光の中へ

のの

第1話 朝日

《pipipipi pipipipi pipipipi》


枕元で鳴るアラームに手を伸ばし、音を消してすぐに力尽きる。



《pipipipi pipipipi pipipipi》


5分後、再度、アラームが鳴り響く。


布団から手だけを出し、手探りでスマホを探していたけど、どこにあるかわからず、『ゴト』っと、何かが落ちる音が聞こえた。


ゆっくりと布団から顔を出し、焦点の合わない目でスマホを探す。


何も考えず、ゆっくりとスマホを拾い上げると、徐々に焦点があっていき、液晶画面が視界に飛び込む。


【4:08】


「やば!!」


思わず声を上げながら飛び起き、外の天気を確認する。


『今日も晴れか』


急いでパジャマ代わりのジャージから、トレーニング用のジャージに着替える。


シーンと静まり返った家の中、1階に駆け下り、ササっと顔だけ洗った後、スポーツドリンクを一気飲み。


スポーツドリンクを飲みほした後、玄関に行き、ランニングシューズをしっかりと締め付けるように履いた後、玄関を飛び出す。


小さな庭に座り込み、全身の筋という筋を伸ばすようにストレッチを開始。


特に、膝周りを重点的に伸ばしていると、父さんが歩み寄り「行けるか?」と切り出してきた。


黙ったまま頷いた後、フードを被り、ゆっくりと駆け出す。


「スピード上げろ」


自転車に乗っている父さんにそう言われ、走るスピードを上げる。


自転車に乗り、ヤジを飛ばしてくる父さんの声に耳も傾けず、黙ったまま走り続けていた。


土手沿いに出ると同時に、ゆっくりと朝日が昇り、朝日が水面に反射して、キラキラと光の粒を放ちながら、朝日の中に溶け込んでいく。



光の粒と競争をするように走り続けていると、自転車に乗っている父さんが「横!」と声をかけ、横向きに走り始める。


「後ろ!」


その声を合図に、後ろ向きに走り出すと、今度は「横!」と声をかけられ、横向きに走り始める。


「ダッシュ!」


声に反応するように、勢いよく駆け出すと、朝日はどんどん大きくなり、辺りを赤く染め上げる。



晴れた朝は毎日見ている光景なんだけど、何度見ても飽きないし、この景色を見るために、ロードワークをしているといっても過言ではない。


土手沿いを走り抜け、【中田ジム】と書いてある、ボロボロになった看板を駆け抜け、その隣にある自宅に向かって一直線。



自宅の庭につくと同時にしゃがみ込み、乱れ切った呼吸を整えていた。


父さんはストップウォッチを見て「ん~」と唸り声をあげた後「42分。 10キロくらい40分切れよ」と不満そうな口調で話す。


「無理…」


呼吸を整えながらそれだけ言うと、父さんは不満そうな顔で唸った後「そんなんじゃベルト狙えねーぞ?」と切り出してきた。


「狙ってない」


「狙えよ。 素質あるんだし」


「いやだ」


「高2病ってやつか?」


「まだ高1」


「まぁいいや。 ちー、遅刻すんなよ」


父さんはそれだけ言うと、家の中に入ろうとしている。


毎朝繰り返される会話にため息をつき、家の中に入っていく背中を眺めていた。


『絶対忘れてるよな… 女だってこと… 現役時代、殴られすぎてボケたんだな』


小さくため息をついた後、筋トレを開始していた。

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