第69話 女子力
翌日、朝から体育があったせいで、ナベシャツを着て学校へ。
軽い息苦しさを感じつつも、更衣室で着替えようとしていると、早苗が近寄り「昨日の着けてきた?」と切り出してきた。
「体育あるから着けてないよ?」
平然と答えると、早苗は大きくため息をついた後、「明日は絶対に着けてきなさい!」と軽く怒られてしまった。
体育の授業を終え、早苗と美奈の3人で歩いていると、目の前を1年の女の子が大きな段ボールを押しながら歩いている。
急ぎ足でその子を追いかけ、段ボールを持った後「教室?」と聞くと、その子は「え? あ、大丈夫です!」と声を上げていた。
「ついでだからいいよ。 どこ持ってくの?」
「…1-A …です」
黙ったまま1-Aの教室へ行った後、自分の教室に戻ると、早苗が「あれは男子力!!」と、語尾を強めて言ってきた。
昼休みになり、ボクシング場へは行かず、早苗と美奈の3人でクラスの女の子を観察してると、隣のクラスの女の子が、うちのクラスの男子生徒に近づき「お弁当、作ってきたよ~」と切り出した。
男子生徒は「おお! マジで!?」と歓喜の声を上げ、イチャイチャしながら二人で教室を後に。
『手作り弁当か… 女子力高いなぁ…』
そうは思っても、料理なんかしたことがない。
小さい時から、料理は母さんかおばあちゃんがしてくれたし、母さんがいないときは、カズ兄がしてくれたから、料理とは完全無縁。
『うん。 弁当は無理だ』
考える余地もなく、すぐに諦め、早苗と美奈の3人で話していた。
放課後。
更衣室で着替えた後、ボクシング場へ行こうとすると、谷垣さんが「スポーツドリンク、貰ったから持って行ってくれ」と切り出してきた。
仕方なく、言われた場所に行ったんだけど、500ミリのスポーツドリンクが1ケース置いてあった。
『500×24本だから、全体で13キロくらいかな? いつも運んでるし余裕』
そう思っていると、背後から「どうした?」という奏介の声が聞こえてきた。
声に振り返り、奏介の顔を見た瞬間、早苗の言葉を思い出し『これだ!』と閃いた。
「これ、谷垣さんが3階に持って行けって」
「持ってけば?」
「…重くない?」
「だから? それくらい余裕で持てるだろ?」
「…そうっすね」
ため息交じりにそう言うと、奏介はハッとした表情の後「お前まさか… 故障したのか? 肘? 膝? どこ?」と言いながら、人の腕をベタベタ触ってくる。
「故障じゃないっつーの!」
奏介の手を振り払った後、スポーツドリンクを肩に担ぎ、不貞腐れながら階段を駆け上がった。
スポーツドリンクをボクシング場の隅に置いた後、すぐに更衣室へ向かおうとすると、奏介が「何キレてんの?」と切り出してきた。
その言葉にイラっとし「キレてない。 やっぱサボる」とだけ言った後、勢いよく更衣室に駆け出していた。
『どうしてうまくいかないかな…』
大きくため息をつきながら制服に着替え、おじいちゃんの家に向かっていた。
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