第4話 彼が急に私の家に来た件
「その前に、聞いておきたいんですが。先輩は、今、好きな人がいますよね?」
答えはわかっているけど、確認のための問い。
「あ、ああ。いるけど。なんでお前、それを……」
疑問顔の真先輩。
「そんな事はいいんです。先輩は今、好きな人はいますか?」
その事をはっきりさせておかないと私は前に進めない。
「あ、ああ。いるよ。未だに、告白も出来てないけどな……」
なんだか照れくさそうな表情をする先輩。そんな、顔をさせる人が私以外にいると思うと、とても悔しい。ああ、私って独占欲が強いんだ。
でも、先輩がまた告白していないのなら、私にだってチャンスはある。即決即断。先輩の真似みたいだけど、先輩が想い人に告白する前に、私の気持ちをぶつけてやるのだ。
「はっきり言います。私は真先輩のことがずっと好きでした。きっと、先輩が転校するあの時より前から。でも、先輩は他の人のことが好きだって。そう聞いて、居ても立っても居られなくなって、告白することにしました」
一息でそれだけを言う。
「……」
それを聞いた先輩は絶句しているようだった。それも、当然か。友人と思っていた後輩からいきなり愛の告白を受けたんだから。
「先輩が他の人のことを好きなのを止めることは出来ません。でも、でも、もし、可能なら、私の事も見てもらえませんか?」
言った声は震えていた。きっと、先輩の恋を応援するなら潔く身を引くべきだったんだろう。でも、私がこの4年間、電車で1時間の距離をものともせず、先輩と想い出を積み重ねてきたのだって、伊達や酔狂でやってきたわけじゃない。おとなしく、身を引くなんて綺麗なことをするつもりはない。
「……えーと、まずは、ありがとな」
そう言った先輩は、予想していたのと全く違った表情をしていた。気のない相手に告白されて困った感じじゃなくて、とても嬉しそうで照れくさそうで。そして、幸せそうだった。
「ただ、一つ勘違いしてるぞ。俺が好きなのは、澄、お前ただ一人だ。俺が臆病だったせいで、澄に先に言わせてしまってごめんな」
え?好き?先輩が、私を?嬉しいはずなのに、信じきれていない私が居る。
「だって、先輩は、大学生のお姉さんが好きって、そう……」
「ああ、
なんだか苦虫を噛み潰したような顔する先輩。どういうこと?
「なあ、先に答え合わせなんだけど、渡瀬さんから、俺が澄に脈ありかどうかとか聞いてあげるとかお節介なこと言われなかったか?」
なんで、それを先輩が知ってるんだろう。
「は、はい。確かにそれはそうですが……」
「それが全ての原因だよ。俺も渡瀬さんから聞いたんだけど……」
といって、先輩はことのあらましを話してくれた。
「先輩が、ごまかさずに素直に答えてくれてれば良かったのに……」
逆恨みだとわかっているけど、ついそんな愚痴が漏れる。
「だって、同小かとか聞かれたら、相手がバレるだろ?それに、渡瀬の意図もわからないのに、簡単に言えないって」
先輩の言い分もわかるけど、それでこんな話がややこしくなったとは。
「わかりました。その辺は置いといて、改めていいます」
と一息おいて、続けた。
「私、
さっきは、破れかぶれの告白。そして、今は、想いが届いてしまうことがわかっているからこその、どこか気恥ずかしい告白。
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