どんぐりの森

@yoko-fuji

第1話 お誕生日

 ああ、森の中はなんて気持ちいいのかなあ!

 どんぐりちゃんが目覚めたのは、お母さん木の手のひらの中、太陽がやさしくこぼれ落ちてくるやわらかな光の中です。

 下を見ると、あらあら、はるかはるかな茶色や緑色のじゅうたんが広がっています。お母さん木が、

「あの茶色のは、落ち葉。緑色のは、苔っていうのよ。」

とおしえてくれました。

「おまえはまだ小さいから、しっかりしたおむつをしておくわね。」

と言いました。

どんぐりちゃんは自分のお尻に、一回り大きなおわんがついていることに気が付きました。

「それは地面に落ちる時、お前を守ってくれるのよ。」

「うん、わかったよ、お母さん。」


 どんぐりちゃんがきょろきょろとあたりを見まわすと、お隣には他の兄弟どんぐりがいました。

「君、今朝生まれたんだろ。僕は昨日だったんだ。」

と、すぐそばのどんぐりが言いました。その隣のどんぐりは、

「ぼくなんか、おとついだぞ。」

と自慢しました。

枝分かれの向こうのどんぐりは、

「こちらは一週間前ですよ。」

とすまして言いました。おすましどんぐりは、

「僕たち今は夏の盛りだからまだのんびりしてていいのです。今の僕たちの仕事は、せっせと大きくなることです。

と気まじめに言いました。それを聞いて、どんぐりちゃんは、

「そうなんだ。よく知ってるね。僕、大きくなるよ。」

と答えました。

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