ハービンジャー 後編
〈某国、某所〉
ボスはシヴが倒されたことに驚きを隠せなかった。まさに想定外の事態だ。
「レインマンは
ボスの想定外を引き起こしたのは由恵の存在。八年前、レインマンの名で世界を
「《
プルルッ。
『
「分かった。ここに通しなさい」
予測通りだった。国連軍総司令官ニンバスはこの二人が来るのを待っていた。
〈国連軍 総司令官
サムとハワードの調査報告を受け、事態を重く見たBCO局長は国連軍総司令部に副局長とサムを派遣した。軍
総司令官
「アルヴェーン
ラリーはMTF214に関する報告書をニンバスに手渡し、さらにホログラム映像でシャドウ・リーパーに関するデータも表示した。
「そして、彼らの次の目的はシャドウ・リーパーの壊滅と推測されます」
「確かにこれは重要な問題だ。まさか、ブラックレインボーがここまで深く入り込んでいるとは。エージェント・クライン、ブラックレインボーが次にどのような手段を取るのか、君の
ニンバスに
「アメリカ軍を操ることで国連軍の弱体化を狙っているのは間違いありません。最悪の想定としては国連軍がブラックレインボーの手に落ちることです。内通者がいる可能性は捨てきれませんし、BCOの調査では世界企業連盟がブラックレインボーと
サムの意見はこの場にいないエージェント、ハワードと一致していた。ブラックレインボーは
「
ニンバスの言葉に合わせて、アンドロイド兵ASN‐5G二体が
「一体、これは!」
ラリーの
一方、サムはすぐに気絶しなかった。しかし、それは偶然の数秒に過ぎない。
プルルル……
ニンバスは
「大統領、裏切り者は
ニンバスの相手はアメリカ合衆国大統領。元々、BCOはニンバスの
そう、もはや彼にとってBCOは用済みとなっていた。
アメリカにはブラックレインボーの用意した偽装資料が提供され、まもなくBCO関係者は全員、生死問わず国際指名手配となるだろう。
(まさか
意識が完全になくなる頃にはアンドロイド兵によって、二人は総司令官
そして、二秒後。
隣の部屋から二発の銃声が響いた。
ブラックレインボーのボス、ニンバス・アルヴェーン。彼は国連軍
ニンバスは義眼からブラックレインボー幹部達を呼び出した。
「機は
キングやクイーンを含む各地全ての幹部らに〝レクイエム〟の実行命令を下した。
〈パキスタン、ISI本部〉
ブレインシェイカーによる洗脳戦闘兵や内通者の工作もあって、パキスタン政府、軍、警察は大きく混乱していた。さらに交通システムの停止とそれに
ジョーカーはスペード第七中隊、第十中隊、第二無人兵器群を
「こちらジョーカー、ISI本部は
〈ウクライナ、某所〉
ロシア
問題なのはウクライナへのザスローン部隊派遣をさせたのもブラックレインボーであり、ソールはザスローン部隊の
「いよいよ
戦闘部門スペードのクイーン、ソール。彼女は強襲
主兵装は携行式多用途レールガンUxE‐07。
ソールはハイマニューバ・フロートスラスターを使用し、空を
「これは私からの
ソールの
発射された弾頭は〝エリミネーター〟
完全
ウクライナ対外情報庁に命中した〝エリミネーター〟は着弾地点から
そこに生き物の姿はない。
「次はウクライナ保安庁と国防省情報総局」
ソールは続けざまにウクライナの
「あぁ、実に
ベラルーシ共和国に侵入したソールはベラルーシ国家保安委員会の
「イーグルアイ、こちらアクィラ4。欧州での任務は達成。これよりアジアへ移動する」
〈アメリカ、某州(BCO本部)〉
午後2時、BCO本部の上空にはアメリカ軍のティルトローター機Rz‐72三機がホバリング飛行していた。地上には八輪式兵員輸送装甲車UAT‐30が六台、本部を取り囲むように停まっており、
「イーグルアイ、こちらシャドウ・リーダー。これよりレクイエムを実行する」
