第23話 シメオン王子のお仕置き
レザントル王国第二王子シメオン・ジェラール・ハッシャー。17歳。そして見目麗しい兄さんに似た顔に肩までのサラサラの髪。もちろん私はモテる。
そして他人のものを取るのが大好きだ!!正しくは横取り。昔から兄さんの持っているお気に入りのぬいぐるみも欲しいと強請るとすぐくれたし両親も可愛がって何でも与えてくれた。
同じ歳くらいの宰相の息子のジェバンニ・ジョエル・ファーガソンに好きな令嬢が出来たとこっそり打ち明けられた。ジェバンニと私は親友と言っていいほどの仲であったがジェバンニは私といるとその好きなシャーロット・ボーモンド伯爵令嬢の話を頰を染めて延々と惚気出すのにいい加減鬱陶しくなった。
そして僕は思いついた。シャーロット嬢を私の婚約者候補にして口説き落としてみよう。と。出来心であった。
そして彼女を多くの婚約者候補の中に混ぜて王宮に呼び出した。当然ジェバンニは私がシャーロットを選ばないことを信じていた。ただ単に適当な年頃の令嬢を候補として集めているだけと彼に伝えて安心させておき、当日僕はシャーロット嬢をこっそり秘密の隠れ家へと連れて行き、甘い言葉で陥落させ、キスまでしてやった。
シャーロットは途端に私に夢中になりジェバンニを放置するようになった。ジェバンニもようやく気付いて青くなった。しかし私に手を出さない。何故なら王子だしね!!出せるわけがない!!惨めに顔を歪ませるジェバンニと恍惚になるシャーロットを眺めて内心笑いが止まらない。
ジェバンニが少し引き籠るようになると反応が見れなくなりつまらなくなったからあっさりとシャーロットを捨てて別の婚約者のいる令嬢をまた口説き落として奪うという私の趣味が始まった。なんと楽しいのか!!想い合う男女の仲を引き裂き遊んで捨てる!!
堪らん!快感だ!これ以上の快楽はない!!
そんな中、私は時折兄さんに呼ばれてやってくる公爵の娘のアマーリア・カーヤ・フローベルガー嬢とお茶してるのを見かける。幼い頃から婚約関係にある二人だが、そこに愛はないと私は悟った。
あれはただの友達である。スキンシップ皆無の婚約者同士などおかしいし、兄さんはアマーリアの手にキスする時は社交辞令の人前でダンスを踊る時のみだった。しかもめちゃくちゃ無関心で営業スマイルさえ浮かべている。兄弟なので判る。
アマーリア嬢も大して兄さんに興味はない。
そしてある日を境に噂が流れ出した。
アマーリア嬢とその義弟の関係。兄さんは誰か他に好きな女性がいるらしくポヤーとしていることが多くなった。
そしてアマーリア嬢と兄さんは程なくして婚約を破棄し、アマーリア嬢は義弟と婚約関係にあるとひっそり知った。ほほお!!義弟との恋なんて!なんてゾクゾクするな!!
「ああああっ!ああいういけない関係で結ばれてる二人の仲をぶっ壊してやりたいなあああ!!」
そして新たに兄さんの婚約者となったエレオノーラ嬢。とても美人で胸もあり、兄さん好みだ。ちょっと挨拶にと行くと兄さんは私を呼び出し、エレオノーラ嬢から見えない所で物凄いにこにこと綺麗な顔で笑いながら私の首を本気で締め上げた。
「シメオン…エレオノーラだけはダメだからな?」
「苦しい!何の話ですか!?」
「お前がよく知ってるだろう?欲張りカラスめ!いいか?エレオノーラを見たら目を潰す。エレオノーラに触ったら手をぶった斬る!最後にそこも斬り落とし死んでもらう」
と恐ろしい声でにこにこ言った。兄さんは私の我がままをいつも見て見ぬふりしてくれたし、後始末をさせたことも正直ある。しかし今は本気で怒っているし、実行もするだろう。ぞっとして私は判ったと言い逃げた。
「エレオノーラ嬢は諦めよう。流石に未来の王妃だ。王弟となる私と揉めたらいけないな…」
それに兄さんが王になった頃私がエレオノーラ嬢に手を出して生きているか判らない。
普段ボケている割に一度夢中になったら絶対譲らないのは兄弟だろうか。
そして私はターゲットを変えた。
アマーリア嬢に!!
公爵邸のパーティーに忍び込みまんまと義弟の前でアマーリア嬢と踊ってやった!!
義弟は射殺さんばかりにこちらを見ている。もっと怒っていいよ?ふふ。アマーリア嬢は私と踊っているのにチラチラと義弟を見ていて気に食わない。王子の私を無視するとはこの女も手強いな!ダンスで引っ付いてスルリと器用にネックレスを外し、今夜こっそりと密会の約束を取り付けた。
くくく!これでアマーリア嬢は私のものになる!悔しいだろうなぁ?あの義弟!!
兄さんにその後他の令嬢とのダンスを押し付けられたが、真夜中が楽しみだよ!!王子の命には逆らえまい?例え公爵の娘であろうと。くくく!
深夜私は公爵邸の塀の裏にひそりと馬車を忍ばせ、従者や護衛に少し離れて見守るように言う。私がアマーリア嬢といたしてる声やら音が彼等にも判るがそれはまぁ仕方ないだろう。くくく。
もしもアマーリア嬢が私の子を孕んでしまったらそれはそれで大変面白くなる。あっさり肥溜にでも捨ててやろうか?
