13─氷の中の青年─
ルベリオンは目の前の光景をどうしていいか分からなかった。何故だか氷の中で眠っている青年の周りは白の降りが
ルベリオンを青年の元へ誘うような仕草をした赤い鳥も今は姿を消して、ルベリオンしか居ない。
初めて、見たことの無い存在をみつけ、それが手がかりになりそうだということしかルベリオンには分からなかった。
「
ルベリオンも座学で学んだことがある。この肌の色は陽の下にいるからなるか、元々陽が当たる時間の長い土地の生まれのどちらかだ。
だが、キュラスはどちらにも当てはまらない。空は分厚い雲で覆われ、その雲からは絶え間なく白が降る。
太陽などどこにもないと言うのに氷の中で眠る彼は陽に焼けている。
「…キュラスはどこから来たのか」
最初の問いを口にする。そう。キュラスは一体どうして出来たのか。キュラスの土地の隣は通常通りの気温の土地しかない。元々この国では雪は珍しいのだから。
「もしかして───…キュラスは最初からあった訳では無い?」
ゆっくりと噛み締めるように言葉にする。キュラスは最初からあった訳ではなかった。自然現象でそこに存在した訳ではなかった。
「天候を操れる魔術師なんて聞いたことがない、そもそも雪を降らしてなんになる」
果ての無い白が広がるこのキュラス。なぜどうしてと考えるだけ無駄なのだとルベリオンにも分かっていたが、他にどうすればいいかも頭に浮かばない。
「君は誰なの、どうして負傷してるの? どうして氷の中で眠って…君がいた時はここはキュラスじゃなかったのか」
物言わぬ彼に問うたところで答えは帰ってくるはずもない。それでも彼に問わずにはいられなかった。
ルベリオンはその答えを見つけなければならないのだから。
──────────
オーギュストはまた白の中を溶かしながら進んでいた。その足取りはルベリオンに比べるまでもなく早く、そして正確に真っ直ぐ進めていた。
だがオーギュストの目にはルベリオンの姿はなく、またルベリオンの
戻る訳にも行かないオーギュストは鎧が白を溶かすことをいいことに適当な木の根元で眠りについた。
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