Rz‐72の後部ランプと側面ドアが開放され、機体からは次々と第6特殊作戦群の隊員達が降下。隊員達は皆、戦闘スーツを着用しており、空中で停止しているRz‐72から直接跳び下りていた。同時刻、UAT‐30の後部ハッチも開放され、同じく第6特殊作戦群の隊員が降車する。彼らの左肩にはアメリカ国旗と第6特殊作戦群を表す二つのパッチが
彼らの装備は最新のフルフェイス型防弾
しかし最も恐ろしい装備は第五世代光学迷彩であろう。ブラックレインボーによって試験開発されたこの光学迷彩は第四世代の欠点が一つ
「これは一体、何事かご説明願えますか。グレイ大佐」
守衛の一人がアインスに近寄って来た。守衛らは軍から何も連絡を受けていない。守衛達の
「国連軍総司令官アルヴェーン
その瞬間、一斉にアインスの部下達が銃を構えて、守衛全員へ向けて発砲。
突然の事態に守衛は銃を引き抜く
「全隊、一人残らず
アインスの命令で各隊はBCO本部への突入を開始した。
『全職員へ通達! コード・オメガ! 繰り返す! コード・オメガ! 非戦闘員は緊急避難プロトコルB7Rに従い避難せよ!』
本部内ではBCOとシャドウ・リーパーの戦闘が繰り広げられていた。BCOは国から捨てられ、
BCO本部は
「コード・オメガだって?!」
ハワードはアナウンスを聞くや
「一体どうなってんだよ! クソが!」
コード・オメガはBCOが国から見捨てられたことを表す非常事態コードだ。それも〝国家の
ハワードはUCGを着用し、情報を収集する。
「相手はシャドウ・リーパーか。最悪の状況だな。サム、お前の身に何があったんだ」
汚れ仕事を専門とするシャドウ・リーパーが派遣されたということは、BCO関係者の皆殺しは確定事項だ。
「皆の援護に行かないと」
「ん?」
UCGに表示された情報に目を通す。これは国連軍総司令部から各国政府、
《緊急 アルヴェーン
先ほど、総司令官
この非常事態に対して、アルヴェーン
「アルヴェーン
さらに、オヴニルを名乗る者からBCOへ別の情報が送信されていた。次の内容はアメリカ国内組織へ送信された緊急暗号通信である。
《大統領V2を発令》
本日、13時48分、大統領命令〝V2〟が発令された。BCOの全権は停止され、軍よるBCO
「あまりにも話が出来過ぎている」
中央棟一階の作戦本部に到着したハワードは作戦指揮を行っているレイモンド局長に話しかけた。
「局長、状況は?」
「ハワードか。無事でよかった。相手はシャドウ・リーパーだ。戦況としては非常に厳しい。やむを
「情報を我々に提供したオヴニルは一体何者なんですか? 敵の可能性は?」
その質問に対し、局長は即答した。
「敵ではない。心配するな。それにこの名前に関してはモータル・シークレットだ。忘れたまえ」
「分かりました」
局長からモータル・シークレットという単語が出てきたため、ハワードは
「V2発令のためどこに連絡しても意味はない。協力してくれる組織は
「せめて、我々のデータが外部に伝われば……」
「ああ。それがせめてもの願いだ」
シャドウ・リーパーの制圧は
アインスと彼の部下は作戦本部手前の防衛部隊と交戦していた。事実上のBCO最終防衛線だが、抵抗はほぼ
防衛部隊を排除すると、シャドウ・リーパーの隊員は入り口を閉じている最終防壁の爆破作業へ移る。彼らは突入用爆薬のBP3を用意し、防壁へ張り付けていた。
「この先が作戦本部だ。爆破後、アルファ分隊が突入、ブラボー分隊はバックアップにつけ。最重要ターゲットはレイモンド局長とマスターキーパー・クルツの二名」
アインスが突入命令を出そうとしたその瞬間、部下から通信が入った。
『シャドウ・リーダー、こちらシャドウ4! シールズと接敵、交戦中!』
BCO本部の外を
「シールズだと? どういうことだ?」
今や特殊作戦軍の全権は国連軍総司令部が有している。海軍特殊部隊である
『それが! うっ……』
