33─そして─
それからの事。
多くの人の記憶に残る二人のドラゴンスレイヤーの称号を与えられた英雄。
一人は魔術の天才ルベリオン・クレイジャス。クレイジャス子爵で、ミルシェを妻に迎え、二人の子を持つ。二人ともルベリオンの魔力を受け継いでおり、次世代の魔術を支えることを期待されている。
一人はオーギュスト・モルワ改めエイデン・ジルオールは王太子として充分な才を見せた。剣もさることながら知略に長け、民を思いやるその姿勢から民草からの支持も多く、難なく王位を継承することなる。アレクシラを妻に迎え、二人の王子と二人の王女をもち、賢王としてその名を馳せた。
「また、気にしているのか?」
「うん、ヘレネスもでしょ」
「私は昔からそうだが、キュラスはフィオナを亡くしてから悲しみ続けていたじゃないか、てっきりもう関わることをやめると思ったのだが」
「だって、私は人が好きだもん、フィオナの事は悲しいよ今だって思い出すと泣いちゃいそうになるけど…でもやっぱり人の傍にいたい」
柔らかな白い髪をヘレネスが撫でる。そうかと語る声は優しげだ。その肩には未だにあの小さな木の精霊が居た。
彼らは見守る。
かつての契約者を失った彼らはそれでも人を見守る。
「二人とも幸せそう」
「そうだな」
「フィオナもきっと喜ぶよ、キールも! だって、だってね」
二人ともとても優しい人だって幸せになって欲しいって願ってたから。
また冬が来ると雪が降る。だがそれは冷たいだけのものではなく、永遠のものでもない。
ラナンキュラスの花が散る頃には春が来て、沢山の生き物が活気づく。
そうやって自然の中に生きていく。
─────キュラスの果てに
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