第116話:新たな進化の仕方?
銃声のした方へ向かって走ると、自衛隊の人たちが銃を構え、引き金を引く相手は三角の頭に緑色の体に、腕は大きな鎌になっている生物に出くわす。
大きさ2メートルほどのカマキリである。ただカマキリのフォルムは反っているので、全長はもっと大きいかもしれない。
一つ気になるのは、カマキリの右目辺りが陥没していること。
自衛隊の人がやったのかとも考えたが、銃声しか聞こえていないことを考えると、あの陥没は別の何かが原因のような気がする。
カマキリは自衛隊の放つ銃弾を受け、体の柔らかい場所から血を流しながらも、強引に突っ込み、大きな鎌を振り上げる。
私は拳に描いてあった『弾』から『風弾』をカマキリと自衛隊の間に放つ。
中央で弾けた風弾は、カマキリの動きを一瞬鈍らせ、自衛隊の人たちをひっくり返し後方へ転がせる。
強引に振られた鎌は、自衛隊の人たちが転がったことで空を切る。その隙を逃がさず『槍』を通した朧を、がら空きの脇腹に突き刺す。
すぐに引き抜いた穂先には、カマキリの薄い茶色の液体が滴っている。それを振り払う勢いで高く上げた穂先を、カマキリの頭上に振り下ろす。
一撃目で頭をもたげ、大きく体制を崩すカマキリの後頭部めがけ、再び振り下ろした槍にで、カマキリの顔面を地面に叩きつける。
地面に顔を埋め、人でいう、うなじ辺りに槍を突き立てたときだった、上空からなにかが私めがけ接近してくるのを感じ、槍を引き抜き後方へ下がる。
直後、私のいた場所に拳を振り下ろし地面にヒビを入れるそいつは私を睨み、歯茎を剥き出しにして鋭い牙を見せ威嚇してくる。
「サル? おっきいけど……」
3メートルはある大きなサル。といっても体格は筋骨粒々で、ゴリラに近い。
濃い茶色の毛を逆立て私に対峙し睨み会う、その下でズリズリと逃げようとするカマキリ。
サルは大きな足でカマキリの頭を踏みつけ、頭を軽く潰す。その後、胴を何度か踏みつけケタケタ笑う。
宇宙人同士って仲間じゃないのかな? 前もザリガニをワニガメンが襲ってたし。
ただこのサルの場合、補食の為に襲うっているというより、いたぶり楽しんでる。なんか陰湿な感じがする。
槍を構えサルと睨み合うが、1人の自衛隊員がサルに放った銃弾を皮切りに、私とサルは同時に踏み出し、自衛隊員を襲おうと、拳を掲げ飛び掛かるサルに槍を振るう。
体を反らされ、槍の穂先はサルの毛を僅かに刈り取るだけだった。
地面を足で削り土煙をあげながら方向転換をすると、私を目掛け飛び掛かってくる。
振るわれる拳の腕に槍を這わせ顔面にフルスイングする。
顔面を叩かれ、槍の形に赤くなった鼻をおさえながら下がって距離を取る。
『槍』を消しながら分割し『剣』を描くと二刀流で向かうと、サルも拳を握り向かってくる。ぶつかる拳と刀。
「かたぁっ!!」
刀でサルの皮膚が切れ少量の血が散るものの、刃が深く入らない。だがサルも自分から出る血に苛立ったのか、牙を剥き出しにして攻撃の速度をあげていく。
私は直に受けず、いなしながら地味にだが、皮膚を切っていく。
斬りながら、拳に描いてある『弾』から『風弾』を2発連続で放つと、サルの体に当たり弾ける。意表を突かれたサルが私を警戒して離れた隙に、懐から出したナイフで左腕を切る。
血を刀まで伝わせ『火』を描き、もう一本の刀で斬り火花を弾けさせる。
弾ける火の粉に更に警戒を強めるサルに向かい、再び斬りかかる。再び打ち合うが、時々弾ける火にサルの動きが悪くなる。
だがそのうち『火』を描くと、そこから離れようとする。
それでも描く『火』を斬るとその場で、魔方陣の円の形で燃やす。ただ空中で燃える火の前に『刀』と『鋭』を描くと袖から出した直尺を2本連続で投げつける。
距離を置いたサル側から見たら、燃え盛る『火』の漢字が死角になって、私が火に向かって何かを投げたのしか分からないはずだ。
因みにこの火の魔方陣は、二重になっていて、その間に小さな円が2つ『刃』と『速』が隣に並ぶ。1本の直尺は『速』を通り、『鋭』を通った直尺は『刃』を通る。
1本の直尺が炎を突き破り、猛スピードで飛んでいく。それを最小限の動きで右に避けた所に、もう一本の直尺が時間差で飛んできて右肩に深く刺さる。
肩を押さえ唸るサルは、怒りの表情を見せ私に向かってくる。その足元にあった花壇に石を投げると『
体を捻り常体を反らし刀を避けるが、右手に持つ刀の先が鼻の左側から右目にかけ切り裂く。
「浅い!? コイツ素早い!」
切られた衝撃で転がるサルだが、すぐに立ち上がると、血の流れる右目を押さえ、低く唸りながら左目で私を睨む。
ジリッ、ジリッと間合いを取り合う私たちだが、突然サルが弾けるように飛んでカマキリの元にいくと、拳を胴体にめり込ませ中から寄生体を引きずり出す。
ビチビチとはねる寄生体を、口の中に放り込むと丸のみしてしまう。血の滴る右目のままニタリと笑うサルがファイティングポーズを取る。
その腕からトンファーの様に生える、カマキリの鎌を誇らしげに見せながら。
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