ここで通信が途切れた。
「シャドウ3、シャドウ2はシールズを相手にしろ。チャーリー分隊は後方
防弾盾を構えたアルファ分隊が前衛を
「突入!」
アルファ分隊員がBP3を爆破し、防壁に大きな穴を開けた。続いてN3特殊
BCO本部を包囲しているシャドウ・リーパー第一中隊第四小隊。彼らは
「なぜ海軍が?」
第四小隊長、コールサイン〝シャドウ4〟は海軍突然の
「どうやら特殊部隊のようだな。だが、アクセス拒否とはどういうことだ」
特殊部隊の中には確かに極秘部隊も存在するが、シャドウ・リーパー隊員でもアクセスできないというのは今まで存在しなかった。そのため、シャドウ4は
「シャドウ・リーダー、こちらシャドウ4。接近する海軍部隊の反応有り。詳細は不明。どうしますか?」
『そのまま様子を見ろ。万が一、
「ラジャー」
周辺の道路は陸軍による交通規制が
だが、その予想は大きく外れた。
海軍の車両は陸軍による制止を受けることなく進行。このことに関し、陸軍からシャドウ・リーパーへの連絡は何もない。おまけに車両はすぐ目の前まで来ていた。
「止まれ! この先への
シャドウ4の部下達は銃を構え、海軍部隊を
そんな中、先頭のUAT‐30の上部ハッチが開き、一人の水兵がシャドウ4の前に降りてきた。
「私はヘカティア・ブリューゲル中佐。ネイビーシールズ・チーム0の指揮官だ」
顔は
(チーム0だと……そのような部隊は
シャドウ・リーパーはあらゆる極秘部隊の存在を知っている。そしてシールズに極秘部隊があるのは知っていたが、まさか永久欠番
「中佐、情報の開示を願います」
「そちらにアクセスコード
《アクセスコード:29eaFU4ri8》
《機密情報ナンバー:N0000‐0NN‐00》
《タイムパス:50aPn5d1R》
シャドウ4は
〈アクセス承認〉
《アメリカ海軍
指揮官:ヘカティア・ブリューゲル中佐
所属:Navy SEALs, アメリカ海軍特殊戦コマンド(特殊作戦軍)
標語:WE'RE NOWHERE, EVERYWHERE
誕生:想定外の国家危機に即応する〈ワイルドファイア〉計画に
状態:現在、大統領命令〝XYZ〟に従い、オペレーション・ワイルドファイアを
以下、アクセス拒否。
(
シャドウ4は少なくとも大統領が統合
「中佐殿、V2が発令されています。この先はお通しできません」
「そんなことは知っている」
「ではお引き取りを」
「我々にはXYZが発令されている。まさかこの命令コードを貴隊が知らないわけあるまい」
極秘命令コード〝XYZ〟
・この命令は想定外の国家的あるいは世界的危機に直面した場合のみ、合衆国大統領の名の
・この命令は担当部隊に対し、危機打開のため必要なあらゆる超法規的権限を認める。ただし、この命令を利用して合衆国憲法の改正、司法機関、立法機関、行政機関の私物化
・大統領は事態収拾後に命令の必要性を
・この命令が発令された場合、合衆国軍、インテリジェンス・コミュニティー、全ての警察機関
・事後、発令に関する全ての記録
「……上官に話を通しますので、少々お待ちください」
そう言いつつも、シャドウ4はシールズを通すつもりは
UAT‐30は八輪式軽戦闘装甲車両であり、車体上部には対人用機銃MG‐322一門と対歩兵・対車両用可変型機関砲MA‐44B一門を
「こちらシャドウ4。各車両長へ。砲撃準備。合図で砲撃開始」
この命令を受けてシャドウ・リーパーの各UAT‐30はMA‐44Bの砲弾を装填。さすがに砲塔を回転させるという露骨なことはしなかったが、シャドウ4の合図で砲撃する用意は整った。また、第四小隊員達も小隊長の意向をくみ、いつでも零達へ銃を撃つ心構えをしていた。
しかし、シャドウ4は相手を甘く見過ぎていた。
零から超高周波ダガーナイフが二本、左右の手から放たれ、シャドウ・リーパー隊員二名の胸部に命中。刃は戦闘スーツを貫通し、心臓まで届いていた。