ニヤニヤしながら馬車の中のクッションの位置やらを直していく。ひひひ。もうすぐだ。
そして月が真上に来た時に、コンコンと馬車がノックされ、カーテンから少し除いたら恥ずかしげに顔を隠していたが女性の身体を見て私は喜んで開けた。
「アマーリア様!来てくれたのですね!嬉しいです!……ああ、もしやネックレスの為ですか?ふふ、大丈夫です。終わったら返しますよ」
終わったらね!
と彼女を横に座らせ手を握る。
カーテンを閉めたから車内は暗く顔が見辛いな。顔を確認しようと少しだけカーテンを開けた。
すると…
ハラリと頭の布を落とした女はアマーリア嬢ではない!!
「だっ!誰だ!!貴様は!!」
替え玉かっ!あの女あ!!畜生!!あれだけ脅したのに!!
「女?そう思ってもらえて嬉しいですわ!王子!!」
とその女が物凄い低い声を喋るから流石にゾワリとした。
「お、お前は!男かっ!?」
顔などはどう見ても女にしか見えない!!
「どうでもいいことです。貴方はこれから私が開発して差し上げましょう!」
「ひっ!!」
流石に男に迫られたことのない私は焦った!!
「や!辞めろ!誰か!おい!!この者を捕まえよ!!怪しい女、いや男だぞ!?」
と叫んだが誰も来ない。えええっ!?
何故だ!王子の危機だぞ!?主の尻が狙われていると言うのに!!おおい!!
そこで私は悟った。こんな真似ができるのは
「に、兄さんの手の者か!?」
と言うと彼女、いや、彼は微笑み私に口付けた!!ひっひいいいいいい!!
奴を押し狭い馬車内から脱出しようと試みたが
「逃がしませんよ。貴方はもう私の獲物なのです!」
と妖艶に赤い舌を出して迫る。
「嫌だ!辞めろ来るな!バカ!!殺すぞ!死刑だ!!」
「ほほほ、そのような事は心配ご無用です。私の身の安全も保証されておりますしね。お仕事ですもの。きっちりやらせていただきます!」
と私を狙うから暴れて馬車はとんでも無く揺れた!!
「辞めろ!辞めろ!」
もう半分くらいトラウザーズが脱げかかりパンツに手がかかる!ヤバイ!!思わず尻を庇う為手を当てると
「ふふふ!抵抗など無駄ですよ?大丈夫です!優しくして差し上げます。初心者でしょう?」
とか言ってゾッとする。
「ひっ!くるな!や、辞めろ!私は王子だ!」
「ええ、もちろんです!王子!金髪の素敵な君よ!王子のお尻のことを国中の者や他国にも知れ渡るとどうなるでしょうねぇ?」
「なっ!何いいい!?」
そんなことが知れたら私はもう外を歩けないではないか!女性からは男色と見られさらに男色の奴らに尻を狙われかねない!!
「黙っていて差し上げますよ?もちろん。そのかわりネックレスとアマーリア様とラファエル様の幸せを壊すような悪いお方には存分にお仕置きして差し上げろとある高貴な方からの命令なのです」
と女装男は私の尻の手を退けて物凄い高速で撫で回した!
ぎゃあああ!!何て手つきだ!プロだ!!こいつっ!!
「判った!ネックレスを返す!二人の噂も流さないから勘弁してくれ!!」
涙目になりネックレスを放り投げ懇願すると、女装男は薄く窓を開けてネックレスを外にいる者に渡した!誰か知らんが
「おい!お前っ!助けてくれ!!内密にしておくから!!」
と叫んだが、ピシャリと窓は閉められカーテンも閉められ私はいつの間にか手を縛られていた。そして迫られガタガタ震えた。
「ひっひいいい!」
「ふふふ、可愛らしいですね?怯えてる王子様とても素敵です」
「この変態め!!」
「ああ!罵倒されると萌えます!」
ダメだ!何言ってもだめだ!!
そして私はついに狙われ絶叫した!
「アーーーーーーーッ!!!!」
そして朝までじっくりと開発され続けぐったりしてしまったが、新しい扉が開き私は知らない世界へと飛び立った!!
*
私が気付いた時は自分の寝室にいた。
何だ夢か。妙にリアルな夢だな。
そして夢で良かった!!
と思ったが、それは間違いであった。
妙に尻がムズムズする。
後、通りすがりの男の尻を見てしまう!!
あの夜の護衛と従者は私と目線をあまり合わさない!
そして私は昨日のあの女装男が兄さんと話しているのを見た!!実在してる!!
兄さんはにこやかに私を見て笑う。
「やあ、シメオン。おはよう。よく眠れたかな?どうしたんだい?お尻を庇っているようだけど?」
知らないうちに尻ガードしてた!!
「い…いえ…べ…別に…」
震えながら返事をすると女装男もニヤニヤして舌舐めずりしていた!
ぴゃーーーー!!!
「そうそう、シメオン…あまりアマーリアやラファエルに手を出さないようにね?彼等は俺の幼馴染と大切な王宮薬師だしね?ああ、お尻の薬が必要ならラファエルに頼もうか??ふふふ」
と兄さんが笑ったので昨日のは夢でも何でもないとようやく悟った!!
もう嫌だ!奴等に関わるとまた私の尻が狙われる!!
私は全力で二人に関わらないことにした。尻を守るために。
しかし新たな世界へといってしまった私は暫く通りすがりの男の尻を見つめ頭の中が尻でいっぱいになり想像を繰り広げ赤くなり尻王子と言う噂が立ちつつあった。
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