第39話:考えるメガネくん
「はあぁ~」
部屋に大きなため息が響く。ため息の主は3台並ぶパソコンの前にしてスマホを取りだし画面を見てまたため息をつく。
「なんで写真が全部写ってないんだよ~。あぁ意味分からない!!」
椅子をくるくる回し自身も回る少年。彼の名は
メガネをとり目頭を押さえながらあのときのことを思い出す。
今使っている感じ壊れたような様子もないしなぜあの時だけ調子が悪くなるのか意味が分からず混乱する宮西。
他に誰か写真を撮っていないかとネットであのゾンビのことを調べようとするが不気味なほど検索がヒットしない。
あれほどの事件がここまで騒がれないものだろうか。
陰謀感じつつも様々なサイトを巡り噂程度に流れるゾンビ事件の真相を探ろうと躍起になる。
現在宮西が住む町、
今回のは山を越えすぐの住宅街を中心に起きた事件である。謎の大量死で未知の感染症説も浮上する中、不気味なほど早く復旧され空き家の多いまま生活が営まれている。
そんな不自然な状態にも関わらずマスコミも入らず報道もされない。
「絶対何かの陰謀だ!」
宮西はぼんやりする視界でパソコンの画面を見つめ再び思い出す。
(あの赤い毛並みの犬はなんだったんだろう? なんとなく言葉も分かっていた気がするし)
シュナイダーの背中に乗せられた宮西はあの後、雑に老人ホームの前に置いていかれたのだ。
(あの後施設に入ろうとしても誰も反応してくれなくて困った。結構な時間外で隠れていたけど最後は鞘野さんが気付いてくれて中に入れてもらえたから良かったけど)
宮西も詩が施設の人に外の音に反応するな! と言ったせいで自身が施設に入れてもらえず、戦いを終えた詩が戻る際に気付いていて入れてもらえたとは知るよしもないのである。
(はぁ~鞘野さんって可愛いよなぁ。僕なんかにも普通に話しかけてくれるし、優しいだけでなく強いし。はぁ~)
詩のことを思い浮かべる少年は頬を赤らめながらメガネをかけパソコンの画面を見る。
匿名の掲示板サイトに流れる文字たちを目だけを動かし読んでいく。
ある一文で動いていた目が止まる。
134
≫53
ゾンビを本当に見たんだって。信じてくれよ。
138
≫134
証拠うp!
139
≫138
だからスマホの写真全然撮れてないんだって! あのとき妹も電話しようとしても繋がらないしスマホがおかしかったんだって!
145
≫139
嘘つくなよ! ハゲ!
146
≫145
なんで知ってんだよ!
宮西は画面を凝視して考える。
自分と同じゾンビを見た人間が同じくスマホ等が使えなかったと発言している。
(ゾンビがいる場所は何らかの通信障害起きると仮定してその障害に負けない方法……もっと強力な電波? 電波を遮断する箱とか? いやそんなもの用意できないしかといって電波の種類も分からないし)
スマホに視線を移しぼんやり眺め考える。
(通話が出来ない、有線ならいけるのかな。いやカメラ機能は電波は関係ないはず……別のカメラアプリなら起動するとか?)
色々なことを考えては頭の中で検証していく宮西がスマホの時刻を見ると19時。彼の両親は共働きで帰りが遅いので晩御飯は大体1人である。
部屋を出て冷蔵庫に用意してあるおかずと味噌汁の入った鍋を取り出すと温め始める。
ふと手が止まる。
「あ、ご飯の予約するの忘れた。まあ冷凍があるからいいや」
水に浸されて白くふやけた米を見てちょっぴりショックを受け、冷凍庫を漁り冷凍ご飯を取り出しながらぼやく。
「炊けたら知らせてくれるのにボタン押し忘れても教えてくれないって以外に不親切な気がする。忘れたり壊れたりしたら教えてくれるような機能をつければ便利そうなんだけどなあ」
冷凍ご飯を電子レンジに入れ解凍する様子をぼんやり見つめる。
「……!? まてよ。壊れてるって知らせてくれるってもし目の前で壊れること自体が知らせになるなら!」
宮西はご飯を掻き込み食べると部屋へと急ぐ。
* * *
「ここからなら入れるかな」
宮西は川沿いにある雨水の排水口を前にしておそるおそる中へ入っていく。懐中電灯の明かりを頼りにして中へと進む。
「うわっ汚水は流れてなくても臭いが凄い……」
宮西が見つめるスマホはいつもの待ち受け画面と時刻を表示している。電波はもう圏外になっているがカメラなどの機能は使える。
「もう少ししたら最近スマホや携帯の電波障害が頻発してキャリアに苦情が多い町の下につくはずなんだけど」
紙の地図を広げ指でなぞりながら下水菅の中を進んでいく。
チャプッ
下水の浅く汚れた水が揺れ跳ねる。
「ん?」
音の方にライトを照らす。汚い水がどんよりと流れていくのが見えるだけだ。
何気なくスマホを見ると真っ暗な画面、電源を長押ししてもうんともすんともいわない宮西の背中に冷たい汗が流れる。
下水の水が山のように膨れ上がり汚い水飛沫をあげならその姿を現すそいつは大きく赤いハサミを宮西に向け振り下ろすのだった。
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