第2話:ダイヤモンドと真珠

 私は領地に戻って裏切者を処分しました。

 私を殺してアリスナ辺境伯家を乗っ取ろうとした者は、叔父や従兄弟や再従兄弟であろうと、情け容赦せずに殺しました。

 そもそも最初に私を殺そうとしたのですから、当然の報復です。

 妻子が何も知らないと言っても、信じる事などできません。

 犯罪者の一族が連座させられるのがこの世界の常識です。

 まして今回は主殺しを画策したのですから、適用される一族も広くなります。


「セバス、未開地の開墾に王都から連れてきた貧民を使って。

 彼らの食料は冒険者に討伐依頼をだした魔獣肉を与えて」


 私とセバスは領都には長居しませんでした。

 未開地や魔境を監視する抑えの軍城に居を定めて、未開地の開墾に全力を注ぐことにしました。

 領都の政治と守備は、今まで通りビクトルに任せれば大丈夫です。

 私がモランボ公爵家の令嬢として動いていた時は、全部ビクトルに任せていましたから、特別何が変わるわけでもありません。

 ビクトルはセバスの長男で、心から信頼できる家臣の一人です。

 領内の主要な街や城には、信用できる家臣が責任者として配置されています。


「マリーナ閣下、予算はどこから使わせていただきましょうか」


 セバスは私の方針に反対したりはしません。

 よほど酷い事をやろうとしない限り、できる限り実現しようとしてくれます。

 今回の開墾と狩りも実現しようとしてくれていますが、それには莫大な資金が必要になるのです。

 アリスナ辺境伯家は豊かですが、無尽蔵の資金があるわけではありません。

 今回の件を開拓費だけで賄うのは難しいので、他部門の予算を投入することになりますと、やんわりと言ってくれているのです。


「予算は使わなくていいわ、この開拓は私の手元金から出すから。

 これを売って今回の費用に充ててちょうだい」


 私は前世の力と前々世の知識で創り出したダイヤモンドと真珠をセバスに渡した。

 金貨一万枚分の価値があるダイヤモンド百個と、金貨二万枚分の価値がある真珠百個を渡したのだ。

 これだけあれば、三十万人の難民を一年間食べさせることが可能だ。

 今回王都から連れてきた難民は二万人弱だから、十五年は養える。


「マリーナ閣下、これをどうされたのですか?!」


「毒を盛られた時に神様の啓示があって、秘術を授かったのよ。

 だからいくらでもダイヤモンドと真珠を創り出すことができるわ。

 王家に知られないように、徐々に換金して軍資金と兵糧に変えて。

 こちらから王家に戦争を仕掛ける事はないけれど、向こうが破れかぶれになって攻めてくることはあるかもしれないから」


「承りました、マリーナ閣下」

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