第110話 はとこも結婚できるんだけどね?

 雨音姉さんは15歳のときに、両親を火事で失った。俺の母もそのときに亡くなっている。

 それ以来、俺と父さん、そして雨音姉さんは家族として一緒の家で暮らしてきた。


 雨音姉さんは最初こそ、俺や父さんに遠慮していたけれど、しだいに本当の弟のように俺を可愛がってくれるようになった。


 家族を失った心の傷を埋めるために、雨音姉さんは俺を必要としてたのかもしれない。

 一緒に釣りに行ったり、カラオケに行ったり、映画を見たり、図書館へ行ったり。


 俺が推理小説を読むようになったのも雨音姉さんの影響だ。

 俺にとっては、雨音姉さんとの時間はかけがえのないものだった。


 ただ、だからといって、雨音姉さんと結婚するなんて、思いもしなかった。


 ウェディングドレス姿の雨音姉さんを俺は想像してみる。雨音姉さんは純白のドレスで着飾り、とても美しかった。普段はラフな格好をしているので、ギャップがある。


 そんな雨音姉さんが大人な表情で、俺の隣で微笑みかけて……。

 恥ずかしくなって、俺は自分の頬が熱くなるのを感じた。


 玲衣さんはむうっと頬を膨らませる。


「雨音さんと結婚しているところを想像していたでしょう?」


「そ、それは……えっと、していました……」


「やっぱり。それに、雨音さんに……いたずらしていたときも晴人くんってば、デレデレしていたでしょう?」


「デレデレなんてしていないよ」


「嘘つき。雨音さんとわたしの胸の大きさを比べて、わたしのより大きいなんて思っていたくせに」


「そ、そんなこと思ってないよ」


「本当に?」


 どきりとする。実際、雨音姉さんに胸を押し付けられたときは、玲衣さんよりずっと大きいなんて考えてしまった。

 なにか言い訳を言わないと俺はテンパってしまう。


「そ、それに、玲衣さんも十分に大きいし……」


「へ!?」


 俺は失言に気づいた。玲衣さんから振られた話題とは言え、胸が大きいなんて言っても、何のフォローにもなっていない。


 玲衣さんが嫌な思いをしただろうか……と思って、反応を見ると、玲衣さんは顔を真っ赤にしていた。


「ごめん。嫌だった?」


「ううん。晴人くんに女の子として見られている気がして、嬉しいな。でも、やっぱり、晴人くんって胸の大きい女性の方が好きなんだ……」


「そ、それは……えっと、違うというか……」


「雨音さんが羨ましいな。わたしよりもずっと大人で綺麗な人で胸も大きくて……。それに、晴人くんと昔から一緒にいて、強い絆で結ばれているから。きっとわたしなんかより、雨音さんの方が、晴人くんにとって大事だよね」


 雨音姉さんと俺は、従姉弟として幼い頃から互いを知っていて、五年前からは同居する家族でもあった。


 一方、玲衣さんと一緒に住むようになってから、まだ二週間も経っていない。


 でも、だからといって、玲衣さんが大事じゃないわけじゃない。

 玲衣さんは俺にまっすぐな好意を向けてくれていて、結婚指輪まで渡してくれた。


 雨音姉さん自身も、俺に「私よりも水琴さんのほうが大事なんでしょう。」なんて言っていた。

 

 二人のどちらの方が大事かなんて言えるわけないけれど……少なくとも、俺も玲衣さんに言えることはある。


「俺にとって、玲衣さんは大事な存在だよ」


「嘘」


 玲衣さんが不安そうに、でも、期待するような表情で言う。俺は微笑んだ。


「雨音姉さんはさ、家族として大事だけれど……でも、恋人になったりはしないから」


 俺は雨音姉さんを、姉としてしか見れない。いや、もちろん、ハグされたりスキンシップされたら、意識してしまうけれど、それは生理的なものだ。雨音姉さんと彼氏彼女になるところなんて想像もつかない。


