第14話 大市の日の町娘

 話って何?


 え、いや、ゴメンなさい!

 その日は忙しいの。


 だって、その日は大市おおいちじゃない!?


 そりゃ年に二回しかない大市だもん!

 王都の商人や近隣の村々の人たちが取引するために集まってくるのよ?

 遊んでなんかいらんないわよ!


 アナタのウチも忙しいんでしょ?


 そりゃそうよ。


 そりゃ祭みたいなもんだけどさ、祭じゃないもん大市は・・・。


 祭なのは近隣の村々から来るお客さんにとってでしょ?

 アタシら街の人間はむしろ稼がなきゃ!


 え?

 そりゃあそうよ。

 いつもよりお客さんがずっと多いんだもの。


 何してって・・・別にアナタには関係ないでしょ!

 いいじゃない、気にしなくて。

 アナタだって自分の仕事があるんじゃないの?


 いつもは、アタシのこと相手にしないクセにどうしたの?


 良くないわよ!

 アナタにはアナタの仕事があるように、アタシにはアタシの仕事があるの!


 何の仕事って・・・そりゃあ、お手伝いとか・・・


 そ、そうよ!

 大市の日は近隣の村々からたくさん人が集まってくるんだから、その御世話しなきゃ・・・。


 そ、そんなこと、アナタに関係ないじゃない・・・。


 い、って何よ!?


 な!?

 何でそんなこと言うのよ!!

 売春なんかじゃないわ!


 ヒドイ!!!

 自分の婚約者のこと売春婦呼ばわりするなんて、信じらんない!


 違うわよ!


 そ、そりゃ・・・はするけど・・・


 だから違うわよ!

 何で一緒にするの!?


 やる事は一緒かもしれないけど売春とは違うわよ!


 違う違う違う!!


 売春ってのは売春婦のする事よ!

 アタシのは・・・アタシのは

 そうよ!


 違うわよ!

 アタシは売春婦じゃないわ!

 売春婦っていうのはけがれてるのよ、アタシは穢れてないわ!


 全然違う!

 いいこと、売春ってのは間違った行為なのよ?

 そして売春ってのは穢れた女が男の人をたぶらかしてお金を巻き上げる事よ。

 売春婦は穢れていて売春は禁じられているの。

 アタシのはしてお駄賃もらうだけだもん!

 正当な行為よ、売春なんかと一緒にしないで!


 け、穢れてなんかいないわよ、アタシは!

 神に誓ってもいいわ!

 ホント、失礼なんだから・・・。


 と売春は一緒じゃないわよ!!

 売春は罪だけどは認められているもの。


 違うわ!

 売春婦は売春することで罪を着て穢れていくけど、は罪じゃないから穢れないもの。


 なんでって、そりゃあ・・・アタシ免罪符めんざいふ貰ってるし?


 免罪符よ、知らないの?

 大市の日は街の女の人たちはみんな教会から貰うのよ?


 免罪符があるから罪にはならないし、は認められた行為なのよ。

 分かった?


 違うわよ、免罪符は買うんじゃなくて貰うの!

 免罪符を買うだなんて、そんな罪深い事できるわけないじゃない!!


 そりゃ、免罪符のおかげで稼がせてもらった分はあとでを納めるわよ、当然でしょ?


 妊娠だってしないわよ。

 だってちゃんとエルフの避妊薬飲むし・・・そう言や、知ってる!?

 大市の日が近くなると薬の値段が上がるのよ?

 あのエルフ、やっぱガメツイわよね。

 アタシ、今年は値段が上がる前に買えたけど・・・


 罪深いわけ無いじゃない!

 教会が免罪符をくれるってことは、神様がそれを許してくださってるってことよ。

 失礼しちゃうわね!!


 違うわ!

 何度言ったら分かるの!?

 アタシは免罪符があるから罪にならないし、売春婦でもないわよ!

 だいたい、アタシが売春婦なら街の女の人たちみんな売春婦じゃない!!


 やめてよ!

 結婚する前から亭主面ていしゅづらしないで!!


 じゃあ、アナタのお母さんやお姉さんも穢れてるって言うの!?


 何言ってんのよ!

 アタシのお母さんもアナタのお母さんも昔からやってるし、お姉さんだって一昨年からやってるじゃない!?


 本当よ!知らなかったの!?

 アタシ、今年はアナタのお母さんと一緒に免罪符貰いに行ったもの・・・。


 ・・・あ、アタシは・・・去年からよ。


 そ、そうよ。

 だから、みんなやってるわよ?


 いえ、知らないわ、この街でやってない女の人なんて・・・


 え?

 そりゃ、街の男の人だってみんな知ってるんじゃないの?


 去年はアタシんトコにアナタのお父さんとお兄さんも来たわよ?


 うん・・・あ、弟さんも来た。初めてだって言ってたわ。

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