さらに零はいつの間にかCQN‐8Fを二丁持ちしており、自分へ銃を向けていたシャドウ・リーパー隊員をなぎ払うように次々と頭を射抜いていった。
それを合図にシャドウ・リーパーのUAT‐30六台全てが爆散。第五世代光学迷彩で隠れていたシャドウ・リーパー隊員も、同じく第五世代光学迷彩で隠れていたシールズ隊員によって射殺されていく。まるで最初からそこにいることが分かっていたかのような正確さだ。
「シャドウ・リーダー、こちらシャドウ4! シールズと接敵、交戦中!」
『シールズだと? どういうことだ?』
「それが! うっ……」
シャドウ4の頭部を零が撃ち抜いた。
「これよりBCO職員の救出
光学迷彩を解いたシールズ隊員。やはり彼らの正体は零課員だった。
「おいおい隊長、あれだけ派手にやっておいて今度は生け捕りか?」
一はMK‐54Fのマガジンを交換し、次の戦闘に備える。
「そうだ」
チーム0のスペクター小隊第一分隊は零、直樹、珠子、由恵の四名。第二分隊は一、響、ブライアン、進、健の五名で構成されている。彼らの最優先任務はBCO職員の救出。副次任務としては国連軍、ブラックレインボー、特殊作戦軍の
空にはスフルとビルが飛び、超高感度広域ファジースキャンを実施していた。この二体のクロウは敵の第五世代光学迷彩を見破るために
《SEALチーム0 スペクター小隊》
〈第一分隊〉
・
偽名:ヘカティア・ブリューゲル
コールサイン:スペクター・ゼロ
コードネーム:オヴニル
・
偽名:ヴィンセント・マーティン
コールサイン:スペクター・ツー
コードネーム:アーネスト
・
偽名:ナスターシャ・フラックス
コールサイン:スペクター・スリー
コードネーム:クーガー
・
偽名:ベアトリクス・クロフト
コールサイン:スペクター・フォー
コードネーム:ドクター
〈第二分隊〉
・
偽名:アレックス・マクレーン
コールサイン:スペクター・ワン
コードネーム:トワイライト
・
偽名:エイジス・フォッカー
コールサイン:スペクター・ファイブ
コードネーム:スケアクロウ
・
偽名:ジョン・ライバック
コールサイン:スペクター・シックス
コードネーム:アーチャー
・
偽名:ピーター・ランボー
コールサイン:スペクター・セブン
コードネーム:ギーク
・
偽名:アルヴィン・バウアー
コールサイン:スペクター・エイト
コードネーム:ソーズマン
「ドクター、こいつらを手当してやれ。アーネスト、クーガー、そちらの状況は?」
『こちらA棟二階クリア。二階はオールクリア』
「よし。トワイライト、そっちはどうだ?」
『そうだな。三階でちょっとしたトラブルだ。防衛用セントリーガンが起動している。だが問題ない。オヴニル、お前の方はどうなんだ?』
「セントラルゲートを突破した。これよりセントラルホールを強襲する」
足元にはシャドウ・リーパー第一小隊デルタ分隊六名が倒れていた。全員が動けない程に痛めつけられていたが、
『おい、一人でか』
「そうだ。時間がない」
零は両方の
侵入者を確認したシャドウ・リーパー第一小隊チャーリー分隊は二人の隊員だけが射撃を開始。他の隊員は銃を構えているものの、すぐに撃たなかった。これはシャドウ・リーパーが同一の標的に対し、必要以上の攻撃はしないという戦闘規則を
だが今回に限っていえばシャドウ・リーパーの自信と戦術は彼ら自身を大きく苦しめていた。シャドウ・リーパーの戦術は彼らが圧倒的優位であることを前提としたものであり、彼らを上回る相手との戦闘はそもそも想定されていない。彼らシャドウ・リーパーを超える人間部隊など存在せず、シャドウ・リーパーで手に負えない相手はクイーンが相手にすることになっていたからだ。
零の存在を一言で表すと〈超人〉。人を超える者。肉体こそ人間という
(あれがアイリーンか!?)
