四、蜜を食む
雫がたに膨らんだ
に、両の親指を差し入れて
グスリと柔い肉を裂く
熟しきった赤紫のずるりと滑る薄皮が
未だ黄緑の付け根の細く窄まったところまで
果肉と共に引き裂かれる
割る
二つに
割る
その紅色の艶やかさ
あれほど
すぐ内側は幼いあどけない清けき浅い
瑞々しい蕗にも似たる
けれども
なんという
こんなに綺麗な
わたしは他に見たことがない
夕映えに溶ける
きっと敵わぬ
純潔の如く白くほの
無数に抱え込んでいる
この総てが花なのだ
花が身の内で咲いたのだ
咲いて枯れずに実ったのだ
道理だ
食しているのは花なのだ
花ごと
溢れ滴るのは果汁ではない
ほんのりと青臭く
後味を残さぬ儚い
清純
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます