第6話 ~その名はロケットパンチ!?~
「《ドライブフィスト》の使用を確認! 目標に着弾!」
オペレーターが叫んだ。
おおー、という喝采がそこかしこから沸く。
「ええい関係の無いヤツは黙れ! 効果は!?」
京香が叫び返す。全員がインカムで繋がっているため、小さな「おおー」でさえ何人分も重なれば騒々しいことこのうえない。
「目標、顔面に直撃。怯みましたが……健在!」
別のオペレーターが答えた。
「ダメージは軽微の模様!」
「なに!? テストでは五メートルの鉄板ですら易々とブチ抜いたのだぞ!?」
「目標は見た目以上に強固なようですな」
参謀が言った。
「京香さん」
そこに、技術主任の声が割り込んできた。
「映像で見る限りですが、ドライブフィストのバックファイアが、テスト時よりも小さいようです」
「どういうことだ?」
「出撃前のチェックで問題はありませんでした。アーバロンが自分で制御したのかと……」
「手加減をしたというのか!? 怪獣に!」
「いえ、怪獣にというよりは多分……」
怪獣が起き上がった。
それを狙っていたかのように、アーバロンが走った。
ズン、とアスファルトの大地を沈ませ、ひと蹴りで怪獣の懐に飛び込む。
そして正面からがっぷりと組み付いた。
同時に、背中のスラスターが唸りを上げる。
「うわッ」
突風のような気流に、快晴は煽られそうになる。
だが浮き上がったのは快晴ではなく、ロボットと怪獣だった。
巨体を抱きかかえたまま、アーバロンは低空飛行を始めた。
「今度は何をやっているんだ!?」
今日だけで何回目かも分からない京香の叫びである。
司令官という肩書きが虚しくなるほど、アーバロンの動きに翻弄されっぱなしだ。
「搭載された兵器を使えば、即座に殲滅することも可能なはず。しかし相手の能力も未知数の状態で、あえてそれを放棄し、危険な接近戦を取った」
形梨参謀の独り言が、司令の思考を的確に代弁する。
だがその次の言葉は、参謀独自の見解だった
「戦場を移す気では?」
「この状況でか! まさか、あの逃げ遅れた民間人のために!?」
「あり得ますな。さきほどの手加減同様……」
「あの民間人に危害を加えぬためか!」
「アーバロンが人命を最優先しているのなら、周囲への被害を考慮して、高火力兵器の使用を控えるのも当然かと」
「く……ッ! だが、これではアーバロン自身へのリスクが大きすぎるぞッ!」
人命第一。その姿勢は、人類の平和を守る兵器として申し分ない、と京香も思う。
だが、守るからには勝たねばならない。そして勝つからには、敗北に繋がる要因を増やしてはならない。
アーバロンは、それをやってしまっているのだ。
そして、司令の危惧は現実のものとなった。
「アーバロン、背部に被弾!」
「尻尾です! 怪獣が尻尾を使いました!」
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