【続編あり】「センパイ、振り向いてください!!」

ひよこ🐣

「センパイ、受け取ってください!」


「センパイ、大好きです♡」


今日も今日とて大好きなセンパイに愛の告白をする。

今日は上手くいくハズだ。なぜならコテで緩く巻いた髪。いつも朝は調子が悪い二重もパッチリとしている。唇の乾燥も淡いピンクのリップで保湿済み。爪はトップコートを塗ってツルツル。そして何より新しく買ったカーディガン。全てが完璧だからである。


「おはようございます、結城(ユウキ)さん」


しかしそれでも靡かないのがこの男。長瀬 永一(ナガセ エイイチ)センパイだ。いつも通りのにこやかとした笑みがかっこい……じゃなくて憎たらしい。

いつかその笑みを崩して真っ赤にさせ、告白をさせてやりたいものである。


「おはようございます、センパイ。…あの、今日の私…何か違うんです。分かりますか?」


スタスタと私の事など気にしない速度で歩くセンパイの横を必死に死守しながら私はそう聞く。センパイの足は長くて歩幅が大きいから大変である。


「さぁ? いつも通り僕の家で待ち伏せしていた事以外は分かりませんね」


「ふふふ。実は新しくカーディガンを買ったんです! どうです? 可愛いでしょう?」


私はそう言ってバッ、と両手を開いてみせる。そんな私の事など見ずにセンパイは「あぁ。そうですね。可愛いですね」なんて言う。


「ちょ…っ。センパイ、見てないですよね?」


「見てます見てます。素敵なヒョウ柄ですね」


「無地です…」


「あぁ、失礼。でも白いと汚れが目立ちませんか?」


「センパイ…キャメル色です…」


「キャメル…? ラクダですか?」


「色の話です」


ダメだ、この人全然話しを聞いていない。

そんな事を思いながら私は軽くため息を吐く。こんな話のレベルじゃセンパイ、気づいてくれないだろうな…と思いながら私はスクールバッグについているクマのキーホルダーを見る。


このキーホルダーは淡いピンク色がベースになっているクマのぬいぐるみを自分で一から作ったものだ。そしてスクールバッグの中には淡い水色で作った同じものがある。

言わずもがな、センパイの分である。

本当は昨日まで付いていなかったクマのキーホルダーに気づいてくれたらその話の流れでプレゼントしたかったがこの調子じゃ気づいてくれていないだろう。


───無駄になっちゃったな


そんな事を思いながら私はまた小さくため息を吐いた。


「───何か、あるんでしょう?」


「………へ?」


「僕に言う事、あるのでしょう?」


センパイはそう言うと立ち止まった私の数歩先で止まり、こちらを向いて再度そう言い直した。


「え…、なんでですか…?」


本当にその通りで私は少し慌てる。まさか、心を読まれた?まさか。心を読めるなんて事が出来るのは漫画やアニメの中だけだ。

ドッドッ、と高鳴る心臓をなんとか抑えつつ、私はセンパイの次の言葉を待つ。


「視線がずっとスクールバッグに向いていましたよ。大方、僕に渡したい物でもあるんですかね」


「セ、センパイぃ…っ」


「はい。なんですか?」


にこやかに笑うセンパイに私はスクールバッグから取り出した綺麗にラッピングしているお揃いのキーホルダーを見せる。


「お揃いなんです!受け取ってください!!」


「拒否します」


「ゑ」



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