダンジョン都市~迫害される孤児は【神魔法】に覚醒して全ての孤児を救う~
仰向けペンギン
英雄の誕生
第1話 孤児の不条理 Ⅰ
『マリア
通称、『洞窟階層』と呼ばれる初級階層(1~6階層)に分類される4階層は、茶色い洞窟のようなゴツゴツとした山肌が剥き出しの坑道で構成されている。
「ーーー
L字の曲がり角から銅鏡を使い、通路先の様子を確認した僕はパーティメンバ2人に報告した。
鏡には、棍棒を持って床に寝転がりギャーギャー喚いている『ゴブリン』3体と、騒ぐゴブリンの傍で我関せずと体を丸めている『キルラビット』の姿が映されていた。
僕は伏兵がいないかさらに注意深く偵察してから、振り返る。
体を屈めて僕の背後に待機する男女が、僕のパーティメンバーの『タケル』と『ユリア』だ。
ユリアは怖がりな彼女の性格を反映したような薄目を僕に向けている。肩までかかる珍しい桃色の長髪がユリアのトレードマークだ。
タケルは彼の傲慢な性格を写すような赤い短髪とキリッとした大きな瞳を輝かせながら、便所座りで僕を睨みつけている。
「……タケルのタイミングに合わせます」
タケルは太股のポケットから
「……頭、狙えますか?」
「ーーー余裕に決まってんだ、ろっ!!!」
ザシュッ!
タケルが投げたナイフは勢いそのまま手前のゴブリンの頭に深く突き刺さった。
頭に違和感を覚えた様子のゴブリン。
頭に刺さるナイフに気づき引き抜いた。
そのままブルリと震えてゴブリンは死を迎えた。
『ギャー!ギャー!』
仲間の死に際を呆然と見つめていたゴブリンが叫声を上げた!
「ーーー行きますっ!!!」
ダッ!!!
三人一斉に怪物たちに向けて駆け出す!
「ーーーこの身は
僕は
ーーー体から湧き出る
ーーー魔力を圧縮し体外に放出。
ーーーそのまま魔力を、
するとーーーギョッとした表情でゴブリンとキルラビットが僕を凝視した!
『ギャー!ギャー!』
目を血走らせた|怪物(モンスター)共が一心不乱に、|僕だけ(・・・)に向けて駆け寄ってきた!
怪物は魔力に対して敏感だ。『魔力の多い者は危険』という自然界の法則から怪物は魔力の多い者を警戒する習性がある。
タンクはその習性を利用して自身の身に魔力を纏って怪物の攻撃を集め、アタッカーが無傷で怪物を倒せるように補佐する。
タンクは怪物共の攻撃を一身に受けるーーー『パーティの守護者』だ。
腰を落とし、迫る
「ーーーグッ!?」
初めに僕の元までたどり着いたゴブリンの棍棒を盾で受けるっ!
衝撃につい声を漏らすがダメージは大したものではない。
その後も二匹のゴブリンの打撃が続くが、盾でしっかりと受け止め、時には受け流す!
順調にゴブリンの攻撃をやり過ごし続ける。
だけど…凶暴なゴブリンの攻撃を何度も受け止めていると、流石に腕が痺れてきた…っ……!
「ーーーユリア!頼みます!」
「……神の恵みをっ、どうかアレンに…『ヒール』っ…!」
背中に柔らかな温もりを感じた瞬間ーーー腕の痺れが消えた。
ユリアの魔法、『ヒール』の効果だ。
ヒールは回復魔法であり、仲間の体力や傷を瞬時に回復させることができる。
このヒールを使って、ユリアはパーティーの『ヒーラー』として活躍してくれている。
「ありがとうございます!ユリア!」
「ーーーっしゃあぁぁぁ!2匹目ぇぇぇ!!!」
ぼくの感謝とタケルの声が重なった!
ゴブリンたちを警戒しつつタケルに視線を向ける。
そこには血溜まりに横たわるキルラビットと剣を片手にぼくの援護へ駆け寄るタケルの姿があった。
ーーー残り2体っ!
今回の戦闘も誰も怪我を負わず終われそうだ。
ほっと心の中で息をつく。
しかし安堵している場合じゃなかったっ!
血に誘われてゴブリン1匹の視線がタケルに向いた!
「ーーーそっちじゃない!僕を見ろっ!!!」
さらに多くの魔力を自分に纏わせてゴブリンを威嚇し、注意を僕に戻す。
『ーーーギァッ!?ギャーギャー!!!」
ヘイト集中は魔力を自身に纏い怪物の注意を引く技術だが、単純に多くの魔力を纏えばいいというものではない。
過度に魔力を纏うと怪物が魔力に刺激され
狂乱状態になった怪物は怪我を恐れず、捨て身の攻撃を仕掛けてくる。
狂乱状態になった2体のゴブリンが一斉に僕に攻撃してきたっ!
2体から同時に振り下ろされる木の棍棒!!!
「ーーーグッ!?」
勢いに負けて半歩後退する。衝撃に息が漏れる。
だけど、ユリアからの『ヒール』を受けて回復して後退した分前進する!
後ろのユリアを守るために、絶対に下がれないっ!!!
「ーーー来いっ!」
振り下ろされる2本の棍棒を受け続ける!
何度も受け続ける内にタケルがゴブリンの背後に回った。
「ーーーおらぁぁぁ!!!全力全霊っ!『スラッシュ』!!!」
タケルの魔法、スラッシュにより普段の数倍にも威力を増した剣が背後からゴブリンを一刀両断した!
これには狂乱状態のもう一体のゴブリンも冷静さを取り戻した。
ーーーふと生まれる停滞。
これまでタンクに徹してきた僕もこの機を逃さず腰から剣を抜く!
ゴブリンの首に剣を這わせ、喉仏を斬るっ!
タケルのスラッシュと違って薄く斬れただけだけど、これで十分だ。
鮮血が吹き出し、ゴブリンはのたうち回りながら倒れた。
「ーーー戦闘終了です」
僕は周囲に転がる亡骸の中心で息を吐き、乱れる呼吸を沈めた。
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