突然の告白

「それで、君があの子供の頃の友達、あおい君だって事はわかったよ」


 俺はそう言う。驚きはしたが彼女の言っている事を認めざるを得なかった。


「でも、それで君はどうしてこの鳳明高校に転校してきたのさ」

「それは勿論、君に会う為に私はこの鳳明高校に転校してきたのよ」


 さらりと彼女は言う。頬を赤くしていた。


「……俺に?」

「ええ。君によ」

「なんで?」

「そ、それは私があなたの事を追いかけて、この高校に転入してきたの」

「ど、どうして君がそこまでするのさ?」

「覚えてないの?」

「覚えてない? 何を? 見当もつかない」

「あなたにとっては、些細な事だったのかもしれない。それはそう、10年前の事」


 蒼依は目を閉じてその美声でナレーションを始めた。はい、回想シーン入りました。


「10年前、私とあなたはこの町で出会った。そして一緒に遊ぶようになったの」


 蒼依は感傷的な印象を抱く声で語り始めた。


「遊び場は公園だったり、団地の空き地だったり、色々だったわ。でも私達は現代っ子で、家の中で遊ぶ事も多かったの。だって、10年前とはいえ、家の中にはゲームや漫画、テレビが沢山あったわ。だって現代っ子なんですもの。10年前とはいえ。外に行くしか楽しい事もない大昔の子供とは違うわ」


 そう、彼女は言った。確かにその通りだ。外で遊ぶ事も多かったが、俺達は家で遊ぶ事も多かった。現代っ子だったのだ。


「だから私達は家でゲームをしたり、アニメを観てたりしたの」

「それで?」

「私達はその日、アニメを観ていたの。そのアニメは名作アニメプリンセスモモ(同名のアニメとかあったらすみません、調べてないんで、劇中アニメのつもりです)。その時、こーちゃんは私にこう言ったのよ。私の声がそのモモに似てるって。それで声優に向いている。あおい君ならなれるんじゃないか、って」

「……それで?」

「そうして私は声優を目指したの。そして今こうして声優をやっている。つまりはこうして声優をやっているのもあなたのおかげなのよ」

「待て待て。確かに幼少期の俺は君にそう言ったのかも知れない。でもこうして声優をやって成功したのは君の実力だし、俺のおかげではないだろう」

「それでもよ。幼かった頃の私は君の言葉に励まされ、そして特別な感情を抱いたの」


 蒼依は頬を赤くする。


「と、特別な感情って?」

「勿論、好きで愛しているって事よ」

 

 アスカちゃんの声でそんな事を言われると俺はとろけそうになり、そしてそれだけでもう死にそうになっていた。


「そ、それで君は俺とどうなりたいの?」

「付き合って欲しいに決まっているじゃない。あなたと恋人同士にになりたいの。だめっ、かな?」


 蒼依は上目遣いで言ってくる。うっ。声だけではなかった。中の人も超絶な美少女なのだ。その上目遣いは反則だろう。男なら抵抗する事などできない。すぐに骨抜きになってしまう。

「……だめじゃないけど。まずいだろ。君は現役の人気声優だろ! 声オタは悪質なんだ! 君に男がいると知れたら、ファンが暴徒と化すぞ!」

「バレなきゃ問題ないじゃない?」

「バレないとは思えないけど。奴等の諜報能力を甘く見るなよ。SNSに上げた一枚の写真から住居を特定する事だって可能なんだぞ」

「わかったわ。だったら私、声優やめるから。これで問題ないでしょう?」

「そんなわけに行くか! 君が声優をやめたら大勢のファンが悲しがるし、制作関係者にも多大な迷惑がかかるだろ!」

「代わりなんていくらでもいるわよ。声優なんて一杯いるもの」

「ダメだ! アスカちゃんの声は君だけなんだ!」


 俺は熱く語りかける。一ファンとして。


「……少し考えさせてくれ。色々な情報が出過ぎていて。頭の整理がつかない」

「うーん。そうね。わかったわ」


 そう、蒼依は微笑んだ。その時。俺達はまだ知らなかった。俺達の事を遠くの校舎から覗き見ている、一人の物影に。

 そしてそれがゆくゆくは大きな事件へと発展していく。

 その事は俺達はまだ知らなかったのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昔知り合ったガキ大将達が全員俺の理想通りの美少女になっていた つくも @gekigannga2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