百鬼夢幻

刎ネ魚

壱・鬼

目隠し鬼さん手の鳴るほうへ


もういいかい

  まーだだよ


いろ鬼

影踏み

高さ鬼


ごっこ遊びは数あれど

鬼はいつでも追っ手の側

捉え 捕まえ かどわかす


だから鬼は嫌われる

忌まれ 厭われ 疎まれる


鬼͡おにごに生まれた赤子も然り



鬼児と呼ばれた赤ん坊は

じきに幼児に成長した


鬼児と呼ばれた赤ん坊は

やがて少年へと成長した


鬼児と呼ばれた赤ん坊は

そして青年へと様変わりした


鬼児と呼ばれた赤ん坊は

いつしか大人になっていた


大人になっても鬼児は鬼児

故に 童子 と呼びならわす

名はつけられず

ただ 童子 とのみ呼ばわれる



鬼の童子は寂しき

誰にも何にも愛されぬ


鬼の童子は侘しき

誰をも何をも思慕されぬ


鬼の童子は忌まわしき

孤独の故に、善悪を知らず

遠からぬ先に災いをなす



壺中天こちゅうてん

煽る酒の辛さ苦さに

顔をしかめてまなじり滲ませ

窮屈につぼまる口を覗けば

たゆたう水面に空の藍

ちらちら瞬く月の白さは

よくよく見れば己が顔

真っ赤に燃ゆる夕日の二つ

よくよく覗かば己が対のまなこ

濁り蕩けてすいすい

コトリと転がるひょうたん幾つ

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