王太子妃なのに冤罪で流刑にされました 〜わたくしは流刑地で幸せを掴みますが、あなた方のことは許しません〜

超高校級の小説家

第1話

わたくしはベアトリス・テレーズ・マリアライト。

トルマリン王国のマリアライト侯爵家に生まれました。

今年で16歳になります。


マリアライト侯爵家はトルマリン王国の中央山脈の大半を領有しており、そこから採掘される様々な宝石の採掘権で莫大な資産を保有しています。


トルマリン王国ではここ10年程の間に地方貴族による反乱が何度かあり、今は落ち着いていますが鎮圧やその後の政情不安のため財政難に陥っていました。


そこに目を付けたわたくしのお父様、マリアライト侯爵は、財政支援と引き換えに長女のわたくしを第一王子と婚約させ、自身は公爵の爵位を授かりました。


順調に話は進み、わたくしはベアトリス・テレーズ・マリアライト・トルマリンと名前が長くなり、王太子妃になりました。


わたくしも貴族の娘に生まれたからにはロイヤル・プリンセスとなることは最高の栄誉と思って生きてきました。ですので、このような政略結婚ではありますが、自分が置かれた状況には満足しています。


そんなわたくしは今現在、自室で午後のティータイムを楽しんでいます。


婚約が決まってからは大変忙しく、元から容姿には気を使ってはいましたが身体中のお手入れからドレスの採寸、装飾品の選定、両家の顔合わせやら新居となる王城の自室に入る家具や道具の選定やらでいろいろと連れ回されました。


2週間ほど前に王城に輿入れして婚礼の儀と披露式典を終えて初夜を迎えて、ようやく息をつけるようになりました。


側にはどこかの子爵令嬢や男爵令嬢でしたでしょうか、侍女が数名待機していて、わたくしの身の回りの世話を全てしてくれます。


今もわたくしのカップが空になると紅茶を注いでくれました。


「今日の紅茶は一段と美味しいわ」

「お気に召していただき何よりです。本日は王太子妃殿下のご出身のマリアライト公爵領から取り寄せた最高級の茶葉を使わせていただきました」

「まあ、マリアライトの茶葉でしたの。口に合うのも道理ですわね」

「流石は王太子妃様のご出身地だけあって、マリアライトのものは上質なものが多くございます」


実際にお父様が湯水のようにある資金で様々な事業をしているとはいえ、鉱山地帯であるマリアライトの茶葉はそこまで上質ではありません。ですが、このようによく持ち上げてくださいます。


充分に喉も潤ったのでティーセットを下げてもらい、窓際のソファで読書を始めました。


最近王国で流行りの純愛物語がわたくしのお気に入りで、もう何度読み返したか覚えていないくらいです。


わたくしは所謂「箱入り」でしたので、幼い頃から侯爵令嬢としての作法や教養を家庭教師から教わるくらいで外に出たことはなく、恋愛などしたことがありませんでした。


王太子様とも政略結婚ですので、この本に書かれているような胸が熱くなるような恋愛とは無縁です。


ふと王太子様のことを思い出して、胸が少し痛くなりました。


私の旦那様であるトルマリン王国第一王子アルフレッド・ヨハネス・トルマリン様は世紀の美青年ではありませんが、いつも笑顔を絶やさないとても優しそうな方です。


初夜の時、それまでにこやかな笑みを絶やさなかった王太子様が、凄く怖い目をしながらわたくしの身体を乱暴に触るので、ただでさえそのようなことに慣れていなかった私の身体は王太子様を受け入れることができなかったのです。


それ以来、王太子様とは公式な場所以外では顔を合わせていませんでした。お会いした時はにこやかな笑みを向けてくださいます。


わたくしも次は覚悟を決めていますが、王太子様は会いに来てくださいません。あの一夜で怒らせてしまったのでしょうか。


こちらから押しかけるなんてはしたないことが出来るわけはないので、誰にも相談できず悩んでいます。

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