『ラグナロク』

 ファンタジーと言っても、「すべて新しい」世界像を創り出すのは容易ではありません。どの物語にもだいたいは「基礎となる物語」や「世界観」があると思います。

 『ラグナロク』はタイトルからも北欧的な元の要素があることがうかがえますし、「話す剣」という要素もファンタジーとしてはある種王道ですね。様々な要素を合わせて、骨太な設定に仕上げた、そんな物語です。

 主人公が豪快なので話も楽しく進んでいくのですが、戦闘シーンはかなり想像力を必要とします。強いだけじゃなくて、主人公は翼が生えたり特殊な能力が発動したりしますからね。読む分には楽しいのですが、「書くのは難しそうだなあ」と思ったものです。

 ヒロインが冷徹だったり、彼女に多重人格の妹がいたり、でっかい狼をつけていたりとここら辺も大変良いです。作者には「設定の嗅覚」みたいなものがある気がします。

 どんどん話が広がっていくのですが、完結はしていません。と思ったら、最近また書き直したり新刊が出たりしているようです。

 ライトノベルでこういうのが受賞して連載されるんだ、というのが励みの一つだったのですが、作者曰く「遅筆と、書いたものが到底ラノベとはいえない」(作者のツイッターより)ため編集部からは離れることになったとのこと。なかなか難しいですねえ。



安井健太郎『ラグナロク』(1998-2006)スニーカー文庫

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