後輩と通学路

陽姫が俺の家に住み始めてから早くも二週間が経った。


あれから毎日一緒に登校しているため、周りの視線にはだいぶ慣れてきた感がある。ま、陽姫はそもそも気にした風はなかったけどね。




「陽姫、今日こそ頼むよ?」


「何をですか?今日の昼休みも先輩のクラスまで行って弁当のおかずをアーンしろと?」


「そんなこと言ってないじゃん」




なんのことか分からない風に首をコテンと傾げる陽姫。見てて少しイラッとした。




「だから、昼休みになった瞬間に俺のクラスに走り混んで来たり校内放送で俺を呼び出そうとするのを止めてって言ってるんだけど?」


「─────プイ」


「おい、目を逸らすな。」




そう、この後輩、一体どうやっているのか分からないが四限目終了の鐘が鳴り終わった瞬間に俺の教室に入って来るのだ。


不思議に思って一年の教科担任に聞いてみたが、ちゃんと終わりの挨拶をするまで教室に居るとのことで、それでも納得いかず陽姫本人に直接聞いてみたら「愛があれば大抵のことは出来るんです!瞬間移動なんて余裕ですよ!」とか言っていた。その時はそんな訳ないでしょと馬鹿にしていたが最近はほとんど信じてしまっている。


で、陽姫が俺の教室に来て構ってちゃん攻撃をするもんだから一回だけ四限目を抜け出して保健室に隠れていたらなんと校内放送で俺を呼び出し、迷子のお知らせ的なアナウンスを始め出す始末。


勝手に放送室を使ったので教師には随分怒られたらしいが、帰ってきた陽姫に八つ当たりをされ、なだめすかせると言う名目で散々甘やかさないといけなくなったのは誰でもない俺だった。なんでだよ……。


それからというもの自分の教室で大人しくはしているものの大人しく入って来るようにといつも朝から言い聞かせているところだった。




「もう先輩は毎日毎日同じこと言ってて飽きないんですか?」


「逆に陽姫は毎日毎日同じことやってて飽きないんですか?」


「全く飽きないんですねタハハー」




と言って幸せそうに笑う陽姫。


何もない時なら、笑ってると可愛いねとか気の利いたセリフを言えたかも知れない。


ただ、今は無理だ。ため息しか出てこない。




「あー!先輩、ため息つくと幸せが逃げてっちゃいすよ?」


「ああ、俺から逃げてった幸せが誰かに吸われてる気がするよ最近。」


「んな!誰ですか!?その人は!先輩の幸せを奪うなんて許せません!!」




うん、君なんだけどね?


なんか最近やけにツヤツヤしてるし。出会った時はもうちょっとやつれてたんだけどな。


ま、この子が幸せならいっか。


と、俺がそんな甘々なことを考えていたとき、陽姫が突然全く関係ない話題をふる。






「そういや先輩!神無月祭かんなづきさい同じ班になれるといいですね!!」


「あ、もうそんな時期か……。


同じ班になれる確率は少ないんじゃない?」


「いやいや、私の先輩を思うパワー舐めんとってください!!」




と、ドヤ顔で言うが多分愛とかじゃどうにもなんないと思うよ?




と、こんな感じでダラっとした陽姫との登校を楽しむ俺であったが。この時はまだ知るよしもない。




怒涛の神無月祭が幕を開けることに……。

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