チャーリー分隊は戦術を変更し、全員での応戦態勢へ移行。彼らもまた人間離れした反応速度で反撃を開始した。それでも零は止まらない。
シャドウ・リーパーの
だが零の
「お前達には色々と聞きたいことがある。嫌でも話してもらうぞ。こちらオヴニル。セントラルホールはクリア。ドクター、後で
『了解』
「スペクター・ゼロから各員、私はこのまま作戦本部へ向かう。アーネスト、クーガー両名はセントラルホールを封鎖せよ」
〈BCO本部中央棟 作戦本部〉
最終防壁が爆発し、N3特殊
しかしシャドウ・リーパーの突入は思ったようにいかなかった。BCOの戦闘員達は
「足元に気を付けろ。複数個所にトラップだ。無駄なことを」
アインスはBCOの
「隊長! 後方から生体反応! さらにチャーリー分隊が全滅!」
「シールズか。生体反応1。何者だ。ブラボー分隊、
シールズが追ってきているのは知っていたが、予想以上の早さだ。シャドウ・リーパーがここまで被害を受けたのは初めてである。
セントラルホールを突破してきた零を見て、アインスはスペード・キングからの報告を思い出した。
「あの女は……アイリーン! アイリーンだ! 撃て!」
アイリーンの恐ろしさはデータから理解している。彼女は
(サイファーめ! ここでも
ここでアインスはシールズの正体がサイファー(零課)であることに気が付いた。必死の抵抗にも関わらず、ブラボー分隊は
零は相手の武器を手で払いのけ、回転しそのまま首元へ手刀を入れた。さらに隣の隊員による右ストレートを受け流し、その右腕へ勢いよく左
零に関する戦闘データはあまりにも膨大であり、油断ならない。一手一手が相手を確実に追い詰める。誰もが使える格闘術だけでなく、道具や現場にあるものを利用しての機転。零という存在をアインスが消化するには時間が無さ過ぎた。
ブラボー分隊員四人目、五人目は同時に無力化され、最後の六人目が間もなく倒された。
「お前がグレイか。我々と来てもらうぞ」
「それは無理だな。お前達もBCOも全て始末する。我々は任務を
ここで零が不敵な笑みを浮かべる。
「ああ、もしかしてミストのこと?」
「なにっ……」
「悪いけど仕掛けていたミストは全部こちらで回収済み。散布できないから。それとこれは我々からのお返しだ」
零は一気にアインスへ詰め寄り、アインスの反撃を難なく避けた。彼を締め上げて地面へ
「
彼を守っているはずの戦闘スーツは右腕の一部が切られている。
「おい、まさかそれは……」
零の左手には
「心配するな。ちゃんと完成させている」
注射銃の中身は
「ベースにしたのはお前達が開発していたブレインシェイカーD3型。洗脳に特化したモデルだ。念のため言っておくが、お前達のアンチ・ブレインシェイカーは効かない」
零課は由恵とケナンによって、ブレインシェイカーの試作モデルを完成させていた。それだけではない。ブラックレインボーが開発した
「グレイ、知っている限りでいい。ブラックレインボー幹部達のデータを全て渡せ」
「はい」
先ほどまで敵だったグレイは
《ブラックレインボー幹部》
〈指導者〉
ニンバス・アルヴェーン(
〈最高幹部〉
アルベド・マイオス(ジョーカー)
エマーソン・ブラウン(スペードK)
ミラー・レッドフィールド(クラブK)
タルゴ・ブルーウェル(ダイヤK)
イリーナ・ヴァイオレット(ハートK)
ソール(スペードQ)
シヴ(クラブQ)
ラーン(ダイヤQ)
イズン(ハートQ)
〈上級幹部〉
ウィリアム・ヴェローナ(スペードJ)
リサ・シュベーフェル(クラブJ)
ディーペル・シーモス(ダイヤJ)
アレックス・アンバー(ハートJ)
*K=キング、Q=クイーン、J=ジャック
ここでエマーソン・ブラウンの名前が目に入った。彼はアメリカ軍特殊部隊を
(スペードのキングはやはり特殊作戦軍にいたか)
知りたい情報を手に入れた零は零課員へ情報を共有。その後、軍のオープンチャンネルを開き、BCOとシャドウ・リーパーの両者へ無線を聞こえるようにした。
「こちらネイビーシールズ・チーム0のオヴニル。第6特殊作戦群へ
もはや状況打開の手段を持たない第一小隊アルファ分隊は零の
「シールズ・チーム0? それにオヴニルと言ったか?」
ハワードは武装解除したアルファ分隊を見て
「皆、銃を下ろせ。彼らは味方だ」
BCO局長レイモンドがすぐに部下へ伝える。
「どうやら間に合ったようだな。こちらオヴニル、BCO作戦本部に到達。
『こちらトワイライト。オールクリア』
『こちらドクター。全ての
「了解。トワイライト、
『トワイライト、了解した』
「さて、BCOの皆さん。改めて自己紹介を。我々は海軍特殊部隊
「大統領は本当に味方なのか? V2を発令したんだぞ?」
ハワードがそういうのももっともだ。BCO
「結論からいうと味方です。ブラックレインボーの息がかかった者達は政府
零課の想定内だったが、世界各国に散らばるシャドウ・リーパーは武装解除を行わなかった。なぜならブラックレインボーのレクイエム計画を遂行するにあたり、アメリカ
『オヴニル、こちらトワイライト。ブルーバード2、ブルーバード3が
「了解。皆さん、ここから退避しますよ。ブラックレインボーが
「オヴニル、我々はどこに連れていかれるんだ?」
ハワードは零に尋ねた。
「それは言えません。そして
この言葉で零の奥底に秘められた
零課はシャドウ・リーパーからBCOを救ったが、もちろん零課は零課として別の仕事も
「
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