 玲衣さんは、雨音姉さんが俺を男として好きだと言うけれど、信じられない。きっと雨音姉さんも、俺を可愛い弟としか思っていないはずだ。


 一方で、玲衣さんは違う。玲衣さんは俺を好きだと言ってくれて、一時は恋人のフリをしていた。

 アパートで同居していたときだって、互いを異性だと強く意識していた。


 そういう意味では、俺にとって、二人はまったく違った意味を持つ。

 玲衣さんは俺の言葉をしばらく吟味していたようで、そして、納得したようにうなずいた。


「そっか。わたしは、晴人くんの恋人になれる……なる可能性はあるものね。晴人くんは雨音さんを女性として見たりしない?」


「しないよ」


「良かった。……桜井さんと、わたしも同じ」


 どういう意味だろう? 玲衣さんとユキが同じ?

 俺が怪訝な顔をしたので、玲衣さんはくすっと笑った。


「桜井さんがわたしにヤキモチを焼いたように、今度はわたしが雨音さんにヤキモチを焼いちゃったってこと」


「ああ、なるほど……」


「そうそう、晴人くん。一つ言い忘れていたけど……」


 玲衣さんが急に俺に近づき、俺の腕をつかんで軽く引っ張る。

 そして、俺の耳元にその唇を近づけた。

 

 玲衣さんの吐息がくすぐったくて、俺は自分の体温が上がるのを感じた。


「結婚できるのは、従姉だけじゃなくて、はとこもだから。ね?」


 そう言って、俺のはとこの玲衣さんはいたずらっぽい笑みを浮かべた。

 そして、そのままささやく。


「わたしの胸、ちょっとだけ触ってみる?」


「い、今ここで!? それはさすがにまずいような……」


「何度もわたしの身体、好き放題にしたくせに」


「誤解されそうな言い方、やめてほしいな」


「本当に誤解?」


 観覧車に乗ったときも、思わず玲衣さんの胸おw触ってしまったし、マッサージするといって、また胸を触ってしまった。

 

 なので、何も弁解できない……。


「すみません」


「悪いと思うなら、さ、触ってほしいな。それに、外だと新鮮かなって」


 そういえば、もちろん、路上で制服姿の玲衣さんにいたずらしたことなんてない。

 俺はごくんと息を呑むと、玲衣さんの手を強引に引いた。


「あっ……」


 玲衣さんははずかしそうにつないだ手を見つめたが、そのまま何も言わずについてきてくれた。

 人気のない路地裏に玲衣さんを連れ込むと、俺はそのまま、玲衣さんを建物の壁際へと追い込む。


 いわゆる壁ドンに近いが、俺の手は壁にはない。

 玲衣さんの胸に両手を載せたのだ。


 セーラー服の上からでも、女子高生離れした大きな胸の感触ははっきりとわかる。

 玲衣さんがびくっと震えた。


「晴人くん……ダメっ」


「やれって言ったのは玲衣さんだよね?」


「そ、そうだけど……あっ……やだっ」


 俺の左手は玲衣さんの胸を撫でたままだが、右手がセーラー服の下に入る。

 そのまま玲衣さんのブラジャーの下に手を突っ込む。

 

 玲衣さんはかああっ顔を耳まで真っ赤にした。


「そ、そこまでしてなんて言ってない!」


「だって、ブラの下から触らないと本当の玲衣さんの柔らかさがわからないし」

 

「も、もうっ。ダメなんだからね……? あっ……ひゃうっ」


 玲衣さんの胸を揉むと、玲衣さんが反応良く甲高い声を上げる。

 制服姿の美少女に、人が来るかもしれない場所でいたずらするなんて、背徳感がすごい。

 外でなかったら、理性を失っていたかもしれない。


 左手もブラの下に手を入れて、両手で揉みしだくと、玲衣さんは身をよじる。


「やだっ、恥ずかしいよっ! 晴人くん……あっ、ちゅぷっ、んっ。キスっ、ダメっ、あっ、ちゅ、ちゅっ、んんっ」


 抗議の言葉をキスで強引に塞ぐ。舌を絡めようとすると、玲衣さんも情熱的に絡め返してくれる。口では嫌だと言っていたのに、本心は違うのだろう。


 そうして、俺は玲衣さんの身体をひとしきり弄んだ。




 














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