第26話:てるてる坊主仮面と変態犬は走る
私の背丈ほどある白い槍の先端は赤くその鋭い矛先はゾンビを切り裂きその傷口に雷撃を走らせ体の中を焼き尽くす。
「ふむ、体の中にいる奴にダメージを与えれば頭を潰さなくても倒せるみたいだね」
私は矛先で1体のゾンビを貫くとそのまま横に振り抜き矛先から抜けたゾンビを集団に投げつける。集団でよろけるゾンビたちの下に描かれた『雷』の漢字が光り天空に向かって雷光が走る。
色々試したが火と雷が効果的だ。水や風は全体に効率的にダメージを与えられない。
そして火はとても効果的なのだが燃えたゾンビが歩き出してボヤが起きて私が鎮火する騒ぎになったので雷が一番効率的であると判断したのだ。
そう冷静に判断する黒い遮光カーテンに天狗のお面を被った私は止まれの道路標識を振り回しゾンビを蹴散らしていく。
前々からこの止まれの標識、槍っぽいなぁとか思ってたからなんか夢叶ったようで嬉しい私はブンブンと槍を振り回す。
「気のせいかもしれないけど数がどんどん増えてきているというか私のところに集まって来ている様な感じがする」
家の屋根に飛び乗り見下ろすと私のいる場所目指しゾンビの集団が移動しているようで私の周囲の密度があからさまに高いのが分かる。
お面の口の辺りを人差し指でポンポン叩き思考する。
「ってことは多分だけど誰かがこれらを操ってて私を狙っている。あの寄生生物の親玉がいるってことかな?」
そう推測した私は塀の上を走りゾンビたちに姿を見せながら移動を開始する。
駆け抜けるのではなくわざと見えるように走る私の移動に合わせてゾンビたちも移動を開始する。もちろんゾンビの方が遅いけど。
ただその動きに何らかの意思を感じる。自分の推測に自信を持った私は引き付けながらゾンビの発生源を探す為ゾンビの密度が濃そうな方を目指す。
密集した集団を見ると老若男女問わず沢山の人達がゾンビになっている。
魔王軍の死霊系のモンスターに村を壊滅されそこに住む人を死霊いわゆるゾンビとして使役して人間を襲う事件があったが今まさにその状況である。
討伐達成しても残る後味の悪さを思い出し奥歯を噛み締める。
「こういうやり方が1番ムカつくんだよね。絶対本体見つけてぶちのめしてやる!」
息巻いて塀の上を走り敵の本体を探す。
* * *
町の中心の方では数キロ離れた郊外の騒ぎなど皆知ることもなく普段通りの生活をしている。
ただ警察は町から郊外へ向かう道路を封鎖し住宅街をパトロールしながら住民に家に戻るよう呼び掛ける。
〈郊外の工場地帯で事件が発生、犯人と思われる人物が逃走中。現在捜索を行っています。付近の住民の皆様はなるべく家に戻り施錠をしてください。繰り返します──〉
パトカーのスピーカーから家に帰る様に呼び掛ける声が響く。
「事件ってなにかしら? 詩が行った老人ホームって郊外の方じゃなかった?」
詩の母、里子心配そうにシュナイダーに話しかける。里子はシュナイダーが言葉を理解しているとは思ってはおらずシュナイダーの頭を撫でる。
その手をシュナイダーが舐めると里子を頭で押し家に入るように促す。
「なに? 家に戻れって? シュナイダーはどうする? 入る?」
里子の言葉に背を向けて犬小屋の方に向かうと短く外に向かってワンッと吠える。
「そこにいてくれるの? じゃあお言葉に甘えて家にいるから。シュナイダーよろしくね」
里子の呼び掛けに背中を見せたまま尻尾を振って答えるシュナイダーは空を見上げる。
(奥さんの手を舐めると元気が出るな)
嬉しそうに目を細め風を顔に浴びながら集中する。
(ほう、僅かだが詩の魔力を感じる。結構離れているな)
鎖をいそいそと外し大きく伸びをする。
(さて手伝いに行ってやるか。詩は確か制服だったな……やる気も出るというものだ)
シュナイダーが前足で器用に毛布を丸め犬小屋に突っ込み毛布にくるまって寝ている
詩の魔力を頼りに走るシュナイダーはやがて警察の検問にたどり着く。
(あの制服の者、警察といったか。あまり面倒事を起こすと家族に迷惑をかけると詩が言っていたな)
警察を避け遠回りして森から駆け抜け郊外の工場地帯へと出る。ここまで来ると詩の魔力が強く感じられおよその位置を把握出来る。
一気に駆け抜けようとしたときシュナイダーの耳に悲鳴が聞こえる。耳が悲鳴の方向に向くと先程までシュナイダーいた場所に鋭い風が吹き抜ける。
* * *
悲鳴の主である
数が減って意を決して飛び出したわけだが持ち前の運動神経の悪さからゾンビに発見され命からがら逃げていたが、その追いかけっこも直ぐに終わりペタンと座り込み壁を背にして後退りも出来ない状況にいた。
生きた人間とは思えない生気のない顔でヨダレを滴しながら迫ってくる男2人に手をかざし必死に「くるなー!」と叫ぶだけの宮西を覆う影がなくなり光が射す。
うっすら開いた目に目の前にいた男の1人が少し離れた道路にぐしゃっと空から落ちていく姿が映る。
意味も分からない宮西が呆然としているともう1人が何かに足を引っ張られこけるとそのまま引きずり投げ飛ばされ離れた場所に落ちる。
目の前に現れた大きな赤い毛並みの犬が西宮を睨む。心なしか怒っているようにも見えるその犬に恐怖しながらも声をかける。
「あ、ありがとう。た、助けてくれたんだよね?」
フンッと息を吐いて顔を背けられる。そして前足であっち行けみたいにシッシっとされる。
「あ、う、うん逃げたいけど。その腰が抜けたのか立てない……ははっ」
力なく笑う宮西に赤い毛並みの犬は体をワナワナ震わせる。めんどくさそうに近付くと宮西の襟を噛み放り投げ背中に乱暴に乗せると走り始める。
「うわわわわっ」
驚く宮西を無視して走る赤い毛並みの犬はすぐの分かれ道で止まり右前足を右、左の順で振る。
「え、どっちかってこと? 右だけどってうわっ!!」
物凄いスピードで走り始める赤い毛並みの犬に必死にしがみつく宮西。
「す、凄い! 言葉が分かるの? は、速い!!」
はしゃぐ宮西の下ですごーく嫌そうな顔の赤い毛並み犬、シュナイダーは走るのである。
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