09

 やっぱり。


「なんだなんだ。おい。しっかりしろよ」


 私たちがいないと、だめじゃないか。


「はい。これ。ボタン」


「おい。おまえら」


「逃げるのは、やめた。おい。起きろよ。心ここにあらずじゃねえか。あんたのことが好きなのに、ここで先にしぬなんて、ゆるさないからな」


 せいいっぱいの。


 キスをして。


「起きろよ」


 彼が目覚める。


「キスで起こすのは、なんか、ロマンチックだね?」


「ミサイルが来るんだろ?」


「おい。なんでそれを知ってるんだ」


「わたし。官邸直属の、研究組織。といっても、わたしひとりで組織なんだけど。ここの地場を、研究してたの。電磁干渉区域。都市部に落ちるミサイルを、ここに誘導するための研究」


「はは。知ってたのか。じゃあ、もう一度言うぜ。出てけ。この街から」


「いやです。このボタン。押せばいいんだよね?」


「やめろ」


「震えてるよ。わたしが押す」


 身体を、抱く。


「大丈夫だから。大丈夫」


 彼の身体が。力なく、寄りかかってくる。


「すまん。ありがたいよ。正直、押しつぶされるかと思った。失敗したら、街ごと吹っ飛ぶからさ」


 四人で。


 また、公園に集まって。


「カウントダウンだ。五秒前から行くよ」


「何か。あたしにしてほしいことは、あるか?」


「じゃあ。カウントダウンが終わったら、もう一回キスしてもらおうかな?」


「いいぜ。何回だって、キスしてやるよ」


「ボタンは。お前が持っててくれ。俺が押す」


「うん。抱いて支えてあげる」


「助かるよ」


 5。4。3。2。1。

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