第258話:現場を知らない上司に頭?を抱えつつも前に進む
同個体を集め巨大化した
頭に響く声の主は同個体を集める04番の進化を選択しこの度実行したわけだが、結果は図体がデカいだけのヤツが誕生し希少種によってタコ殴りにされたわけだ。
大きいことは破壊力と耐久力の面では強みになるが、この世界ではただの的になる可能性の方が高そうだ。
ヤシの実から蟹の脚を生やしたような生物は、瓦礫の下でバラバラに散ったタコサシの一部を、蟹の脚で摘まんで虫のような顎へと運び、ボリボリ食べながら考える。
──現場を知らないヤツは卓上の理論で結論を出し、それを実行しようとする。
計算上は……予定では……etc.
どの世界でも変わらないものだとヤシの実はため息をつくように前脚の肩を落とす。
必要なのは『質』『数』それに加え『サイズ』だと結論を出すヤシの実だが、頭の中に響く声に頭と思われる辺りをポリポリ掻く。
宇宙にある母船から送られてきた資料を頭の中で展開する。頭に浮かんだ映像は真っ黒な鳥。
『上空からの攻撃を望む』
そんな見出しと共に今回の作戦の資料が添付されている。取りあえず読むが、タコサシの肉を咀嚼していた顎がぎこちなく動き始めギィギィと鈍い音を立てる。
その音は、仕事中に食べる食事はどんなに美味しいものでも味が薄くなるものだと、折角の上級種の味を堪能してたのにと不服を申し立てる音。
羽があれば飛べるわけではないと報告を上げたはずだがと、まして巨体になるほど飛ぶどころか浮かぶのも難しいというのに、前脚二本を使って頭を抱える。
無能な上司を持つと苦労する、そう思いながら今回の指示内容を確認する。
確認しながら次回の構想を練る。
仕事が出来る者は上司のフォローもしつつ、自分の仕事も進めるものだ。
今回の生物も次なる実験へ向け繋げようではないか。繋げて、使役されるだけの状況からの
目標を掲げるとやる気も出てくるもので、タコサシの肉を食う顎にも力が入る。
ガツガツと肉を食い進める顎がふと止まる。
足の中から白く細長いミミズに似た生物、上級種の寄生体を見付けると、それを前脚で摘まみ口の中へと放り込む。
クチャクチャと咀嚼しながら上級種の寄生体の味を堪能する。
死にかけの寄生体は声を上げ、宇宙へ向け死の報告をすることもなくヤシの実に食われ栄養となる。
転職へ向けた準備は着々と進んでいる。顎がをカチカチ鳴らしながら、上司が求める次の仕事をこなすために瓦礫の山の影に消えていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます