セサミストリート

 五歳の時、半年ほどアメリカに住むことになった。

 親からは特に説明もなく、気が付いたらアメリカの田舎町にいた。学校にも行かず、何かスポーツをするわけでもなく、なんとなく過ごす日々である。友達もできたが、何を言っているのかわからない。「英語を学ぶ」という意識は全くなかった。

 そんな中毎朝観ていたのが「セサミストリート」である。よく考えるとすごい世界観で、人々とモンスターが普通に一緒にニューヨークで暮らしている。私はグローバーが好きだったが、子供たちそれぞれにお気に入りがいただろう。

 この番組は、基礎的な教育番組としての側面もある。英語だけでなく、スペイン語のコーナーもある。歌に合わせてスペイン語で数字を読み上げるのが楽しくて、10まで数えられるようになった。そうなのだ、自然と学んでいけるように設計されているのだ。

 何を言っているかわからないのだが、観ていて楽しかった。今ならわかるのだが、移民の子供も多いだろうし、言葉がわからなくても楽しめるように考えているのだろう。

 モンスターはずっと同じ見た目だが、人間は年を取る。演じている俳優が亡くなったらきちんと亡くなったというイベントがある。劇中で結婚があったりもする。ビッグバードやエルモは、今でも子供のままであり、人間とモンスターという時間軸の違う者たちか暮らす街でもあるのだ。

 私は幼いときにこの「ファンタジーなニューヨーク」に触れており、それが幻想世界を受け入れる土台となっているかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る